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シューベルト
即興曲 作品90−4


シューベルト(1797−1828)は、ウィーンの郊外リヒテンタールで生まれた。16歳頃から作曲を始め、31歳の短い生涯の間に、700曲におよぶ歌曲を作曲し、"歌曲(リート)の王"と呼ばれている。歌曲の他に、未完成曲を含め10曲あまりの交響曲、15曲の弦楽四重奏曲、7曲のミサ曲、未完成曲を含め23曲あまりのピアノソナタなどを作曲した。
作品90と作品142のそれぞれ4曲の即興曲は、いずれもシューベルトらしい抒情的な美しさの際立つ曲ですが、ここでとりあげた作品90-4は、冒頭の下降音形の主動機が特徴的な、ピアノ発表会でも演奏される機会の多い曲で、僕もいつか弾けるようになりたいと思っています。

 
わたしが愛をうたおうとすると、それは悲しみになった。そこで悲しみをうたおうとすると、それは愛になった。
/シューベルト25歳の時に書いた散文「わたしの夢」から(「シューベルト」/喜多尾道冬(朝日選書)

音楽はここに豊かな宝を埋めた、だがそれ以上に美しい希望も。
/シューベルトの墓碑銘



作品90と作品142の即興曲全8曲を収録しているディスクを紹介します。

演奏時間が短い順から並べています。
演奏者 (演奏時間)/感想
W.ケンプ

'68
(6:15)シューベルトの作品は、ケンプ(1895-1991)の得意とする演奏曲目で、この即興曲の演奏も名盤の定評があるものです。僕は、この曲を長い間、ずっとケンプの演奏だけで聴いていたこともあって、とりわけ親しみのあるディスクです。滋味のある演奏です。
シフ

'90
(7:14)シフ(1953- )らしい流麗でクリアーなタッチの演奏です。中間部に現れるシューベルト特有の憂愁の響きにも極力色づけを抑え、といって無味乾燥な演奏ではなく、全体にすっきりとして明快な印象を受けます。
ペライア

'82
(7:29)僕にとってペライア(1947− )は、モーツァルトの協奏曲全集のディスク(イギリス室内orc.を自身で指揮)で親しく、その爽やかな演奏はとても好きなものですが、最近のTVで観るライブ映像から判断すると、音に厚みも加わり、迫力に満ちた演奏をするように変わってきたようです。この曲の演奏では、持ち前の爽やかさが発揮され、かつ情感も豊かで、知情のバランスのとれた、とてもいい演奏です。
ピリス

'96
(7:49)抒情性、曲のダイナミズムの表現とも素晴らしい、情感に満ちた演奏で、即興曲集の演奏では、とても気に入っているディスクです。僕の持っているオリジナルの2枚組CD(アレグレットD.915と3つのピアノ曲D.946を併録)のアルバムは、ピリスが心酔したというイヴ・シモンの小説にちなんで、"すばらしい旅人"というタイトルで、亡きリヒテルに捧げられていて、ピリス自身の詩も掲載されていました。以下は詩の一部です。
私は物語の語り手が話さなければならないと奮起し、そして聞き手がその話をまた語る時の奇跡をみた。
音楽とはその物語であり、それを語る愛であり、そしてそれを聴く喜びの輝きである。

内田光子

'96
(8:05)
 ピリスと同一年の比較的新しい録音となりますが、このディスクもピリスの演奏と並んで愛聴しています。
 シューベルトは、モーツァルトとともに、内田さんの得意とするレパートリーですが、この曲集の演奏は、一音たりともゆるがせにしないという内田さんの決意のほどが感じられ、歌曲集"冬の旅"と響き合うかのような厳しく張り詰めたものですが、情感の表出もすばらしい。
ルプー

'82
(8:15)ルプー(1945− )は、リリシストと呼ばれ、シューベルトは彼の得意とするレパートリーですが、この曲の演奏でも彼の特徴であるリリシズムが遺憾なく発揮されています。ダイナミックな表現には欠ける面がありますが、この曲の繊細さの表現という点では、このディスクが一番だと思います。

■参考Web
シューベルト「即興曲」関連CD
シューベルト関連書籍
 
(参考) クリムトの描いたシューベルト
「ピアノを弾くシューベルト」(1898-1899)  
30cm×39cm、 1945年焼失


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