中島みゆき 1970年代 アルバム紹介

人を斬るための言葉はたやすい。己を守るための言葉もたやすい。
黙っていても愛し合える自信がないから、もう少しだけ、私はまだ詞を書くつもりでいる。
「中島みゆき全歌集」/中島みゆき


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 中島みゆき(1952生)   
 札幌市の生まれ。父は産婦人科医院を開業。1975年ヤマハ主催の第9回ポプコンで入賞し、「アザミ嬢のララバイ」でデビューした。同年の第10回ポプコン、世界歌謡祭に「時代」でグランプリを受賞した。デビュー・アルバムは、1976年の「私の声が聞こえますか」。松任谷由実と並び、J-POPを代表する女性シンガー・ソングライター。


○ '70年代 ディスコグフィー(発表年降順)

○ '70年代 アルバム紹介(発表年降順)
  • おかえりなさい '79 Nov.
    @あばよ A髪 Bサヨナラを伝えて Cしあわせ芝居 D雨 Eこの空を飛べたら F世迷い言 Gルージュ H追いかけてヨコハマ I強がりはよせ

     中島みゆきが他の歌手に提供した曲を歌ったセルフ・カヴァー集で、彼女の70年代を締めくくるにふさわしい全曲佳曲ぞろいのアルバムです。
     曲を提供した歌手の面々は、研ナオコ(@・B・I)、グラシェラ・スサーナ(A)、桜田淳子(C・H)、小柳ルミ子(D)、加藤登紀子(E)、日吉ミミ(F)、ちあきなおみ(G)です。これだけいい曲がそろっていると、やはり自分でも歌いたくなるんだろうな。
     個人的には、Eが一番好き。"ああ 人は昔々 鳥だったのかもしれないね こんなにも こんなにも 空が恋しい" 愛する人から別れを告げられた悲痛な心情と、それ故つのる自由に空を飛ぶ鳥に同化したいとの想い。詞・曲の表現が調和した傑作。
     研ナオコへの提供曲が多いのは、みゆきの"ふられ歌"にふさわしいシンガーとしての彼女の位置付けによるのでしょう。とくに@は極めつけのふられバラードで、研ナオコが歌った曲では「かもめはかもめ」と並ぶ名曲だと思います。「かもめはかもめ」は、みゆき自身、2nd セルフ・カヴァー集「御色なおし」('85)で歌っています。もう一曲のIもしっとりしたいい曲。
     去っていくあなたへの未練を断つために長い髪を切ってしまうA、淳子tyanのアイドル脱皮ねらいの片想いのCなどもいいな。
     Gについては、この歌をカヴァーした「容易受傷的女人(傷つきやすい女)」をフェイ・ウォンが歌い、彼(か)の地で大ヒットしてしていて、中国語圏ではよく知られている曲です。
       
      
  • 親愛なる者へ '79 Mar.
    @裸足で走れ Aタクシードライヴァー B泥海の中から C信じ難いもの D根雪 E片想 Fダイヤル117 G小石のように H狼になりたい I断崖−親愛なる者へ
      
       
      
  • 愛していると云ってくれ '78 Apr.
    @「元気ですか」 A玲子 Bわかれうた C海鳴り D化粧 Eミルク32 Fあほう鳥 Gおまえの家 H世情  
       
      
       
  • あ・り・が・と・う '77 Nov.
    @遍路 A店の名はライフ Bまつりばやし C女なんてものに D朝焼け Eホームにて F勝手にしやがれ Gサーチライト H時は流れて
       
     70年代の中島みゆきのオリジナルアルバムの中では、一番好きなアルバムです。全曲が佳曲といっていいと思うけど、アルバムとしての統一感がとれていること、前2作とはバックバンドが変わり、アレンジの点でも格段に洗練されたこともこのアルバムを充実したものにしていると思います。中島みゆきの本領発揮は、このアルバムから、という感じがします。
     @愛の哀しい遍歴を歌った曲だけど、のりのよいメロディラインが心地よい。
     A彼女には珍しいユーモラスな雰囲気の漂う曲。"ライフ"は、自転車屋の隣にあって、見事な胸を持った母娘がやっているお店でした。
     B生ギターのバックで歌っているフォーク調の曲で、抑えながらも徐々に盛り上げていく歌唱がすばらしい。Eと並んで、このアルバムの中で一番気に入っています。人は誰でも祭りの終わりを知る。祭りばやしに入れなくなる時を知る。
     Cは、Hとともに彼女の特徴である演技性が発揮されている歌。 
     Eふるさと行きの乗車券を手に、列車が出るホームに佇みながら、しかし乗り込むことのできない悲しさ、せつなさを歌った曲。ふるさとは走り続けたホームの果て、叩き続けた窓ガラスの果て。ギター伴奏が弾きやすい曲なので、一人でよく歌っていたものです。恥ずかし。


  • みんな去ってしまった '76 Oct.
    @雨が空を捨てる日は A彼女の生き方 Bトラックに乗せて C流浪の詩 D真直な線 E五才の頃 F冬を待つ季節 G夜風の中から H03時 Iうそつきが好きよ J妬いている訳じゃないけれど K忘れられるものならば
       
     色々な印象の曲が、雑多に詰まっている印象を受け、バラエティに富んで面白いともいえるけど、アルバムとしての統一感に欠ける点は否めません。
     @このアルバムでは、Fと並んでとくに好きな曲。雨が空を見限って、あたしの心に降りしきる。 Aフォーク調の曲。 Bビートの効いたロック調の曲。 Cカントリー調の明るいムードの曲。 Dブルージーな曲だけど、これは意外といい。 E一転してフォーク・ソング。 
     F切々としたメロディと劇的な歌唱とアレンジは本アルバムでの聴きどころのひとつ。おまえがいなくなった後は、春夏秋は冬を待つ季節になってしまったと嘆き、歌う。 G、Hみゆき節。 K忘れられるものならば、もう旅になど出ない、と歌いあげるバラード。


      
  • 私の声が聞こえますか '76 Apr.
    @あぶな坂 Aあたしのやさしい人 B信じられない頃に Cボギーボビーの赤いバラ D海よ Eアザミ嬢のララバイ F踊り明かそう Gひとり遊び H悲しいことはいつもある I歌をあなたに J渚便り K時代
     
     「アザミ嬢のララバイ」のシングル盤でのデビュー、「時代」のヒットの翌年に発表された中島みゆきのファースト・アルバムです。まだここには後年の情緒綿々とした"ふられ歌唄い"みゆきの片鱗は見られません。逆に全体として抽象的、象徴的表現がまさっている印象を受けます。
     フォーク調の曲、ブルージーな曲、バラードなど様々なタイプの曲をこなしてしまう非凡な作曲の才能と歌詞の卓越性、そして曲に合わせた多彩な歌唱表現力は、このファースト・アルバムにおいて既に顕著に現れています。惜しむらくは、アレンジがいかにも単調なこと。
     前年のポプコン、世界歌謡祭でグランプリを受賞したKがやはり光っています。喜び悲しみくり返し、別れと出逢いをくり返しながら巡る時代を歌ったこの曲を初めて聴いたときには、その詞、メロディの新鮮さに驚きました。この曲と並んで好きなのが@とG。あぶな坂を越えたところに、あたしは住んでいる。今日も坂は誰かの痛みで紅く染まり、紅い花に惹かれて今日も誰かが坂を転げ落ちる(@)。もう長いこと、あたしはひとり遊び、独楽(こま)を回したり、まりをついたりしたりして、日も暮れるころ、あたしは追いかける。独楽を抱えた長い影のあとを。鬼さんこちら、手の鳴るほうへ(G)。


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