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Keith Jarrett(1945 -  )
キース・ジャレット


ペンシルヴァニア州アレンタウンの生まれ。幼いうちから神童ぶりを発揮し、3歳になる頃よりピアノのレッスンを受け始め、7歳の時には有料のコンサートを行なった。11歳の時に両親が離婚、'65年にアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーのピアニストとして初レコーディングをし、'66年にチャールズ・ロイド・カルテットに加入し、注目を浴びるようになった。'67年にヴォルテックスから初リーダー・アルバム『Life Between the Exit Signs』をリリース、'68年には独立してトリオを結成した。

あちこちに観葉植物の鉢が置かれ、天井の真っ黒なボーズのスピーカーからはキース・ジャレットのいささかまわりくどいソロピアノが小さな音で流れていた。
『ねじまき鳥クロニクル』/ 村上春樹

理想としては、ぼくは永遠の初心者でいたい。尽きぬ驚きに胸ふるわすというのはその時だけのことだろうから。
/ キース・ジャレット



二つのパートに分けて紹介しています。

Part T: ソロ以外のアルバム
Part U: ソロ・アルバム

引用は、「キース・ジャレット 人と音楽」/ イアン・カー著(音楽の友社) によっています。
Part T: ソロ・ピアノ以外のアルバム
手持ちのアルバムの中からお気に入りのものを紹介します。( )内は録音年。
1.Still Live/枯葉(1986)
KeithJarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds) 
ミュンヘン、フィルハーモニック・ホールでのライブ録音

 キースの演奏の特質のひとつとして、過剰と言ってもいいロマンティシズムがあり、そして個人的にはその部分に一番惹かれているのですが、このスタンダーズの演奏による傑作ライブアルバムでは、それが最上の形で現れているということと、『Tales of Another』を端緒とする3人のコラボレーションによるインタープレイが最高度に発揮されているという点で、数あるスタンダーズの録音の中でも最も好きなアルバムです。そして、スタンダード曲の演奏においてもピアノソロでの即興演奏を髣髴(ほうふつ)とさせるオリジナルのフレーズがそこここで聴かれ、これも魅力となっています。 このCD2枚組みで演奏されている曲目は、"My Funny Valentine"、"枯葉"、" Come Rain or Come Shine"などスタンダードの大名曲ぞろいで、中でも"My Funny Valentine"や"When I Fall in Love"などのバラードの演奏は僕にとって、これらの曲における極めつけの演奏となっています。 これでキースの歌(?)が混じってなければ(時にトリオでなくカルテットのよう)、もっといいのにと思うけど、キースの最高の演奏には不可欠のものとしてあきらめるしかないようです。


2.My Song/マイ・ソング(1977)
KeithJarrett(p), Jan Garbarek(ts, ss), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds) 

 ぼくは、ぼくらがある種の近似性を確かに共有していると感じた・・・・・まさに申し分のない瞬間瞬間に、ぼくらはユニゾン・メロディーを演奏することができた。それはいつも実にいい響きだった!
 /ヤン・ガルバレク


 サックスのヤン・ガルバレク他の北欧のミュージシャンと結成した通称ヨーロピアン・カルテットによる録音で、これも大好きなアルバムです。ジャケット写真からもイメージされるように、これはキースのアルバムの中でも最も親密なサウンドを持ったアルバムだと思います。全曲がキースのオリジナルですが、暖かさと郷愁を感じさせるのは、ヤン・ガルバレクの個性によるところが大なのでしょう。聴いているとゆったりとした気分に浸れますが、中に1曲だけアグレッシブな"Mandala"という曲があって、口直しといった感じで入れたんだろうけど、個人的には全曲同じトーンで統一して欲しかった。


3.Death and the Flower/生と死の幻想(1974)
KeithJarrett(p, ss, perc), Dewey Redman(ts, perc), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds, perc), Guilherme Franco(perc) 

 ぼくらは誕生と死の間で生きている。あるいは、そうなのだと都合よく自分に納得させている。しかし、実は、ぼくらは自分たちの生のあらゆる永遠の瞬間に、生まれつつあると同時に死につつもあるのだ。したがって、ぼくらは花のようであることにもっと努めなければならない。というのは、それは毎日のように自らの誕生と死を経験しているからだ ―。(ジャケットに書かれたキースの詩より・清水俊彦 訳)

 これは、デューイ・レッドマンがテナーの通称アメリカン・カルテットによる代表作です。キースのオリジナル曲3曲が収録されていて、表題作"Death and Flower"は、20分以上にも及ぶ組曲風の大作で、キースがソプラノを吹いている冒頭から開始される曲は、北欧カルテットに比べハードな演奏となっていて、より緊密な構成を感じさせます。2曲目の"Prayer 祈り"は、チャーリー・ヘイデンのベースとのデュオで、いかにもキースらしいロマンティシズムに溢れたとてもいい曲です。3曲目の"Great Bird"は、多重録音も使った集合演奏が主体のラテン的なリズムを基調としたメランコリックな雰囲気のこれもいい曲です。


4.Tales of Another/テイルズ・オブ・アナザー(1977)
KeithJarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds) 

 ベースのゲーリー・ピーコックのリーダー・アルバムで、スタンダーズのメンバーによる最初の録音として記念すべきアルバムですが、それだけでなく、ここでの三者一体の演奏はとてもすばらしいものです。このアルバムでの成功が、後年のスタンダーズ結成に結びついたことは間違いのないところでしょう。演奏されている曲は、すべてピーコックのオリジナルですが、まるでキースの曲のように聴こえるというのも相性のよさを示しているのではないか。とくに最初の曲"Vignette"のシンバルから始まりキースのピアノが出てくるあたりでは、ぞくぞくするような快感を覚えるほどでアルバム中の白眉と言える曲だと思います。この他の曲では、 "Major Major"、 "Trilogy T"の高揚感に満ちた演奏や "Trilogy U"や "Trilogy V"の疾走感など皆好きです。全体的に見て、ピーコックのリーダー・アルバムということで、キースが抑制気味にしているのが結果としていい方向にいったのではという気がします。オリジナル曲によるピアノ・トリオ・アルバムの傑作。


参考Webサイト


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