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BILL EVANS(p) (1929 - 1980)
ビル・エヴァンス
6歳のときにピアノを始め、カレッジ卒業と同時にデビュー。56年、初のリーダー作を発表。58年にマイルスグループに参加。59年よりスコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)とのトリオを結成。80年に肝硬変で亡くなる5日前まで演奏していた。
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最後はビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」だった。 窓の外では雨が降り続けていた。
「ノルウェーの森」/村上春樹
「音楽は私の人生で一番重要な、意味のあることであり、私の生活にかかわる何ものよりも私を占めている」
/ビル・エヴァンス
現時点でいちばん好きなジャズミュージシャン。リリシズムという言葉がこの人ほどぴったりくるピアニストは他にいないと思う。エヴァンスの場合には、アルバムの出来、不出来の差が小さいのでどれを購入してもがっかりすることはないと思うけど、以下に聴く機会の多いディスクを何枚かあげてみました。
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「スコットは僕の次の考えが読める信じられないような奴だった」/B.Evans
「僕たちが演奏に自由を発見したのはスコットがいたからだ。彼のおかげで、やりたいことはいつもやれるという楽しさと希望があった」。/P.Motian
ビル・エヴァンスの代表作としてスコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)と組んだリバーサイド4部作(「ポートレイト・イン・ジャズ Portrait In Jazz」、「エクスプロレイションズ Explorations(下記)」、「ワルツ・フォー・デビイ Waltz for Debby(下記)」、「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード Sunday at the Village Vanguard」)を挙げない人はいないと思います。どれを選ぶかは好みの問題だけど、スタジオ、ライブ録音より各1枚ずつ選んでみました。
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1.ワルツ・フォー・デビイ Waltz for Debby(June 25,1961)/Riverside |
Bill Evans(p), Scott LaFaro(b), Paul Motian(ds)
ジャケットデザインだけでなく中身も代表作に値するもので、ニューヨークのジャズクラブVillage Vanguardでのライブ録音。冒頭のジャズクラブのざわめきの余韻の中から始まる「My
Foolish Heart」や「Waltz for Debby」、「My Romance」など名曲、名演がそろっています。もうひとつのライブ「Sunday
at the Village Vanguard」も同日の録音でこちらは、よりラファロのベースに焦点を当てたアルバムとなっているのでラファロのベースのすごさを堪能したい人はこちらがおすすめ。ラファロはこのライブの翌月に自動車事故により23才の若さで亡くなってしまう。エヴァンスはショックで半年ものあいだ家に引きこもり演奏をしなかったという。
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2.エクスプロレイションズ Explorations(Feb. 2, 1961)/Riverside |
Bill Evans(p), Scott LaFaro(b), Paul Motian(ds)
現時点で、エヴァンスのディスクの中で、いちばん好きなもの。彼の愛奏曲となる「Nardis」のトリオによる初演が収録されている。このディスクでエヴァンスは、知的というよりは耽美的といったほうがふさわしい演奏をしていると思います。すべてのナンバーがすばらしいと思うけど、なかでも躍動感のあふれる「Israel」やバラード調の「Haunted
Heart」、「I Wish I Knew」などが好き。
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3.アンダーカレント Undercurrent(1962)/United Artists |
B.Evans(p), Jim Hall(g)
「ジム・ホールと共演するのは大好きだった。彼の何が素晴らしいかといえば、彼はひとりでリズムセクション全体のようなんだ」/B.Evans
これも秀逸なジャケットデザインとして定評のあるもの。ジム・ホールは理知的なプレイをするギタリストで、これまた知性的なエヴァンスとのデュオアルバムである本作では、冒頭の「My
Funny Valentine」において快速テンポを設定し、甘くならず一見クールだけれどもうちに情熱を秘めているような演奏をしていて、聴いていると知的な興奮を覚えます。ふたりはこの4年後に、もう1枚のデュオアルバム「Intermodulation」を録音していて、こちらのほうが、よりリラックスした演奏が聴かれます。
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4.ムーン・ビームス Moon Beams(1962)/Riverside |
Bill Evans(p), Chuck Israels(b), Paul Motian(ds)
このディスクはニューヨークでの録音セッションからスローバラードを中心に選曲した構成で、同日のセッションからスインギーなナンバーを中心に選曲したディスク「How
My Heart Sings」と対になっています。ラファロが参加しているディスクと比べ緊張感は薄れているけど、その分リラックスした演奏で、夜一杯飲みながら(やはりウィスキーがブランデーが合うのでは)聴くのにぴったりのディスクだと思います。冒頭の「Re:
Person I Knew」は特に好きな曲で、ミディアムテンポのエヴァンスのオリジナルナンバーでイスラエルのソロもきまっている。その他、スタンダードナンバーの名曲の中からアルバムタイトルとなった「Polka
Dots and Moonbeams」や「I Fall
In Love Too
Easily」、「Stairway To The AStars」、「It
Might As Well Be Spring」などのバラードをエヴァンスらしく、リリカルかつ耽美的に表現しています。
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5. ユー・マスト・ビリーブ・イン・スピリング You Must Believe in Spring(1977)/Warner Bros. |
Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Eliot Zigmunds(ds)
彼は前任者スコット・ラファロの業績をくよくよ考えず、私らしい演奏をしろと励ましてくれた。/E.Gomez
このアルバムはエヴァンスが亡くなってから、追悼盤として発表されたもので、後期のディスクの中では最もよく聴いています。彼の全作品の中でも傑作として挙げられるものだと思う。ここでは、表題の春というよりは冬晴れをイメージさせる清々、透徹した音楽が聴かれます。特に冒頭の「B
Minor Waltz(For Ellaine)」は彼のオリジナル曲で、ロマンティシズムにあふれた名曲だと思う。その他にも、ミシェル・ルグラン作の表題曲をはじめ、エヴァンスのもうひとつのオリジナルである「We
Will Meet Again」、それから「The
Peacocks」や映画「MASH」のテーマなど美しい曲がそろっています。
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6. アフィニティ Affinity(1978)/Warner Bros. |
Bill Evans(p), Toots Thielemans(harmonica), Marc Johnson(b), Eliot Zigmund(ds),Larry
Schneider(ts, ss,alto flute)
「ジャズ界でハーモニカをを演奏するのは彼だけなんだ。そして僕は彼が音楽とメロディに向ける全体的な感覚が大好きなんだ」。/B.Evans
ハーモニカの名手トゥーツ・シールマンスと競演した異色作です。「夜のしじまに.... 」といったフレーズがぴったりくる感じがするロマンティシズムが充溢したディスクです。中でも、冒頭の「I
Do It For Your Love」や「Jesus'
Last Ballad」、「The
Other Side Of Midnight( Noelle's
Theme)」、「Blue
And Green」、「Body & Soul」などのナンバーが心地よくて最高。ところで、このアルバムを聴くたびにラリー・シュナイダーがいなければもっといいのにと思うのですがどんなもんでしょう。トゥーツ・シールマンスのジャズアルバムをもう1枚ということであれば、「Home
Coming('86)」がいいと思います。
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7.ラスト・レコーディング Last Recording(Aug. 31-Sep. 7, 1980) |
Bill Evans(p), Marc Johnson(b), Joe LaBarbera(ds)
「ジョー・ラバーバラとマーク・ジョンソンがいるから、ステージに上がりたくてたまらないんだ。この若いふたりに感心しているし、自分が幸運な奴だということしか言えない。彼らと演奏するのが待ち遠しいんだ」。/B.Evans
亡くなる約10日前のサンフランシスコのキーストンコーナー・ジャズ・クラブでのライブ録音です。すでに体調は最悪の状態で、医者が演奏をやめて入院することを勧めたが、彼は却下したという。彼の晩年の演奏は残された時間を意識しているかのようにテンポが速くなっていますが、ここでは更に鬼気迫るという感じがします。このトリオでの演奏では、1979年パリでのライブ録音である「The
Paris Concert Edition 1/2」がやはり名演です。
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Video-1. Bill Evans Trio T・U(1965)U:36分、白黒 |
Bill Evans(p), Chuck Israels(b), Larry Bunker(ds)
ロンドンのスタジオで収録されたもの。ほとんどうつむいたまま自己に沈潜したプレイを行っています。 このUのビデオ作品では、Waltz
for Debby を始め、How My Heart
Sings, Nardis,
Someday My Prince Will Come,
How Deep is
the Oceanなど彼の愛奏曲を演奏していて、なかではスタンダード曲のWho
Can I Turn Toがホットな演奏。Someday
My Prince
Will Comeも、ほとんどいきなりインプロビゼーションに突入し白熱した演奏を繰りひろげています。
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Video-2. Last Performance(1979)59min.、カラー |
Bill Evans(p), Marc Johnson(b), Joe LaBarbera(ds)
死の約1年半前、アイオワ州立大学での収録作品。1曲目はエヴァンス自身の作でRE
Person I Knew。好きな曲です。これを観るとラストトリオのすばらしさがよくわかります。マーク・ジョンソンのベースはAV-1の65年作品のチャック・イスラエルズよりアグレッシブでエヴァンス自身も熱が入っているようです。残念ながら65年作品と同一ナンバーは演奏していませんが、「You
Must Believe in Spring」に収録されたPeacock、MASHが聴かれます。亡くならなければ第2の黄金期となったに違いないのに残念です。
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(参考資料)ビル・エヴァンス/ピーター・ペッティンガー(相川京子 訳) |
水声社
著者はイギリス人で、クラッシックのピアニストとのこと。エヴァンスの大のファンであり、彼のディスクの収集だけでなく、数え切れないほどのライブ演奏も聴いていて、ついに本書を執筆するに至ったという人で、1998年に50代で亡くなっています。前書きの中で筆者はエヴァンスに惹かれた点について以下のように述べています。「クラシック・ピアニストのような音色でありながら、ジャズを演奏しているのだ。『エヴァンスの音』という概念は、秘められた音、不純物を取り除いた音、飾り気のない音、調和的・詩的な音色、魅惑的で新鮮な構成によって成り立っており、私が聴きたいと望んでいた音そのものだった。いつも身近にその音楽があったと思わせるような、時を超越した完成度を持ち、そして何よりも、一音一音に秘められた、もう少しで聴く側にも手が届きそうな感じがする、音楽家の静かな情熱や音に対する熱望が感じられた」。
本書は、詳細な評伝であり、レコーディング、コンサートの背景と共演ミュージシャンとの交流がよくわかるのでファンにとってはとても参考になります。6歳のときからピアノのレッスンを受け始めたエヴァンスはクラッシックの技法に精通しており、彼の作曲も、彼が好きだったラフマニノフやスクリャービンの影響を受けているとのことで、この辺りもジャズファンだけでなく幅広い層に受け入れられている要因であるように思います。
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■参考Webサイト |
・ビル・エヴァンス関連CD
・ビル・エヴァンス関連DVD
・ビル・エヴァンス関連書籍
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