HOME l  PROFILE l 海外作家国内作家 l ジャズ l ピアノ音楽 l ポップス他 l 現代音楽 l 美術館映画 l 散歩 l 雑記TWITTER
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第14番嬰ハ短調「月光」第1楽章


1801年に書かれ、ベートーヴェン(1770−1827)がピアノを教えていた伯爵令嬢ジュリエッタ("不滅の恋人"候補の一人)に献呈されている。ベートーヴェン自身、この曲を"幻想曲風ソナタ"と名づけているが、「月光」の通称は、詩人で音楽評論家のレルシュタープが第一楽章について、「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のように.....」と評したことから付いた、と伝えられているが確証はない。


右手がそっと拾って行く三連音符、それは風のそよぎ一つない死に絶えた世界に、しずかに忍び寄って来る仄明(ほのあか)りなのだ、ゆるやかに、ゆるやかに、音が音を呼び、それは少しづつひろがって行く、少しづつ育って行く、小さな波紋が次第に大きな波紋に育つように、右手の拾うしなやかな三連音符、そして降り注いで来る宇宙の光、....
風土」より「月光」第一楽章の描写/福永武彦


第1楽章は、テクニック的には難しい曲ではないようですが、それらしい雰囲気を出すのは大変だと思います。

演奏時間が短い順から並べています。
演奏者 (演奏時間)/感想
グールド

三大ソナタ集'67
(4:18)これは速い。「月光」という名称から喚起されるイメージを拒否することを第一義に意図した演奏だと思います。結果として、すっきりとした見通しのいい演奏となっていて、既成の感傷過多の「月光」に飽いた耳には新鮮に響きます。
フランソワ

三大ソナタ集
(5:03)サンソン・フランソワ(1924-1970)は芸術家肌の天才と言われた人ですが、ここでの演奏は詩的情緒に満ちたすばらしいものです。こんな風に弾けたらいいのだけど。
ピリス

四大ソナタ集'67
(5:28)この人らしい清新な詩情を感じさせる演奏で、フランソワ、ケンプの演奏とともに、とても気に入っています。このあと新たな録音もしているようなので、そちらもぜひ聴いてみたい。
バックハウス

四大ソナタ'58
(5:38)
中でもベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタを音楽史上もっとも重要なピアノ音楽とみなしていた。そしてヴィルヘルム・バックハウスがデッカに遺した録音はその基準となるべき解釈であり、並ぶもののない見事な演奏であると信じていた。おまけになんと楽しくて、生きる喜びに満ちていることだろう! 「スプートニクの恋人」/村上春樹
デッカに遺したこの「月光」第一楽章の録音に関する限り、安易な感傷に陥らず客観的に曲に相対する姿勢を保っているようです。
ケンプ

四大ソナタ集'65
(6:01)クラシック入門時の中学生の頃からずっと聴いてきたこともあって、とても思い入れがあります。後年、他のピアニストたちによる演奏を聴いても、ケンプの知的で温かい人柄を反映したこの演奏に対する共感は、いささかも変わっていません。
ホロヴィッツ

三大ソナタ集'56
(6:01)青白い月の光に照らされ森閑とした夜の情景がイメージされる演奏です。ケンプの演奏のような温もりを感じることはできませんが、ホロヴィッツの研ぎ澄まされた感性はすばらしいと思います。
ゲルバー

三大ソナタ集'87
(6:35)ゲルバーはアルゲリッチと同じアルゼンチンのブエノスアイレス出身で、しかも同年(1941年)生まれ。第一楽章は深く内面に沈潜した繊細な演奏で、後続楽章のダイナミックな演奏との対比が見事。

アラウ

ソナタ集'62
(6:46)アラウ(1903-1991)60歳頃の録音。巨匠らしい味わい深い演奏で、聴いていると心が落ち着きます。
バレンボイム

三大ソナタ'66
(7:05)バレンボイムもブエノスアイレス出身でゲルバー、アルゲリッチと同世代(1942年生まれ)。近年は指揮中心の演奏活動を行い、こちらの方面でも巨匠の域に達しているようです。ここでの演奏は旧録音ですが、バランス感にすぐれ、情感のこもった演奏です。

■参考Web
「月光」ソナタ関連CD
ベートーヴェン関連書籍


HOME l  PROFILE l 海外作家国内作家 l ジャズ l ピアノ音楽 l ポップス他 l 現代音楽 l 美術館映画 l 散歩 l 雑記TWITTER