モーツァルト
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調K.595


1791年1月(34歳)、ウィーンにて完成。モーツァルトが死ぬ年に書かれた最後のピアノ協奏曲で、借金と妻の病気、そして自身の体調も良くなかったが、書かれた曲は、明るく澄み渡った透明な音楽となっています。

 
この協奏曲は、3つの楽章が明らかに示しているように、嘆きも恨みもなく、かろやかな悦びにあふれて書かれている。あのラルゲット・カンタービレでさえ、メランコリーはついに現れないのだ。
「モーツァルトとの散歩」/ アンリ・ゲオン

天井のスピーカーからはモーツァルトのコンチェルトが流れていた。
「羊をめぐる冒険」/ 村上春樹

 

演奏時間が短い順から並べています。
演奏者 (演奏時間)/感想
バックハウス

'55
(13:24/7:05/8:38)バックハウス(1894-1981)が70歳を過ぎてからの演奏。彼はベートーヴェン弾きとして定評がありますが、ここでのモーツァルトは、骨格のしっかりした響きの豊かな明快な演奏となっています。一緒に収録されているシューマンの協奏曲もとてもいいです(こちらは'60年の録音)。
クララ・ハスキル
'57(co)フリッチャイ バイエルン国立orc.
(13:06/7:39/8:44)指揮者のフリッチャイはハスキル(1895-1960)について、"モーツァルトの音楽の中にある陽の光を聴衆の上に輝かせることが出来るのはほんとうに限られた演奏者だけだが、クララが演奏するとそうなるのだった。"と語っています。ハスキルのモーツァルトは定評のあるものですが、この演奏もそのタッチの美しさはもちろんですが、とりわけ気品に満ちたものとなっています。モノラル録音です。
マレイ・ペライア

'79(co)ペライア イギリス室内 orc.
(13:19/8:17/8:35)ペライヤ(1947- )は個人的に好きなピアニストのひとりです。彼のモーツァルトのピアノ協奏曲の演奏はとりわけ定評のあるもので、彼はイギリス室内管弦楽団を弾き振りして全曲を録音しています。"繊細で爽やか"といった形容があてはまる彼の演奏は、この曲を始めとするモーツァルトの曲にとくに相性がいいようです。最近では重厚さも加わってきたようです。
ハイドシェック

'61(co)A.ヴァンデルノート パリ音楽院orc.
13:59/8:18/9:05)ハイドシェックは'36年生まれのフランスのピアニストで個性派として知られていますが、これは彼の若い頃の録音。音の粒立ちがはっきりしていて、清潔な印象でを受けるやや憂いを帯びたロマンチックな演奏と言えると思います。
カーゾン

'70(co)ブリテン イギリス室内orc.
(14:19/8:57/8:46)カーゾン(1907-1982)は、シュナーベルを師とするイギリスを代表するピアニストで'77年には、長年の功績を認められてサーの称号を与えられています。指揮のブリテンは、「青少年のための管弦楽入門」で作曲者としても有名な人です。
 ここでのカーゾンの演奏は流麗で、繊細なタッチの美しさも特筆すべきで、透明度の高いこの曲にふさわしいものです。
内田光子

'83(co)テイト イギリス室内 orc.
(14:13/8:48/9:29)内田さん(1948- )の演奏の特質は、内へ内へと向かう求心性にあるような気がします。やはりテイト指揮のこの曲の演奏の録画ビデオも持っていますが、演奏している時の内田さんの愉悦に満ちた表情が、とても印象的です。そういった感覚的な面とは別にきわめて知的な面とが、うまくバランスがとれて、結果として完成度の高い演奏となっている気がします。
アシュケナージ

'80(co)アシュケナージ フィルハーモニア orc.
(14:08/9:18/8:56)アシュケナージ(1937- )の独奏と指揮による演奏です。この人の音は本当にきれいです。打楽器であるピアノからどうやってあんなきれいな音がだせるんだろう。とても爽やかな美しいモーツァルトで個人的にとても気に入っています。
ルドルフ・ゼルキン

'83(co)アバド ロンドンsym. orc.
(14:51/8:01/9:32)ゼルキン(1903-1991)晩年の録音。ゼルキンは88歳で亡くなる直前まで演奏活動をしていました。奇しくも同じ年に生まれ、やはり'91年に亡くなったクラウディオ・アラウも最後まで現役のピアニストでした。暖かい人間的なぬくもりを感じさせる演奏です。
エミール・ギレリス

'73(co)ベーム ウィーンフィル
(14:31/8:58/9:25)ギレリス(1916-1985)の演奏は"鋼鉄のタッチ"と形容されるダイナミックで力感あふれる表現、多彩な音色と完璧な技巧を特徴としていますが、この演奏も明快なタッチで筋のしっかり通った引き締まったものです。モーツァルトにとって最後のピアノ協奏曲となった、余分なものをそぎ落としたようなこの曲には、ふさわしい演奏なのかもしれない。
白井光子(Ms)

モーツァルト歌曲集
('85/'86録音)
このアルバムに収録されている「春への憧れ」K.596は、K.595のピアノ協奏曲の終楽章の冒頭に現れる主題によっています。この主題について、音楽学者のアインシュタインは、"最後の春を自覚したモーツァルトの諦念の明朗さ"と書いています。この歌曲では、春を待ちこがれる子ども心が表現された喜びにあふれた曲となっています。
 そのほか、この曲と同じ日に作曲された「春」K.597や「すみれ」K.476、「夕べの想い」K.523などのモーツァルトの歌曲の名作が収録されています。

■参考Web
ピアノ協奏曲第27番関連CD
モーツァルト関連書籍