メンデルスゾーン
無言歌集より「ベニスの舟歌」op.30


メンデルスゾーン(1809−1847)は富裕なユダヤ人の家に生まれ、姉ファニーと共に音楽教育を受け、早くから神童として認められ、10才のときから本格的に作曲を始めた。1835年ライプツィヒのケヴァントハウスの指揮者となった。ヴァイオリン協奏曲を作曲する頃には健康を害し、卒中のため38才で亡くなった。


運命が、時折わたし達を結んだ時、私の耳にはピアノの音が響きました。あなたにはどうでしたか。やっぱりピアノ、それとも、バイオリン。聞かせて下さい。わたしの響きは何でしたか?
「恋愛小説」/北村 薫


無言歌集は親しみやすい旋律の小曲全48曲からなり、その中で舟歌は3曲ありますが、この曲が一番有名です。この曲の哀愁を帯びた旋律は、特に日本人にうけるのではないでしょうか。技術的には、それほど難しい曲ではないけど(僕には難しかったが)、いかに旋律を美しく歌わせるかがポイントでしょう。ピアノ発表会の定番曲となっています。2005年の発表会で弾きました。

演奏時間が短い順から並べています。
演奏者 (演奏時間)/感想
M.ペライア

'87
(2:54)指の故障を克服し、復活後の1997年の録音。もともと繊細なピアニズムが特質の人ですが、この曲の演奏においても、比較的早いテンポを設定しながらも旋律を十分歌わせています。このアルバムには無言歌集よりの抜粋が全部で15曲収録されていますが、いずれも優れた演奏だと思います。同時収録されているシューベルトの歌曲のピアノ版(リスト編曲)「水の上で歌う」をすごく気に入ったのだけど、やはり難しいんでしょうね。
シフ

'86
(2:59)1986年の録音で22曲収録されています。べたつかず明快ですっきりした見通しの良い演奏というのが、僕がシフに対して持っている印象で、この曲集の演奏でも全体的に、そうした感じを受けますが、かといって無味乾燥ではなくきちんと旋律を歌わせているのはさすが。
ペーテル・ナジ

(3:02)廉価版のNAXOSレーベルで、ハンガリーの人らしい。特に難がある演奏ではないけど、他の人の演奏と比較すると、ちょっと表面的な感じがします。
ドワイヤン
'62
(3:09)ジネット・ドワイヤンはフランス人で、ドビュッシーなどを得意にしたピアニスト、ジャン・ドワイヤンの妹。1952年のモノラル録音だが意外と音質の古さは感じさせません。ていねいな演奏で好感が持てる。
田部京子

'93
(3:37)1993年の録音で25曲収録されています。叙情性に満ちたすばらしい演奏だと思います。彼女特有のクリアーなタッチのためか、決して暑苦しくなることはなくて、さわやかな感じが際立っている。無言歌集のアルバムの中では一番好きなもので、この曲集の定番と言ってもいいのではないかと思います。
 この演奏をお手本にして最初のうちは練習したのだけど、遅めのテンポではあらが目立って、どうしようもなかったです。
ダニエル・アドニ

(3:54)この曲集のアルバムとして定評のあったものです。全体的に、ゆったりと旋律を歌わせていて情感のこもった演奏です。


■参考Web
無言歌集関連CD
メンデルスゾーン関連書籍