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ブリジット・フォンテーヌ(1940−  ) 
BRIGITTE FONTAINE


ブルターニュ地方のモルレに生まれた。18歳の時パリにやってきて、ソルボンヌ大学に入学した。女優を志し、ジュリアン・ベルトーの一座に加入して、芝居の勉強をした。1963年よりパリの左岸のキャバレで歌うようになり、1966年に最初のアルバムを吹き込んだ。1968年には"包囲された人々"という映画に主演している。

私は経験なんてものを信じていない。
「私は26才」より/ ブリジット・ファオンテーヌ 

1.ラジオのように/Comme A La Radio(1970)

 前衛シャンソンと前衛ジャズの幸福な出会いにより生まれた本当に奇跡的なアルバムです。ブリジットとアレスキー、それからアート・アンサンブル・オブ・シカゴのそれぞれが固有の形で持っているしなやかな感性が、こんなにも調和してしまうなんて僕には奇跡としか思えない。当時、今より感性がずっと豊かだった時、このアルバムは、しょっちゅう聴いてはもったいないので出来るだけ聴くのをがまんしていた何枚かのアルバムの1枚でした(他には、バッハの"フーガの技法"とかベームのモーツァルトの"レクイエム"とかがあったような)。
 若くして亡くなった評論家 間章さんがこのアルバムを支えている<何か>について、<過激なやさしさ>あるいは<はりつめた抒情>と書いていて(LPライナー・ノーツ)、このアルバムに関しこれ以上の的確な表現はないと思います。
 アルバムの白眉は、冒頭の表題作でしょう。"これは全く ラジオのようなもの、音楽以外の何ものでもない"で始まるこの曲で示された音楽のあり方というのは、当時の僕にとって初めての経験であって、このしなやかさがとても貴重であると思われました。ブリジットの詩も感性に富んだものでとても好きですが、彼女の詩と音楽との調和という点では「私は26才」、「手紙」などでこれ以上は望めないという形で実現しています。
 CDではボーナス・トラックが2曲追加されていますが、別音源なので最初はとても違和感がありました。こういう形の"おまけ"は、ないほうがいいと思うんだけど..... まあ、いいか。
 

2.ブリジット W 私はこの男を知らない/Je Ne Connais Pas Cet Homme(1971)
 
 奇跡というのは、当たり前だけど極めてまれにしか起こらないものなので、「ラジオのように」と比べるとインパクトが小さいのはやむをえない事でしょう。このアルバムでは、パートナーであるアレスキーの比重が大きくなっていて、歌だけでなく彼の作曲した弦楽四重奏曲や前衛ジャズ風の曲まで収録されています。シタールやコンガを操り民族音楽のような、フォークのような独特の音楽を美声で歌うアレスキーは、1938年生まれで、現実生活でもブリジットのパートナーであり、即興詩人、画家、俳優、占い師でもあるとのこと。このアルバムの中の「やあ、元気かい」では、まるでアダモを思わせるシャンソンを聴かせてくれます。
 その他、もちろんブリジットの歌う「牧師の娘」、「モンパルナス」、それからアレスキーとのデュエット「言ってごらん」など、「ラジオのように」に比べ、気負いがなくリラックスして自然な感じで歌っているような気がします。


3.幸福/Le Bonheur(1975)
 
 このアルバムの基調は、「ファンテーヌW」と同じといってよいけれど、このアルバムで特徴的なのは彼らのコミカルで演劇風のステージの模様がコラージュのように曲間に挿入されていることです。そしてほとんどが二人のデュエットの曲で、いずれの曲も上の2作に比べると、とても聴きやすいものになっていると思います。ギターの弾き語りによる曲が多いことも関係しているのかもしれないけど。
 個人的には、このアルバムの中では、何と言ってもブリジットのソロ・ナンバーである「果樹園」が素晴らしいと思います。ちょっと「ラジオのように」の「私は26才」を思い起こさせるバラードで、彼女のセンシティブな歌声は健在です。


(参考)フル・フォース/Full Force(1980) アート・アンサンブル・オブ・シカゴ/Art Ensemble Of Chicago

 アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEC)は、レスター・ボウイ(tp他)、ジョゼフ・ジャーマン(sax他)、ロスコー・ミッチェル(sax他)、マラカイ・フェイバース(b他)およびドン・モイエ(perc)の5人のメンバーからなる60年代に結成されたフリーな集団即興演奏を主体とするグループです。フリージャズといっても、「我々の音楽はアートや人生のすべてを包括するものである」と言っているように基本的にヒューマンなもので、決して抽象的、無機的な音楽とはなっていません。
 このアルバムは、彼らのECMにおける第2作であり、ジャーマンの言葉「クラシックや現代ヨーロッパ音楽やヴードゥー音楽も、お望みなら何でも演奏する。というのは、僕らが最終的に演奏したいのは<音楽>そのものであるからだ。」が示すように、このアルバムでも、情景描写風の作品から、ニューオリンズ・ジャズ風、フリーまで様々な要素が溶け合って、総体として彼らが表現しようとしている"自由"というものが聴き手に伝わってくるような演奏となっています。
 

(参考Web)
ブリジット・フォンテーヌ関連CD


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