Philip K. Dick(1928-1982)
フィリップ・K・ディック
シカゴの生まれ。フィリップは双子の兄だったが、妹は生まれた翌月に死亡。33年に両親が離婚し、彼は母と暮す。42年に最初の長編「リリパットへ帰る」を執筆。47年カルフォニア大学バークリー校に入学するが、中途退学し、レコード店で働く。48年結婚し、6ヶ月後に離婚(その後4度結婚し、離婚している)。62年「高い城の男」が、ヒューゴー賞年間最優秀長編に選出される。72年自殺未遂、ヴァンクーヴァーのヘロイン中毒施設に入る。74年には、「ヴァリス」の中で触れられている神秘体験が続く。82年心臓発作のため死去。
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フォクナーとフィリップ・K・ディックの小説は神経がある種のくたびれかたをしているときに読むと、とても上手く理解できる。僕はそういう時期がくるとかならずどちらかの小説を読むことにしている。
「ダンス・ダンス・ダンス」/村上春樹
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1.Do Androids Dream of Electric Sheep?/アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(ブレードランナー) (1966) |
難易度:☆☆☆
リドリー・スコットによるカルト化した映画化作品により、ディックの小説の中では最もよく知られていますが、この作品を彼の代表作とするのにはためらわれます。なぜならディックの最大の特質である悪夢のような現実崩壊感覚という点において、「火星のタイム・スリップ」や「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」などに比べ希薄だと思うから。しかしながら、しばしば破綻を見せるディックの小説群の中において、この作品は安定したストーリー展開で、際立ってよくまとまっている印象を受けます。そうした意味で、ディック入門として最適なのではないかなと思います。
地球は核戦争により汚染され、大部分の人間は火星などの惑星に移住していた。残った人々の間では、稀少となった生きた動物を飼うことがステイタス・シンボルとなっていた。植民の為の奴隷として惑星に送り込まれたアンドロイドの中には、主人を殺害し地球に逃亡して来るものがいたが、主人公のリック・デッカードは、こうしたアンドロイドを捜索して、処分する賞金稼ぎ(bounty
hunter)だった。妻イーランと二人で暮し、生きた動物を飼う経済的な余裕のないデッカードは、屋上で電気羊を本物のように偽って飼っていたが、賞金を稼いで、いつか本物の動物を飼うことが彼と妻の夢だった。
地球に8体の最新型ネクサス6型アンドロイドが潜入した。人間以上の知能を持つ彼らを識別する基準は、感情移入能力の有無だけであり、この為に開発されたフォークト・カンプフ検査が唯一の手段だった。
デッカードは、アンドロイドの製造メーカーであるローゼン社で若い女性レイチェルに出会う。経営者のエルドン・ローゼンは、レイチェルを彼の姪として紹介し、デッカードに彼女をテストするよう依頼した。デッカードは、レイチェルがネクサス6型アンドロイドであることを辛うじて見破り、ローゼンに告げた。彼女は、自分がアンドロイドであることを知らされていなかった。
デッカードの「彼女は知っているのか?」の問に対しローゼンは答えた。「いいや。彼女へのプログラミングは完璧だった。だが、テストの終わりの方では彼女も疑い始めたのではないかと思う」 蒼ざめているレイチェルに、ローゼンは言った。「お前は会社の財産であり、地球に逃亡して来たアンドロイドではないのだから、彼を恐れることはないんだよ」
"Does she know?" Sometimes they didn't; false memories had been
tried various times, generally in the mistaken idea that through them reactions
to testing would be altered.
Eldon Rosen said, "No. We programmed her completely. But I think toward
the end she suspected." To the girl he said, "You guessed when
he asked for one more try."
Pale, Rachael nodded fixedly.
"Don't be afraid of him," Eldon Rosen told her. "You're
not an escaped android on Earth illegally; you're the property of the Rosen
Association, used as a sales device for prospective emigrants." He
walked to the girl, put his hand comfortingly on her shoulder; at the touch
the girl flinched.
デッカードは、困難に遭遇しながらも逃亡しているアンドロイドたちを追いつめていきますが、レイチェルとの関わりで生じたアンドロイドへの感情移入や、彼と同じ賞金稼ぎの男と行ったにせの警察本部での顛末の中で、彼自身のアイデンティティにも疑いが生じてきます。
異次元の荒野を受難を受けながら歩む聖人マーサーの苦行がいかさまであると暴露された後、デッカードはマーサーとの一体化を経験し、その実在を確信した彼がマーサーの荒野から持ち帰ったヒキガエルが電気ペットであったことは、デッカードのみならず我々読者をも混乱させます。結局、自己を含め信じることのできるものは何もないということなのか。デッカードにマーサーは、救済はどこにもないのだと言い、生の根本の状態は、自身のアイデンティティにそむくことを余儀なくされていることだと言っていますが、こういったところもディック・ワールドの特質と言えるのだと思います。
"Don't you see? There is no salvation."(中略)
"You will be required to do wrong no matter where you go. It is the basic condition of life, to be required to violate your own identity. At some time, every creature which lives must do so. It is the ultimate shadow, the defeat of creation; this is the curse at work, the curse that feeds on all life. Everywhere in the universe."
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(映画)ブレード・ランナー/Blade Runner('82・米) |
(監)リドリー・スコット (音)ヴァンゲリス (演)ハリソン・フォード、ショーン・ヤング、ルトガー・ハウアー
この映画とディックの原作との共通点は、背景のおおまかな設定だけで、内容は別のものとなっています。原作との比較という次元を越えて、これは間違いなくSFハードボイルド映画の傑作です。
2019年11月、スモッグにかすみ、工場群から炎が吹き上げ、酸性雨が降りしきるロサンゼルス、元ブレード・ランナー(逃亡したレプリカントを捜索し、処理するのが任務)のデッカードは本部に呼び出され、宇宙船を奪って地球に戻り、ロスに潜入した4体のレプリカントの捜索と抹殺を命じられた。
レプリカントたちは、自分たちの寿命(4年)が尽きかけていることを知り、レプリカントの生みの親であるタイレル博士に延命処置を要請するために戻って来たのだった。
巨大ピラミッドのような外観のタイレル社で、タイレル博士と秘書のレイチェルに会ったデッカードは、テストしたレイチェルが最新型レプリカントであることを見出す。レイチェルは、人間の記憶を埋め込まれ自分がレプリカントであることを知らなかった。レイチェルの際立つ人工美の儚(はかな)さがなんとも哀しい。
怪しげな日本語も混ざった様々な言語が行き交い、国籍不明の音楽が流れる混沌としたチャイナ・タウンでデッカードは、女性レプリカントのゾラを追い詰める。デッカードに撃たれ、ショー・ウィンドーを突き抜け、ガラスの破片と雪の舞う空間をスローモーションで落下するゾラ。
廃墟と化したアパートで人形を装い、デッカードを待ち伏せるプリス。仲間の死に慟哭し、デッカードとの壮絶な死闘にエネルギーを使い果たすロイ。雨に打たれながら寿命の尽きたロイが残したのは、彼が救ったデッカードの命、手もとから飛び立つ白い鳩と言葉だった。
お前ら人間には信じられぬものを俺は見てきた
オリオン座の近くで燃えた宇宙船
タンホイザー・ゲートのオーロラ
そういう思い出もやがて消える
時が来れば...
涙のように...
雨のように....
近未来都市のビジュアルな造形とバンゲリスの音楽が本当に素晴らしい。劇場公開版とディレクターズ・カット最終版との違いは、後者では劇場公開版にあったデッカードのナレーションを省いたことと、ラストのバンゲリスのエンディング・テーマをバックに、緑の平原を疾走する部分をカットした点です。どちらでもいいと思うけど、ラストでの圧倒的な開放感を味わえないのは、やはりちょっと残念です。
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2.Minority Report/マイノリティ・リポート(短篇集) |
難易度:☆☆
標題作を含む9篇の短篇が収録されていますが、これらの短篇では、ディックの長編でしばしば見られる構成上の難点とか破綻が少なく、きっちりとまとまっている印象を受けました。また彼の作品の最大の特徴である自己のアイデンティティや、自分を取り巻く現実の崩壊を中心テーマに置いた作品が主体となっていて、全体として読みやすいこともあり、上に紹介した長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とともに、ディック入門として適した作品集だと思います。
この短篇集では、過去に映画化された作品を中心にセレクトされています。映画との対照は以下の通りです。この中から、「Minority
Report」、「We Can Remember It
For You Wholesale」と「Second
Variety」をピックアップして紹介します。
原作: ・Minority Report /マイノリティ・リポート
・We Can Remember It For You Wholesale/追憶売ります
・Second Variety
・Impostor |
映画化作品:
・マイノリティ・リポート('02 米) 以下で紹介
・トータル・リコール('90・米) 以下で紹介
・スクリーマーズ('95・米)以下で紹介
・Impostor('02・米) |
○Minority Report/マイノリティ・リポート
未来世界では、予知能力を持った3人のミュータントを使った犯罪予知が確立し、犯行が起こる前に未来の犯罪者(?)を逮捕することにより、犯罪発生がほとんどなくなっていた。犯罪予知局(the
Department of Precrime)の局長アンダートンは、ほかでもない自分自身が殺人を犯すことを予知されたことを知って逃亡した。予知の決定は、3人の予知能力者(precog)のうち2名以上の予知が一致した場合にされるが(majority
report)、実は残りの一人の予知(minority
report)が全く正反対であることもあり、アンダートンは無実を証明するために、このマイノリティ・リポートを入手しようとした。また彼を利用して、犯罪予知局の権威を失墜させ、その権力を奪おうとする軍が暗躍していた。
未来の予知を3人の予知能力者の多数決で行なうという発想が、この作品の成功のポイントとなっています。
minority reportが、二人の予知者によるmajority
reportと若干異なった予知結果をもたらす事が普通であり、この現象は"多重未来
multiple-futures"の理論により説明されるとし、もし一つの未来しか予知されないとしたら、未来は確定されてしまうことになり、犯罪予知局が介入して未来を変える可能性もなくなってしまうから(以下の引用は、市民向けラジオ放送から)、ということらしい。タイムマシンによる過去の改変が現在に及ぼす影響と似たパラドックスがあるみたいです。
It is much more common to obtain a collaborative majority report of two
precogs, plus a minority report of some slight variation, usually with
reference to time and place, from the third mutant. This is explained by
the theory of multiple-futures. If only one time-path existed, precognitive
information would be of no importance, since no possibility would exist,
in possessing this information, of altering the future.
○We Can Remember It For You Wholesale/追憶売ります
He awoke ― and wanted Mars. The valleys, he thought. What would it be like
to trudge among them? Great and greater yet: the dream grew as he became
fully conscious, the dream and the yearning. He could almost feel the enveloping
presence of the other world, which only Government agents and high officials
had seen. A clerk like himself? Not likely. (中略)
I will go, he said to himself. Before I die I'll see Mars.
冒頭の部分です。ダグラス・クエイドは何故かわからないが、火星へ行ってみたいとの思いが増すばかりだった。安月給の身で、諜報員でもない彼が火星に行けるはずもなく、そこでクエイドは希望した場所への旅行の記憶を提供するリコール社を訪れ、火星旅行の疑似体験の契約をした。
旅行の記憶を植え付ける前段階で、クエイドの心の深層に抑えられていた記憶の一部が意識の表面に浮かび上がってきた。彼はかつて大きな任務を担って火星へ派遣されたことがあったのだった。クエイドが任務を達成した後、その記憶を完全に消去し損ねた諜報機関から彼は追われることになった。
本当の自分は、今まで信じて疑わなかった自分自身の姿とは全く違っていた、そして自分の真の姿が見えてくるに従い、周囲の様相もそれに伴い変化してくるというのは、ディックの作品の典型となっています。クエイドが諜報機関と取引をし、再度リコール社でニセの記憶を植え付けようとしたとき、また新たなとんでもない記憶が甦ってきて... という展開は笑えます。
○Second Variety
核戦争で荒廃したアメリカでは、ロシアとの局地戦争が続き、政府を始めほとんどは既に月の基地に移っていた。どんな環境、状況でも戦闘できる殺人機械ロボットが地球の地下深くの無人工場で自動生産され、戦場に投入されていた。工場ではさらに進化した人間型戦闘ロボットが自動設計され、生産を始めていて、新たに戦場に現れた人間型戦闘ロボットは、敵味方の区別なく人間を攻撃のターゲットにしていた。これらの中で、既にバラエティー1とバラエティー3のロボットの存在が判明していたが、バラエティー2についてはまだ認識されていなかった。ヘンドリックス少佐は、一人でロシア軍との交渉に行き、遭遇した女性を含むロシア軍兵士3名の中の一人が、まだ知られていないバラエティー2のロボットなのではないのかという疑いを抱き始める。
機械がそれ自身で進化していくという展開では、スタニラフ・レムの「砂漠の惑星」という名作がありますが、この作品がいかにもディックらしいのは、登場する人間型ロボットの形態が、テディ・ベアを抱いた少年(バラエティー3)であり、傷ついた兵士(バラエティ1)であったりするところで、機械同士が戦い始めるという最後のオチがいかにもという感じで面白い。
ヘンドリックス少佐とロシアのルディ伍長の会話で、進化した機械が人間に取って代わって地球上を支配するのではないかと言う少佐に対し、ルディが奴らはあんた達が作った単なる殺人機械で、生きているわけではないと言い返す場面から;
'It makes me wonder if we're not seeing the beginning of a new species.
The new species. Evolution. The race to come after man.'
Rudi grunted. 'There is no race after man.'
'No? Why not? Maybe we're seeing it now, the end of human beings, the beginning
of a new society.'
'They're not a race. They're mechanical killers. You made them to destroy.
That's all they can do. They're machines with a job.'
'So it seems now. But how about later on? After the war is over. Maybe, when there aren't any humans to destroy, their real potentialities will begin to show.'
'You talk as if they were alive!'
'Aren't they?'
There was silence. 'They're machines,' Rudi said. 'They look like people,
but they're machines.'
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(映画)マイノリティ・リポート('02・米)、 トータル・リコール('90・米)、スクリーマーズ('95・米) |
○マイノリティ・リポート('02・米)
(監)スティーブン・スピルバーグ、(演)トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン
(音)ジョン・ウィリアムズ
ディックの原作に拠っているのは、3人の予知能力者(プリコグ)による犯罪予知の仕組みの設定と、アンダートン自身が犯すと予知された、彼の全く知らない男の殺人のため当局に追われることになるという点で、映画のストーリー展開は、原作とは全く異なっています。
2054年、ワシントンD.C.の犯罪予防局のチーフであるアンダートン(トム・クルーズ)は6年前に、まだ小さかった息子を誘拐され、事件が元で妻とも別れていた。自分の家族に降りかかったような事件の発生を未然に防ぐ為、犯罪予防局で働くようになった彼だったが、過去を忘れることができず、その悲しみをドラッグでまぎらす日々を送っていた。FBIから調査官ウィトワー(コリン・ファレル)が派遣され、犯罪予知システムの査察をしていた時、アンダートンが36時間後に殺人を犯すという予知がされ、逃亡した彼は犯罪予防局、FBIの双方から追われることになった。
同じくスピルバーグの撮ったインディ・ジョーンズ・シリーズと同様の、ノン・ストップ サスペンス&アクションの第一級の娯楽大作です。もっとも「レイダース/失われたアーク」に比べると、若干ボルテージが落ちるような気がします。
50年後の未来世界をどのように描いているかも興味深いところですが、進化した交通システム、ホノグラム・ビデオ(3次元立体映像)、網膜スキャンによる個人識別など、さほど目新しいものではなく、中産階級の暮す進化した住居と、現代と全く変わらないまま朽ち果てたスラム街が共存する未来都市の姿は、まあ妥当なところかなと思いました。ただ、プリコグが予知した犯罪の加害者と被害者の名前の刻印された球が管の中をコロコロというのは、興ざめでした。
ともあれ、こういった映画を通じても、人類が到達できる発展の限界が、かなりはっきりと見えてきてしまっているのが、我々の生きている時代なんだろうな。
(関連音楽)
ジョン・ウィリアムズのオリジナル・サウンド・トラックとは別に、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」とシューベルトの交響曲第8番「未完成」からの音楽が挿入されていました。いずれの曲も悲哀に満ちた旋律が引用され、アンダートンが自宅で、過去に撮った息子や妻のホノグラム・ビデオを見ながらひとり悲しみに堪えているシーンなどで使われ、効果を挙げていました。
交響曲第6番「悲愴」/チャイコフスキー
小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラ
'95年録音、「白鳥の湖」を併録
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交響曲第8番「未完成」/シューベルト
クライバー、ウィーン・フィル
'78年録音、「交響曲第3番」を併録
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○トータル・リコール('90・米)
(監)ポール・バーホーベン (演) アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、 シャロン・ストーン、 (音)ジェリー・ゴールドスミス
P.K.ディックの短篇「We Can Remember It For You Wholesale」(追憶売ります)の映画化作品です。ストーリーの背景の設定は原作と同じですが、原作では物語が地球上に留まるのに対し、映画の方ではクエイド(A.シュワルツェネッガー)は火星に行き、諜報機関のボスであるコーヘイゲンや、彼の部下のリクターを相手に大暴れすることになるというアクション指向で文句なしに面白い映画です。
原作者のディックらしいところは、空港でクエイドが化けた女性が正体を現す場面とか、それにクエイドの火星での体験が現実のものなのか、あるいはリコール社が植え付けた擬似記憶なのか、さだかでないというあたりでしょう。リコール社での場面から判断すると、後者のような気がしていて、ラストでメリーナが「まるで夢みたい」という言葉が本当なのではないかな。
クエイドの妻を装い、実はクエイドを監視する諜報機関のエージェントだった女性を、当時まだ売り出し中だったシャロン・ストーンが演じていて、なかなか魅力的でした。又、クエイドを最後まで追い詰めて、もちろん最後にはクエイドに殺(や)られてしまうリクター(マイケル・アイアンサイド)が人間味がにじみ出ていて、クエイド以上に共感できました。
○スクリーマーズ/Screamers('95・米)
(監)クリスチャン・デュゲイ (演)ピーター・ウェラー、ジェニファー・ルービン
P.K.ディックの短篇「Second Variety」の映画化作品です。物語の背景が原作での地球から惑星シリウスに移され、敵対する勢力もアメリカ対ロシアから、惑星に産するエネルギー鉱石の利権を巡る連合軍と企業NEBとの争いに変わっているほかは、概ね最後まで原作の展開に沿っています。
2078年、惑星シリウスはエネルギー鉱石の放出する放射能により、大部分の人間が死に、かつて美しかった星は荒廃していた。それでも連合軍とエネルギー鉱石を採掘する企業NEBとの間の10年にもおよぶ戦闘は続いていた。NEBの司令官ジョー・ヘンドリックスは、意味のない戦争を終結させる為、連合軍との和平交渉に赴(おもむ)き、途中でニュー・タイプの人間型スクリーマー(戦闘用ロボット)や連合軍の女性を含む兵士達と遭遇することになります。
荒廃した惑星基地の様子や、原作に登場するテディ・ベアを抱いた少年タイプのスクリーマーも登場して、それなりに興味深いのですが、いまいち迫力に欠けるのは否めません。「エイリアン」の路線を追っているのだろうけど、肝心のスクリーマーたちがそれほど怖くないんですね。
音楽関連では、ジョーがオペラファンという設定で、基地でモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」の音楽を流していて、それが後のエピソードの中で生かされていたのが面白かった。
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(次回紹介予定)Ubik/ユービック(1969) |
Book Description;
Filled with paranoiac menace and unfettered
slapstick, UBIK is a searing metaphysical
comedy of death and salvation--salvation
which comes in a convenient aerosol spray,
to be used only as directed!
(amazon. com. より)
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■参考Webサイト・作品リスト |
○ 関連出版リスト : 洋書、和書
○ 参考資料
・フィリップ・K・ディック(Wikipedia)
・Philip K. Dick(Wikipedia 英語)
・フィリップ・K・ディック・リポート
・あぶくの城―フィリップ・K.ディックの研究読本
・悪夢としてのP・K・ディック―人間、アンドロイド、機械
・フィリップ・K・ディックの世界―消える現実/ポール・ウィリアムズ
○ 主要作品リスト
- Handfull of Darkness(1955)
- Solar Lottery/World of Change/ 偶然世界(1955)
- The World Jones Made/ ジョーンズの世界(1956)
- The Man Who Jaded/ いたずらの問題(1956)
- Eye in the Sky/ 虚空の眼(1956)
- The Variable Man(1957)
- The Cosmic Puppets/ 宇宙の操り人形(1957)
- Time out of Joint/時は乱れて(1959)
- Dr. Futurity/ 未来医師(1960)
- Vulcan's Hammer/ バルカンの鎚(1960)
- The Man in High Castle/ 高い城の男(1962)
- The Game Players of Titan/ タイタンのゲーム・プレーヤー(1963)
- Martian Time Slip/ 火星のタイム・スリップ(1964)
- The Simulacra/ シミュラクラ(1964)
- The Penultimate Truth/ 最後から二番目の真実(1964)
- Clans of the Alphane Moon/ アルファ系衛星の氏族たち(1964)
- The Three Stigmata of Palmer Eldrich/ パーマー・エルドリッチの三つの聖痕(1965)
- Dr. Bloodmoney, or How We Got along after
the Bomb/ ブラッドマネー博士(1965)
- The Crack in Space(1966)
- Now Wait for Last Year/ 去年を待ちながら(1966)
- The Unteleported Man/ テレポートされざる者(1966)
- Counter-clock World/ 逆まわりの世界(1967)
- The Zap Gun/ ザップ・ガン(1967)
- The Ganymede Takeover(1967)
- Do Androids Dream of Electric Sheep/ アンドロイドは電気羊の夢を見るか(1966)
- (Blade Runner/ブレードランナーのタイトルでも
'82に出版されている。)
- The Preserving Machine(1969)
- Ubik/ ユービック(1969)
- Galatic Pot-healer/ 銀河の壺直し(1969)
- A Maze of Death/ 死の迷宮(1970)
- Our Friends from Flolix 8/ フロリクス8から来た友人(1970)
- The Philip K. Dick Omnibus(1970)
- We can Build You/ あなたを合成します(1972)
- The Book of Philip K. Dick(The Turning Wheel
and Other Stories)(1973)
- Flow My Tears, The Policeman Said/ 流れよ涙、と警官は言った(1974)
- Deus Irae(with Roger Zelazny)/ 怒りの神(1976)
- A Scaner Darkly/ 暗闇のスキャナー(1977)
- Condessions of a Crap Artisit/ 戦争が終り、世界の終りが始まった(1978)
- The Golden Man(1980)
- Valis/ ヴァリス(1981)
- The Divine Invasion/ 聖なる侵入(1981)
- The Transmigration of Timothy Archer/ ティモシー・アーチャーの転生(1982)
- The Man Whose Teeth were All Exactly Alike(1984)
- Robots, Androids, and Mechanical Oddities(1985)
- I Hope I shall Arrive Soon(1985)
- Radio Free Albemuth/ アルベマス(1985)
- In Milton Lumky Territority(1985)
- Warning. We are Your Police(1985)
- Puttering about in a Small Land/小さな場所で大騒ぎ(1985)
- Humpty Dumpty in Oakland(1986)
- The Collected Stories of Philip K. Dick(1987)
- Mary and the Giant/メアリと巨人(1987) 執筆時期不明
- Nazism and the High Castle(1987)
- Schizophrenia and the Book of Changes(1987)
- The Broken Bubble(1988)
- Nick and the Glimmung/ ニックとグリマング(1988):児童向け
- The Dark Haired Girl(1988)
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