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オディロン・ルドン(1840−1916)
Odilon Redon 象徴主義

ボルドーで生まれ、主としてパリで活躍した。生来病弱だったためと、孤独な生い立ちを経たことから、音楽や詩、さらには哲学にも親しむ少年として育ち、のちに画家となってからも、視覚の真実とは異なる夢幻や神秘を求める幻視者として、自己の内奥に潜む精神の光と闇とを表現しつづけるようになった。そして自分の内なる声に聞き入りながら、はじめは木炭や版画によるモノクロの表現を試み、その後パステルや油絵で色彩豊かな世界を開示した。
 

ただ夢だけが永遠で美しい。
/ フェルナンド・ペソア
 
ルドンの芸術は白と黒とによつて、この世のものとは思はれぬ異次元の消息を伝へた。しかし、やがて色彩を得ることによつて、地上的冥府的なものは影をひそめ、天上の美を暗示するものとなつた、と言へるのではないだらうか。
『彼方の美』/ 福永武彦
 
孤独のなかにおいてこそ、芸術家は、自分が、人知れぬ深みで、強く生きているのを感ずる。外部の世間の何ものも彼をそそのかしはしないし、彼はおのれをいつわらせもしない。孤独においてこそ、彼はおのれを感じ、おのれを見出すのだ。
 
私の独創性はすべて、目に見えるものの論理を可能な限り目に見えないものに役立たせることによって、ありそうもない存在たちを、本当らしさの法則に従って、人間的に生きさせることにある。
/ オディロン・ルドン

画像をクリックすると、拡大画像が見られます。概ね制作年順に掲載しています。

ルドン夫人の肖像
(1882年)
油彩・カンヴァス 45.5×37.5cm
ルーヴル美術館

 私は妻の中に、聖なる導きの糸のごとく生命にあふれた運命の女神を認めました。彼女は、もっとも悲劇的な時代を、死ぬことなく過ごさせてくれました。
/ ルドン

パルジファル
(1891年)
リトグラフ 32.2cm×24.2cm
岐阜県美術館

ワーグナー最後の楽劇「パルジファル」に取材した作品。

ブリュンヒルデ(神々の黄昏)
(1894年)
リトグラフ 38.0cm×29.2cm
岐阜県美術館

ブリュンヒルデはワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」に登場する女性戦士で、ルドンは何枚かの作品を残しています。これらの中では最も女性らしさが表現されている作品。


眼をとじて
(1890年以降)
パステル、紙 46.0cm×36.0cm
エピナル、ヴォージュ県美術館

「目をとじて」には多くのヴァージョンがあります。この絵はパリのオルセー美術館にある油絵をパステルで再現したもの。


球、あるいは黄色のケープ
(1895年頃)
パステル、紙 48.5cm×35.3cm
フジカワ画廊

ルドンは神秘的な幻視を経験していて、この絵もルドンにとっては現実であった情景を描写したのではないかと考えられます。


キュクロプス
(1895-1900年)
油彩、板 64cm×51cm
クレラー=ミュラー美術館/オッテルロー

ギリシア神話からの題材。キュクロプス族の一つ目の巨人ポリュフェモスは、海のニンフ、ガラテイアを愛していたが、彼女が愛したのは美青年アキスだった。

 
ベアトリーチェ
(1896年頃)
パステル 鉛筆 紙(板張り) 34.5×30 .0cm
イアン・ウッドナー・ファミリー・コレクション 

ベアトリーチェはダンテの永遠の恋人。タテ、ヨコ約30cmの小さな作品。
 
(1904年)
油彩・厚紙 56×43 cm
個人蔵

若き仏陀
(1905年)
油彩・板 64.5×49.0cm
個人蔵


レオナルド・ダ・ヴィンチ礼讃
(1908年頃)
パステル・板 116×50 cm
アムステルダム 市立美術館

 暗示的な芸術は、影と心の中で構想された線のリズムとの神秘なたわむれにひたすら頼ることなしには、なにひとつ供給することはできない。ああ、このたわむれがダ・ヴィンチの作品における以上に高度な結果ををかって示しただろうか。
/ ルドン

ドルイド教の巫女
(1910年頃)
パステル・紙 39.4×34.4cm
イアン・ウッドナー・ファミリー・コレクション

 ドルイドは古代ケルト人の信仰を司(つかさど)った聖職者、司祭階級で絶大な権力を持っていた。

青い花瓶のアネモネとリラ
(1912年以降)
パステル 厚紙 73.8×59.7cm
パリ プティ・パレ美術館

ルドンの花は写生画ではなく、彼岸に咲く幻想の花のようです。
 
 
野の花
(1912年以降)
パステル・紙 57×35cm
オルセー美術館

 再現と想起というふたつの岸の合流点にやってきた花々、それは芸術そのものの大地であり、精神によってならされ耕された、現実の肥沃の地なのである。
/ ルドン


オルフェウス
(1913年以降)
パステル・厚紙 70×56.5cm
クリーヴランド美術館


 オルフェウスは、ホメロス以前のギリシアにおける最大の詩人と称される神話上の人物で、竪琴の名手だった。森のニンフ、エウリュディケを妻としたが、ある日彼女は蛇にかまれ死んでしまう。妻を連れ戻す為、冥府に降りたオルフェウスは、地上に戻るまで、どんな事が起きても妻を振り返らないことを条件に、妻を連れて帰る許しを得たが、いま少しのときに、約束を破った為にエウリュディケは、永遠に失われてしまう。現世に戻ったオルフェウスは、冥府の秘儀を男たちにのみ伝えた為、トラキアの女達に怨まれ、殺されてしまう。屍体を八つ裂きにされ海に投げこまれたが、頭部と竪琴のみがレスポス島に流れついた。


中国花瓶の花
(1916年)
油彩・カンヴァス 72.2×54.0cm
メトロポリタン美術館

 花瓶の中で息づいている素朴な花のこのような観照ほど、私を喜ばせてくれたものはありませんでした。
/ ルドン

ペガサス・岩上の馬
パステル カルトン 80.7×65.0 cm
ひろしま美術館

ペガサスは、ギリシア神話に登場する天駆ける有翼の神馬。ルドンはこの主題で何枚もの作品を残しています。