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John Coltrane(ts, ss)(1926−1967)
ジョン・コルトレーン


少年期にアルト・サックスをスクール・バンドで吹く。'49年にディジー・ガレスピー楽団に加入。'55年にはマイルス・コンボに参加したが、約1年で麻薬のため退団。その後セロニアス・モンクに師事し、'57年にはプレスティッジと専属契約、多くのセッションを録音し、同年11月にマイルス・コンボに復帰した。同コンボではモード手法の洗礼を受け、'59年、「Giant Steps」において"シーツ・オブ・サウンド"奏法を完成させた。'60年には自己のコンボを結成し、AtlanticやImpulseに多くの作品を残した。'65年の問題作「アセンション」以降はフリー・ジャズへの転身を図った。


僕はためしにジョン・コルトレーンの「バラード」のテープをかけてみたが、彼女はとくに文句は言わなかった。何が鳴っているのか気づきもしないようだった。僕はコルトレーンのソロにあわせて小さな声でハミングしながら車を走らせた。
「ダンス・ダンス・ダンス」/村上春樹


音楽は人間の心の表現、あるいは人間そのものの表現であり、まさにいま起こっていることを表現するものだと思う。それはすべてを、人間のすべてを表現するものだろう。
/ジョン・コルトレーン



1.Ballads/バラード(1961/1962)
John Coltrane(ts), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)

 コルトレーンは僕のジャズ喫茶時代のアイドルであったけど、当時このアルバムは、ほとんど聴いた事がなかった。もっとアグレッシブなアルバムが好きだったし、ジャズ喫茶でもめったにかからなかったのではないかな。この時期マウスピースの調子が悪くて急速調の曲が吹けなかったための録音という話も伝わっていて、このアルバムを軽くみていた事もあるかもしれない。
 勿論いまではお気に入りのアルバムの一枚となっています。特に、今はスタンダード曲を中心に聴いているので、スタンダードの名曲が収録されているこのアルバムを聴く機会が多い。コルトレーンのバラード演奏は、甘くなり過ぎず、格調高いところがいいと思います。 中では「Say it」、「You don't know what love is」、「I wish I knew」、「What's new」などが素晴らしい。特に「You don't know what love is」は個人的に好きな曲で、ここでの演奏は、エリック・ドルフィーの「Last Date」でのフルートによるものと並んで好きなものです。


2.Blue Train/ブルー・トレイン(1957)
John Coltrane(ts), Lee Morgan(tp), Curtis Fuller(tb), Kenny Drew(p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds)

 コルトレーンがブルーノートに残した唯一のリーダー・アルバム。 ハード・バップ・イディオムによる演奏で、リラックスした中にもコルトレーンらしいハードさもあって、彼のこの時期を代表するきちっとした作品となっています。3管構成で、共演しているのは当時注目を浴びていた、りー・モーガン(tp)とカーティス・フラー(tb)で、とくにこの時まだ弱冠19歳であったリー・モーガンの思い切りの良い演奏は特筆すべきものです。収録曲の中では、やはり冒頭の自作のタイトル・ナンバーが、親しみやすいテーマと各プレーヤーのソロの充実とで一番印象的です。そのほか唯一のバラードナンバー「I'm Old Fashioned」も良い。


3.Soul Trane/ソウル・トレーン(1958) 
John Coltrane(ts), Red Garland(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)
 
 この時期では貴重なワン・ホーン・カルテットによる録音で、コルトレーンのソロを、たっぷりと聴けるプレスティッジにおける名盤です。全部で5曲収録されていて、中では冒頭の「Good Bait」や、彼の得意曲となるバラード「I Want To Talk About You」でのコルトレーンとレッド・ガーランドの親密なソロや「Russian Lullaby」での"シーツ・オブ・サウンド"と呼ばれるコルトレーンの超特急アドリブ・プレイが、とても印象的です。もう1曲のバラード「Theme For Ernie」でのコルトレーンの演奏も歌心があって好きです。
 この時期の他のアルバムでの彼の好きな演奏には、たとえば『Coltrane』(1957)でのバラード「Violets For Your Furs」や、『Standard Coltrane』(1958)での「Spring is Here」や、『Coltrane's Sound』(1960)での「Body and Soul」などたくさんあります。


4.Africa Brass/アフリカ・ブラス(1961)
John Coltrane(ts), Booker Little(tp), Freddie Hubbard(tp), Julian Priester(tb), Charles Greenlee(tb), Eric Dolphy(as, bcl), Mccoy tyner(p), Paul Chambers(b), Reggie Workman(b), Elvin Jones(ds)
 
 インパルスへの吹き込み第1作となる本作品では、タイトル通り強力な(贅沢な)ブラスセクションを加え、サウンドに厚みが出て、かつとてもカラフルになっています。なんと言っても冒頭の「Africa」での重量感あるリズムによる'のり'が素晴らしい。ブラス・セクションのアレンジは、エリック・ドルフィーが行っている。このほかの「Blues Minor」や、ソプラノ・サックスによる「Greensleeves」も名演であり、聴き所の多いアルバムです。
 この年には、ドルフィーを加えたメンバーによりビレッジ・バンガードでのライブ録音も行っていて、ここでの「朝日のごとくさわやかに」でのコルトレーンのソプラノ・サックスによる演奏は、この曲の代表的名演だと思います。


5.Selflessness/セルフレスネス(1963/1965)
John Coltrane(ts), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Roy haynes(ds) / 1963
John Coltrane(ts), Pharoah Sanders(ts), Donald Garrett(bcl), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)/ 1965
 
 コルトレーンのソプラノ・サックスによる代表的ナンバーである「My Favorite Things」の極めつけの演奏として、ジャズ喫茶で人気のあったアルバムで、当時(70年代)、コルトレーンのアルバムの中では最も多くリクエストのあったものではないかと思います。「My Favorite Things」は、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の中でジュリー・アンドリュースが子供たちに歌って聴かせる曲がオリジナルですが、コルトレーンは、特にこの曲が好きだったみたいで、フリージャズに踏み入った後でもこの曲を演奏しています(「Village Vangurd Again」、「Live in Japan」など)。ライブ演奏である事と、ロイ・ヘインズのドラムスのあおりが白熱した演奏となった要因だと思います。3曲目のタイトルナンバーは、'65年10月の録音であり、既にフリーに突入した時期の演奏なので、ちょっとアルバム構成として首を傾げざるを得ませんが(たぶん死後発売されたためなんだろうけど)、まだマッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソンもエルヴィン・ジョーンズも辞めていない時期で、それほど違和感はなく、個人的には好きな演奏です。
 

6.Crescent/クレッセント(1964)
John Coltrane(ts), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)
 
 吹きまくるのではなく、じっくり聴かせるナンバーが中心で、どちらかというと「Ballads」の系列に属するアルバム。とくに2曲目のオリジナルのバラード「Wise One」は、このアルバムの白眉というべき演奏で、もはや円熟の境地のコルトレーンの情感豊かな内省的なプレイが聴けます。 カルテットとしてのチームワークもこの時期、最高潮で、1曲目のタイトル・ナンバーでの静かな燃焼とも言うべき演奏や、もう1曲のバラード「Lonnie's Lament」でのマッコイ・タイナーやジミー・ギャリソンのソロ・プレイなどとても印象的で、「Ballads」と並び、聴くことの多いアルバムです。
 

7.A Love Supreme/至上の愛(1964)
John Coltrane(ts), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)
 
"私はセイント(聖者)のようになりたい。" / コルトレーン

 タイトルの"至上の愛"とは神への感謝であるとの事で、いかにも求道者コルトレーンらしいという気がします。全体が4つのパートに分かれた組曲となっていて、それぞれ「承認」、「決意」、「追求」、「賛美」となっています。確かに精神性を強く感じさせる演奏ですが、その辺を意識しないで聴いても、4人が一体となってつくり上げた演奏を収録したこのアルバムは、コルトレーンの代表作として評価するに値すると思います。組曲としての統一感があって、例えて言えば出来の良い交響曲を聴いたような感じがします。
 

8.Transition/トランジション(1965)
John Coltrane(ts), Mccoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)
 
 インパルスに残した録音の中では、個人的に高く評価しているアルバムです。この録音から18日後にはフリー突入宣言である「Ascension/アセンション」が録音されており、コルトレーンが調性からまさに離脱しようとするぎりぎりのところを生々しくとらえている傑作だと思います。特にテンションが高くスリリングな冒頭の「Transition」と、それに続く美しいオリジナル・バラード「Dear Lord」は、求道者コルトレーンの到達したひとつの境地を示しているのではないかと思います。
 「Ascension」以降のアルバムの中では、「Live in Seattle」、「Village Vanguard Again」や「OM」なんかを、以前はよく聴いていたんですが、このごろは、気力・体力的にちょっときつくなってきたみたいです。
 
参考Webサイト
 

(DVD)The Coltrane Legacy/コルトレーン・レガシー(1961/1963) 

本当に、彼は心の優しい、物静かな男だった。それは誰もが認めるだろう。/エルヴィン・ジョーンズ
 
 '61年のドイツでのTV出演時のライブ、'63年のサンフランシスコでのTV出演時の映像と共演者のインタビューを収録したもの。
 '61年の演奏では、エリック・ドルフィーが加わっていて非常に貴重な映像。ベースは、レジー・ワークマン。曲目は3曲で、スタンダード・バラードの「Every Time We Say Good-bye」、オリジナル・ナンバーの「Impressions」、それから「My Fovorite Things」となっています。ドルフィーは、「Impressions」ではアルト、「My Favorite Things」では、フルートでのプレイをしています。 この映像では、とりわけマッコイ・タイナーの、時にリリカル、時に白熱したプレイがヴィヴィッドに捉えられています。
 '63年の演奏では、ベースがジミー・ギャリソンに代わり、レギュラー・カルテットの演奏で、「Afro Blue」、「Impressions」、「Alabama」の3曲。ここでも、タイナーのピアノ、特に「Impressions」でのエモーショナルなプレイはすごい。


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