JAZZ GUIDE
MILES DAVIS(tp)(1926 - 1991)
マイルス・デイビス


 13才でトランペットを手にし、44年ジュリアード音楽院入学のためニューヨークに進出。チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーらと共演しビバップの洗礼を受けたのち、48年に作編曲を重視した歴史的9重奏団を結成し注目を集める。52-53年は麻薬中毒のためスランプに陥っていたが、54年に復活し、以後ハードバップ→モード→フュージョンと、一貫してジャズシーンをリードする存在として活躍。76年には肉体的・精神的疲労から引退したが81年に奇跡的なカムバックを遂げた。


机の前に座って「カインド・オブ・ブルー」をオートリピートで何度も聴きながら雨の中庭の風景をぼんやりと眺めているくらいしかやることがないのです。
「ノルウェーの森」/村上春樹


I'm always thinking about creating. My future starts when I wake up every morning.  Every day I find something creative to do with my life. Music is a blessing and a curse.  But I love it, wouldn't have it no other way.
「マイルス自伝」/Miles Davis


常に前進し続け、ジャズを革新していったその創造力と影響力はまさに帝王と呼ばれるに値します。

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 1.カインド・オブ・ブルー Kind of Blue(1959) 
   Miles Davis(tp), Julian Cannonball Adderley(as), John Coltrane(ts), Bill Evans(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(ds)

 好きなジャズのディスクを5枚選べと言われたときにこのディスクをその中に加えることについてちゅうちょしないと思います。モードジャズの輝かしい成果として知られている大傑作ですが、「So What」や「Blue in Green」において実現している静溢ながら厳しい空間はジャズだけにとどまらず他のどんなジャンルの音楽でも得られないものだと思います。何と言ってもビル・エヴァンスの貢献が特筆すべきものですが、ライナーノーツも彼が書いていて、その中で即興性を重視するジャズのパフォーマンスを日本の墨絵にたとえています。このメンバーでの演奏は他のディスクでは「1958 Miles」で聴くことができます。またマイルスは彼の自伝の中で、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲とラフマニノフのピアノ協奏曲第4番の影響もあるんだと言っています。



 2. バグス・グルーヴ Bags Groove(1954)
   Miles Davis(tp), Milt Jackson(vib), Sonny Rollins(ts), Thelonious Monk(p), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clark(ds)

 ハードバップ黎明期の熱気を感じさせる名盤です。とくに冒頭のタイトル曲がすばらしい出来だと思いますが、これは有名な12月24日のクリスマスセッションでの収録曲です。マイルスとモンクが音楽性の違いからけんかをしていたという話が流布されていますが、マイルスは自伝の中でモンクのピアノのバッキングでは演奏しにくいので自分のソロの時には弾かないでくれと頼んだだけとこれを否定しています。それはともかくとして、モンクもミルト・ジャクソンもそれぞれの個性を最大限に発揮している名演です。とくにモンクのソロは唯一無比のもの。このセッションの他の演奏は「Miles Davis and the Modern Jazz Giants」に収録されていてこれも必聴の名盤です。これ以外の曲は6月の録音で、ピアノはホレス・シルバーに替わり、テナーのソニー・ロリンズが加わります。モンクがいないせいか緊張感は薄れますが、充実した演奏です。



 3. サムシン・エルス Somethin' Else(1958)
   Cannonball Adderley(as), Miles Davis(tp), Hank Jones(p), Sam Jones(b), Art Blakey(ds)

 レコード会社との契約の関係からキャノンボール・アダレイのリーダー作となっていますが、実質的なリーダーはもちろんマイルスです。冒頭の「枯葉」が有名で、マイルスのミュートトランペットでの名演が聴かれます。この曲の演奏があまりに有名であるため他の演奏は影が薄い感じですが、タイトル曲の「Somethin' Else」でのマイルスの尖鋭的なソロと引き続くアダレイのソロと両者のバトルとか、ブルースフィーリングの「One for Daddy-O」、バラード「Dancing in the Dark」でのアダレイのソロなど他にも聴き所があります。



 4. ソーサラー Sorcerer(1967)
   Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

 ウェイン・ショーター加入後のマイルスグループは、ショーターの音楽性を色濃く反映したアルバムを発表することになりますが、これもその1枚で、半分以上の曲をショーターが提供しています。マイルスは自伝の中でショーターの作曲家としての才能を高く評価しています。ショーターは彼独特の特異な和声感覚を持っていて、ときにそれは「呪術的」と評されることもありますが、個人的に大好きなミュージシャンです。特にマイルス抜きで演奏されている「Pee Wee」や「Masqualero」におけるプレイなどにショーターの特長がよくあらわれていると思います。 なお、いささか違和感のある「Nothing Like You」だけ1962年の録音となっています。 



 5. ビッチェズ・ブリュー Bitches Brew(1969)
   Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ss,ts), John McLaughlin(elg), Chick Corea(elp), Joe Zawinul(elp), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds), Jim Riley(per)他
 
 エレクトロニック・マイルスの傑作。ジャズとかロックとかファンクとかのジャンル分けなどは、どうでもよくて、マイルスミュージックと言うほかない音響空間を作り上げている。ジャック・ディジョネット他のリズムセクションの推進力は特筆すべきもので、彼らのバックでマイルスが気持ちよく、キメのフレーズを吹いています。中では、表題作が一番構成がしっかりしていていいのでは、と思います。ジョン・マクローリンのマイルスバンドでのギンギンのエレキ・ギターを聴きたい方は、アルバム「Jack Johnson」をどうぞ。この時期のアルバムでは、他にフィルモア・イーストでのライブである「At Fillmore(1970)」がワイルドですごい。
 この後の「アガルタ」、「パンゲア」は、75年2月1日の日本の大阪公演の昼と夜のライブを収録したもので、僕は8日の東京厚生年金での演奏を聴きました。そして、この日のコンサートは僕にとって過去最高のものとして記憶されています。



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 (参考資料)Miles The Autobiography/マイルス・デイビス自叙伝(1989)


洋書



翻訳書

 この本は―というかこの本だけは―本当に英語で読むしかないと思う。日本語に翻訳されたら、たとえどれほどうまく翻訳されたとしても、おそらく原文の息づかいの3割から4割くらいは消えてしまうだろうから。 --- その文体が100パーセント「ジャズしている」からだ。
「やがて哀しき外国語」/村上春樹

 一読して、マイルスがものすごい記憶力の持ち主であることにびっくりさせられる。ジャズジャーナリストのインタビューによる口述筆記の形をとっていて、資料は事前に準備されていたとしても10年以上前のジャズクラブの出演料まで覚えているのは常人の記憶力ではないと思います。 本書は、彼の生涯の詳細な総括となっていて(この2年後に彼は亡くなっている)、結構裕福ではあるが両親は不和であった彼の家庭環境、ジュリヤード中退、チャーリー・パーカーとの出会いと決別、ドラッグとの関わり合い、自己のグループ結成と音楽上の探求、ギル・エヴァンスを始め多くのミュージシャンとの交流、なかなか華麗な女性関係と数度にわたる結婚生活などなど、大部な本だけど飽きさせない。
 話し言葉で書かれているので、文体の癖(これに直接触れるために原文で読む意味があるのだけれど)に慣れてしまえば難しい英語ではないし、なじみのミュージシャンの名前がいっぱい出てくるのでジャズファンであれば読みやすいと思うのでペーパーバックにチャレンジしてみてはどうでしょうか。





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