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ボブ・ディラン (1941−  ) 
Bob Dylan


本名ロバート・アレン・ジンママン。ミネソタ州デュルースのユダヤ人家庭に生まれた。14歳のとき、友達とグループを結成したが数ヶ月で解散した。ミネアポリス大学を退学したディランは、1960年12月、彼のアイドルだったウディ・ガスリーに会うためにニューヨークに向かった。その後ニューヨークに留まり、グリニッチ・ビレッジのクラブで歌い始めた。1961年にコロンビア・レコードと契約し、トラディショナル曲が主なデビュー・アルバム『Bob Dylan』を発表するが、ディランのソングライターとしての名声を確立したのは、1963年に発表された2作目の『The Freewheelin' Bob Dylan』によってだった。


ワインを飲み、ボブ・ディランの古いレコードを聴き(そう、我々はその世代なのだ)、サーモンを焼き、庭で摘んできたアスパラガスを食べた。
『辺境・近境』/ 村上春樹

私は目を閉じて、その深い眠りに身をまかせた。ボブ・ディランは『激しい雨』を唄いつづけていた。
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』/ 村上春樹

I just took what came, I do whatever comes naturally.
僕はなりゆきにまかせてきた。僕は、すべて自然のなりゆきのままに行動するんだ。
/ ボブ・ディラン


1.偉大なる復活/Before the Flood(1974)
 
 ディランと盟友ザ・バンドが組んだライブの傑作アルバムです。これまでのディランの代表曲が演奏されていること、ザ・バンドとの息の合った共演ということで、迫力に満ちた素晴らしい演奏となっていて僕自身一番聴く機会の多いアルバムで、同じくザ・バンドと共演したザ・バンドの解散コンサート「ラスト・ワルツ」(1976)での演奏を彷彿とさせるものです。
 2枚組のアルバムで、ディランの曲が全体の約2/3で、残りの1/3はザ・バンドが、これも彼らの代表ナンバーを演奏していて、僕のようなどちらも好きな人間には、とてもおいしいアルバムとなっています。時に投げやりな感じで歌うディランだけど(そこがいいんだという面もあるけど)、ここでのパフォーマンスは実に力強く、1曲目の「我が道を行く Most likely you go your way」からラストの「風に吹かれて Blowin' in the wind」まで圧倒されっぱなしです。僕がとくに好きなのは、ザ・バンドのバックで歌う「雨の日の女 Rainy day woman」、「やせっぽちのバラッド Ballad of a thin man」、「見張塔からずっと All along the watchtower」、「追憶のハイウェイ61 Highway 61 revisited」や「ライク・ア・ローリング・ストーン Like a Rolling stone」、それから彼のソロ・ギターでのナンバー「くよくよするな Don't think twice, it's alright」や「女の如く Just like a woman」などがすばらしい(ほとんど全曲じゃないか)。ディランの(それからザ・バンドの)名曲集としてもおすすめです


2.フリーホイーリン・ボブ・ディラン/The Freewheelin' Bob Dylan(1963)

 2作目のこのアルバムによりボブ・ディランの名が一躍知られることになりました。1作目のアルバム『ボブ・ディラン』がシンガーとしてのディランが中心であったのに対し、このアルバムではほとんどの曲を彼のオリジナルで固め、ソング・ライターとしてのディランを決定づけることになったもので、いわば真にディラン誕生を告げたアルバムと言えるものです。
 ほとんどが生ギターとハモニカの自演によるシンプルなサウンドですが、ディランを代表する名曲がいっぱい詰まっています。「風に吹かれて Blowin' in the wind」、「北国の少女 Girl from north country」、「戦争の親玉 Master of war」、「激しい雨が降る A hard rain's a-gonna fall」や「くよくよするな Don't think twice, it's all right」など。中では、「激しい雨が降る」が一番好きで、彼の全作品の中でも随一ではないかな。1962年10月のキューバ危機の頃に書かれ、ディラン自身「絶望的な歌なんだ」と言っていたという。
 ジャケットでディランの腕にぶら下がっている女の子は当時の恋人スーズ・ロトロ。


3.追憶のハイウェイ/Highway 61 Revisited(1965)

 スタジオ録音のアルバムでは一番好きなアルバムです。ディランにとっても生ギターをエレキ・ギターに持ち替え、フォーク・シンガーからフォークとロックを融合したフォーク・ロック・シンガーへの転換を図ろうとしていた時期であり、コンサートでは旧来のファンのブーイングにさらされながらも自分の信念を貫こうとしていました。
 アル・クーパーのオルガン、ギターのマイク・ブルームフィールドをバックに冒頭曲「ライク・ア・ローリング・ストーン Like a Rolling stone」を歌うディランは最高にかっこいいけど(ディランもこの曲がいちばん好きだと言っている)、このアルバムに収録されている他の曲も全部好きです。
 快速調のロックンロール「トゥームストーン・ブルース Tombstone blues」、「追憶のハイウェイ61 Highway 61 revisited」、のりのいいブルース「悲しみは果てなく It takes a lot to laugh, it takes a train to cry」、シュールな詩が印象的でとても好きな「やせっぽちのバラッド Ballad of a thin man」、フォーク・ロック調で力強くディランが歌い上げる「廃墟の街 Desolation Row」など。


4.ブロンド・オン・ブロンド/Blonde on Blonde(1966)

 LP2枚組みという当時では例外的な形で発表され(CDでは1枚)、前作の『追憶のハイウェイ」と比較すると全体的に落ちついたサウンドで、ディランの独自性が最高度に発揮された彼の代表的アルバムとして高い評価を受けています。
 冒頭の「雨の日の女 Rainy day women」はドラッグとの関連で物議をかもした曲ですが、詩のほうも段々と先鋭的、難解になっていて、またこのアルバムの中には、LPの片面を占める11分のバラード「ローランドの悲しい目の乙女 Sad-eyed lady of the Lowlands」も収録されています。
 このアルバムの中でいちばん好きな曲は、なんといっても「女の如く Just like a woman」で、『偉大なる復活』での力強い歌もいいけど、このオリジナルもとてもいいです。その他、トラッド・ブルース調の「プレッジング・マイ・タイム Pledging My Time」や「ヒョウ皮のふちなし帽 Leopard-Skin Pill-Box Hat」、「ライク・ア・ローリング・ストーン」を思い起こさせる「スーナー・オア・レイター One of Us Must Know」、軽いラブソング「アイ・ウォント・ユー I Want You」など、ディランの多様性が発揮されたアルバムです。
 

5.血の轍/Blood on Track(1974)

 '70年代のディランを代表するアルバムです。ザ・バンドとの傑作ライブ『偉大なる復活』コンサートは、'74年の1月から2月にかけて行なわれたものですが、このアルバムは同年の9月から12月にかけて録音されていて、前者の迫力に満ちた演奏に比べると、アコーステック楽器のみによる演奏ということもあり、彼の原点に立ち返ったサウンドとなっています。 
 1曲目の「ブルーにこんがらがって Tangled up in Blue」から好調ですが、2曲目「Simple Twist of Fate」、それに続く「You're a Big Girl Now」と「If You See Her」がしっとりした感じで好きです。とくに切々と歌われる「If You See Her」がとてもいい。ディランがこれほど感情を込めてラブ・ソングを歌っているのは稀なのではと思います。その他の気に入っている曲には、ブルース調の「Meet Me in the Morning」、フォーク・ロック「愚かな風 Idiot Wind」などがあります。



6.欲望/Desire(1975)

 ディランは、'70年代中期に第2の絶頂期を迎えますが、僕にとってもこのアルバムは、70年代では、『偉大なる復活』(1974)と並んで、とりわけ好きなものです。ディランは絶好調だし、僕の大好きなカントリー女性歌手、エミルー・ハリスがほとんどの曲でディランに寄り添うように歌っていること、バックのジプシー・ヴァイオリン(スカーレット・リヴェラという女性で、当時無名だったのをディランたまたま聴いてスカウトしたとのこと)のサウンドが、全体的にエキゾティックなこのアルバムの雰囲気を一層高めていることが、成功した要因だと思います。ディランのアルバムの中でも最高位のセールスを記録しているというのも、うなずけます。
 冒頭の「ハリケーン Hurricane」は、殺人罪で逮捕され、10年以上獄中にいたプロ・ボクサーの名前で、彼の無実を確信したディランが社会を告発したもので、この歌をきっかけとして再審が認められ、その結果彼は釈放されたとのこと。まあ、それはともかくとして、これほど気合が入っているディランを聴けるのはうれしい。この曲に限らず、このアルバムでは歌詞がとても長いのが特徴的で、きっと詩作の霊感にも恵まれていた時期だったんだろう。
 とてものりのいい「イシス Isis」や「モザンビーク Mozambique」、中東音楽風の「コーヒーをもう一杯 One more cup of coffee」、エミルーとのデュエットがきまっている「オー、シスター Oh, Sister」や「ジョーイー Joey」、おまけにラテン風(!)の「ドゥランゴのロマンス Romance in Durango」までいいから勢いというのは怖い。そして極めつけは、最後の「サラ Sara」で、彼の妻サラを歌った愛の歌ですが、"サラ、サラ 私を捨てないで、行ってしまわないで"と絶唱するディランは感動的です。


7.インフィデル/Infidels(1983)

 これは力強いヴォーカルとサウンドが聴けるディランの '80年代を代表するアルバムだと思います。ジャケット写真も格好いい。この力強さは、ドラムスが刻むビートによるところが大きいようで、ディランもこのビートにのせられてがんばっているようです。とくに1曲目の「Jokerman」、「Neighborhood Bully」、「Man of Peace」や「Union Sundown」などにその辺が強く窺えます。 '70年代のアルバムに比べると曲もアレンジも全体としてシンプルなサウンドになっているのも、"のり"のよさに結びついている大きな要素だと思います。
 個人的には、「I and I」の翳りのあるサウンド、ラブ・バラード「Don't Fall Apart on Me Tonight」がいい。


(参考Web)
・ボブ・ディラン関連:CD DVD 書籍
 

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