Ambient/Rock

 ブライアン・イーノ (1948−  )
  Brian Eno

 
 イギリスのサフォーク州ウッドリッジの生まれ。1969年にウインチェスター・アート・スクールで造形芸術の学位をとった。70年代初期にヴォーカルのブライアン・フェリーとともにロキシー・ミュージックの創設メンバーとして、既成のロックに実験的改造を試みた。'73年にイーノはグループを離れ、ソロ活動に入り、'75年の交通事故を契機に環境音楽(アンビエント・ミュージック)の概念に思い至り、アルバム化した。'70年代の後半以降、イーノはプロデューサーとしての活動を本格化させ、デヴィッド・ボウイ、U2のアルバムをプロデュースすると共に、ジョン・ケイル、デヴィッド・ヴァーン、ロバート・フリップ、ハロルド・バッドなどとのコラボレーション・アルバムを制作した。


澄んだ天使の合唱、子供たちの笑い声、遠い都市の晴やかなざわめきにも似たふしぎな音が、砂丘の起伏を越えて、かすかに聞こえてくる。砂のこの変幻の世界に最もふさわしいのは、多分音楽。たとえばブライアン・イーノの『パール』とか。
『モノリス』/日野啓三


私に重要な影響を与えた音楽的体験は全て、あるひとつの感覚を持っていた。それは、ある根源的なものの中に、ずっと以前から良く知っている親密な神秘的なものがあって、自分はそれに奇妙に繋がっているという感覚だ。どこか内奥の深い所にある、感覚の全世界へ通じる扉が開かれたような感じだ。それは、自動的に繋がるというよりは、目覚めるという感覚に近い。その感覚は忘れられないもので、いったんそれを感受した者は誰でも、残りの人生でもそれを感じていたいと望む。
/ブライアン・イーノ


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 1. パール/ The Pearl(1984) with Harold Budd
 
 真珠ちりこぼれ
 ともしび風にぬれて

 「再会」より/萩原朔太郎



 敬愛する作家である日野啓三さんのお気に入りのアルバムですが、僕もとても好きなアルバムです。ハロルド・バッドとのコラボレーション・アルバムで、イーノのシンセ・サウンドとバッドのピアノの組み合わせがもたらす瞑想的で静溢な音響空間は、僕の知る限りでは他には、現代音楽作曲家ペルトの「鏡の中の鏡/Alina」くらいかな。
 全11曲、いずれも1曲あたりの演奏時間が5分に満たない短いもので、深い瞑想に入るには少し物足りないのが残念といえば残念なところですが、アルバムのタイトルのごとくパ−ルの内に秘めた輝きのイメージには合っているようです。
 同じくハロルド・バットとのコラボレーション・アルバム「ザ・プラトウ・オブ・ミラー(鏡面界)」も「パール」と同質のアルバムで、こちらもとても好きなアルバムです。

 2. ドローン・フロム・ライフ/Drawn from Life(2001) with J. Peter Schwalm

 イーノの4年ぶりのアルバムは、ピーター・シュワルムとの共作で、この年に聴くチャンスの最も多かったお気に入りアルバムの中の一枚となりました。アンビエント・ミュージックの延長線上にある音楽だろうけど、ドラムスのビートも効いていて、男声・女声・変調ヴォイスや子供の声の入るトラックもあり、また「Night Traffic」を始めとする、ちょっとヴァンゲリス風のサウンドもあり、穏かなノリの曲が主体で、全体として聴いていて気持ちがいいアルバムです。


 3. ミュージック・フォー・エアポート/Ambient 1: Music for Airports(1978)

 アンビエント・ミュージックの記念碑的作品です。イーノは、インタビューに答えて、アンビエント・ミュージックを気に入っているのは、それが曖昧なもので、ある程度の自由を自分に与えてくれるからだといい、この音楽には主にふたつの意味があると言っています。ひとつは、どんな聴き方をも許容する音楽ということ、そしてもうひとつの意味は、聴き手の環境を補ったり、作り変えるような雰囲気を与える音楽であるということ。
 イーノを創始とするアンビエント・ミュージックは、ケージの偶然音楽とサティの家具の音楽、そしてヤング、ライリーやライヒらのミニマル・ミュージックに決定的な影響を受けていますが、イーノはこれら先鋭的な音楽を、彼自身がそれまで活動してきたプログレッシヴ・ロックの実績を踏まえて、より受け入れやすいポップな形にしたもので、このアルバムがその最良の成果と言えると思います。1980年に、実際にニューヨークの空港ターミナルで使用されたとのことです。
 10分前後の4曲から構成され、たとえば2曲目の「2/1」では、音源として「アー」というシラブルを発声する七つの音高の女声を組み合わせて録音したものです。


 4. ブッシュ・オブ・ゴースト/ My Life in the Bush of Ghosts(1981) with David Byrne

 トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンとの共作アルバムです。
 トーキング・ヘッズのライブ・ドキュメンタリー「ストップ・メイキング・センス」は、公開当時に一生懸命映画館で観ていますが、この共作アルバムも「ストップ・メイキング・センス」のサウンドに近いようで、どちらかというとデヴィッド・バーンのカラーが強く出ているように思えます。
 このアルバムでは、アフリカの悪魔払いのラジオ放送、ニューオーリンズでの牧師のラジオ説教、レバノンの歌手、コーランの祈りなどの声をサンプリングし、これらの音源を、リズムと和声のバッキング・トラックの上にコラージュして使われていて、その多彩なリズムと共に、イーノとバーンが意図した「第4世界の音楽」の呪術的な雰囲気を作り出すことに成功しています。

単なる西洋音楽あるいは単なるロック音楽ではなく、他の世界の音楽を意識して作られた音楽。それはほとんどコラージュの音楽だ。ひとつの文化の曲の上に、他の国の曲を重ね、また別のを重ねる。そしてそれらが凝集したひとつの音楽的アイデアとなるよう作りあげる。そしてまた、何か踊れるようなものに仕立てるのだ。
/ブライアン・イーノ


 
  

 5. スピナー/ Spinner(1995) with Jah Wobble

 元PILのベーシストで、脱退後ソロ活動をしているジャー・ウォブルとの共作アルバムです。
 当初、イギリスの映画監督で、エイズのためこの世を去ったデレク・ジャーマンの最後の映画「Glitterbug」(1994)のために作曲した曲を集めて、サウンド・トラック・アルバムとして発表しようとしたイーノでしたが、映像を離れた独立した音楽としては考えられないと判断し、ウォブルにこれらの曲を素材にしたアルバムのプロデュースを依頼、出来上がったのが、このアルバムであるとのことです。
 サウンド的には、後年の「Drawn from Life」の線に近いようで、アンビエント・ミュージック系の曲と、そこそこノリのいい曲が半々くらいの割合となっています。個々の曲についてのウォブルの役割が、どのようであるのかは不明ですが、恐らくはベース・ラインの強化とかのリズム面での貢献が大きいのではないかと思われます。


 6. ナーヴ・ネット/ Nerve Net(1992)

 これは、ビートを前面に押し出したプログレッシブ・ロック・アルバムです。ロック、ポップ、ジャズ的な要素が混在するインストゥルメント・サウンドですが、音声によるコラージュの手法も使われていて、「The Roil, The Choke」など数曲には歌詞がついています。全体的に聴きやすいサウンドだと思いますが、「Distributed Being」では先鋭的なギター・ソロも聴かれます。
 アルバムのハイライトは「Web」という曲の二つのヴァージョンで、これは結構プログレしていて、聴き応えがあって個人的には好みです。



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  • 「ブライアン・イーノ」(1989)/エリック・タム 水声社 '94年初版
      


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