英詩紹介

 
W.B.Yeats(1865-1939)
  W.B.イェイツ

 

 アイルランドのダブリン市郊外、サンディマウントに生まれる。父親は肖像画家だった。彼もダブリンの美術学校で絵画を学んだが、やがて文学方面へ傾斜し、美術を断念し文筆活動に入った。1892年にアイルランド文芸協会を設立、1899年には夫人らと共にアイルランド文芸劇場を創立した。イェイツは多くの劇や詩や散文を書いてアイルランド文芸復興の指導的役割を果たし、1923年にはノーベル賞を受賞している。


I would that we were, my beloved, white birds on the foam of the sea!
ぼくら ― 君とぼくは 海の波間に浮く白鳥になろう!
「The White Birds」 より(加島祥造 訳)

訳は、 『イエーツ詩集』/ 加島祥造 訳編(海外詩文庫・思潮社)によります。
  
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1. The Song of Wandering Aengus/ さまようイーンガスの歌

I went out to the hazel wood,
Because a fire was in my head,
And cut and peeled a hazel wand,
And hooked a berry to a thread;
And when white moths were on the wing,
And moth-like stars were flickering out,
I dropped the berry in a stream
And caught a little silver trout.

When I had laid it on the floor
I went to blow the fire aflame,
But something rustled on the floor,
And some one called me by my name:
It had become a glimmering girl
With apple blossom in her hair
Who called me by my name and ran
And faded through the brightening air.

Though I am old with wandering
Through hollow lands and hilly lands,
I will find out where she has gone,
And kiss her lips and take her hands;
And walk among long dappled grass,
And pluck till time and times are done
The silver apples of the moon,
The golden apples of the sun.
                                                   
私は頭が火照(ほて)っていたので
はしばみの林に出かけた。
そして はしばみを切り剥いで棒をつくり
いちごの実を糸につけ
白い蛾が飛び
蛾のような星がきらめき出す頃
いちごの実を流れにおとして
銀色の小さな鱒をとらえた。

それを床に置くと
火をおこしにかかった。
しかし、さらさらと床に音がして
誰か 私の名前を呼ぶのだ。
それは 林檎の花を髪にかざした
微光を放(はな)つ少女になっていて
私の名前を呼んで駆け出し
あかときの光に消えて行った。

私は盆地や丘々を
さまよい歩いて年老いてしまったが
彼女の行方をつきとめて
その唇に口つけし、その手を把りたい。
丈高い斑(まだら)の草地をあるきまわり
時がついに果てるまで
月の銀の林檎と
太陽の金の林檎を摘みたい。

前川俊一 訳

 

2. The Stolen Child/ 盗まれた子供 より

Where dips the rocky highland
Of Sleuth Wood in the lake,
There lies a leafy island
Where flapping herons wake
The drowsy water rats;
There we've hid our faery vats,
Full of berrys
And of reddest stolen cherries.
Come away, O human child!
To the waters and the wild
With a faery, hand in hand,
For the world's more full of weeping
than you can understand.




スュリッス森の高原の
岩山ふかい湖に、
木の葉の茂る島がある、
白鷹羽根を拡げれば、
まどろむ鼠の目をさます。
そこに隠した妖精の樽は、いちごがいっぱい、盗んできた
真っ赤な桜んぼもあふれてる。
こちらにおいで! おお人の子よ!
いっしょに行こう森へ、湖(うみ)へ、
妖精と手に手をとって、
この世にはお前の知らぬ
悲しい事があふれてる。


井村君江 訳



3. The Lake Isle of Innisfree/ 湖のなかの島

I will arise and go now, and go to Innisfree,
And a small cabin build there, of clay and wattles made:
Nine bean-rows will I have there, a hive for the honeybee,
And live alone in the bee-loud glade.

And I shall have some peace there, for peace comes dropping slow
Dropping from the veils of the morning to where the cricket sings;
There midnight's all a glimmer, and noon a purple glow,
And evenings full of the linnet's wings.

I will arise and go now, for always night and day
I hear the lake water lapping with low sounds by the shore;
While I stand on the roadway, or on the pavements gray,
I hear it in the deep heart's core.




ああ、明日にでも行こう、あの島へ
そしてあそこに小屋を立てよう。
 壁は泥土、屋根は草葺きでいい
 豆の畑は畝(うね)を九つ、蜂蜜用の巣はひとつ
その蜂たちの羽音のなかで独り暮そう。

ああ、あそこなら、いつかは心も安らぐだろう
安らぎはきっと、ゆっくりとくるだろう
 水の滴(したた)りのように、また
 朝靄(もや)から洩れてくる虫の音(ね)のように。
そして夜は深く更けても微(ほの)明るくて
真昼は目もくらむ光にみちて
夕暮れには胸赤き鳥たちの群れ舞うところ。

ああ、明日にでもあの島へゆこう
なぜならいまの僕には、いつも
昼も夜も、あの湖の水の
岸にやさしくくだける音が聞こえるからだ。
 車道を走っていようと
 汚れた歩道に立っていようといつも
あの水の音がいつも
心の奥底のほうに聞こえるからだ。


加島祥造 訳




4. A Drinking Song/ 酒の唄

Wine comes in at the mouth
And love comes in at the eye;
That's all we shall know for truth
Before we grow old and die.
I lift the glass to my mouth,
I look at you, and sigh.



酒は唇(くち)よりきたり
恋は眼(まなこ)より入る。
われら老いかつ死ぬる前に
知るべき一切の真はこれのみ
われ杯(さかづき)を唇(くち)にあて
おんみを眺めかつ嘆息(ためいき)す。

西條八十 訳



5. Men Improve with the Years/ 人生は年とともに円熟する

I Am worn out with dreams;
A weather-worn, marble triton
Among the streams;
And all day long I look
Upon this lady's beauty
As though I had found in a book
A pictured beauty,
Pleased to have filled the eyes
Or the discerning ears,
Delighted to be but wise,
For men improve with the years;
And yet, and yet,
Is this my dream, or the truth?
O would that we had met
When I had my burning youth!
But I grow old among dreams,
A weather-worn, marble triton
Among the streams.



わたしは夢見ることに疲れはてた。
雨風にさらされて、流れに立つ
大理石の海神(トライトン)だ。
そして終日わたしは
この女性の美をながめるのだ
ちょうど書物のなかで
美人の絵を見つけたときのように
眼や ききわけの利く耳を
堪能させたことに満足し
ただ 賢くあることをよろこんで。
人は年とともに円熟するからな。
だがしかし、だがしかし
これは私の夢か、真実(まこと)か。
ああ、わたしが 燃える青春の持ち主だった頃
わたしらが逢えていたらなあ。
しかし、私は夢みながら老いゆくのだ。
雨風にさらされて、流れに立つ
大理石の海神(トライトン)だ。


前川俊一 訳


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○ イェイツ 関連出版リスト: 洋書 和書

○ 参考資料
 ・イェイツ(Wikipedia)
 ・W.B.Yeats(Wikipedia 英語)
 ・イェイツ/渡辺 久義
 ・イェイツとアイリッシュ・フォークロアの世界: 物語と歴史の交わるところ/池田 寛子
 ・イェイツを読む/島津 彬郎
 ・W.B.イェイツ (現代英米文学セミナー双書 (4))/佐野 哲郎
 ・W・B・イェイツとオカルティズム/島津 彬郎
 ・イェイツ―自己生成する詩人 (慶應義塾大学教養研究センター選書)/萩原 眞一
  
 ・W.B.イェイツ論―仮面の変貌/増谷 外世嗣

○ 検索

   



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