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歌人
塚本邦雄(1922-2005)
 
 

続・塚本邦雄歌集(現代歌人文庫)
 
滋賀県生まれ。1949年タブロイド版の同人誌「メトード」を創刊、前衛短歌の揺籃期を彩る。1951年、処女歌集「水葬物語」を刊行、1956年「装飾楽句」は現代短歌に大きな衝撃を与えた。喩とイメージを重視したその前衛的方法は現代短歌を覚醒させ、その伝播は現代短歌に多大の豊穣をもたらした。

個人的な好みで選んだいくつかの作品を掲載しました。
 

こころざしくづれて廿歳雪の上を群青の風過ぎし痕あり

かの國に雨けむる朝、わが胸のふかき死海に浮くあかき百合

湖の夜明け、ピアノに水死者のゆびほぐれおちならすレクイエム

イエスは三十四にて果てにき乾葡萄噛みつつ苦くおもふその年齒

春ゆふべ給水塔に水満たすひびきあり舊き祈祷のごとく

少女死するまで炎天の縄跳びのみづからの圓駈けぬけられぬ

昏きルオー展にて人に見られゐむ瞼うるみし若きキリスト

われとともにわれの内部にそだち来て伐らるる日近き火焔木あり

われの未来といつまじはらむ排水管くねりて地に沒りゆきしのち

水の上に死の鶯の眸とぢて恥うつくしき日日は過ぎたり

四十にして朽ちざるこころ一瞬を滂沱たり風中の蜻蛉

夢の沖に鶴立ちまよふ ことばとはいのちを思ひ出づるよすが

絶唱にちかき一首を書きとめつ机上突然枯野のにほひ

こころざし断つ明日かは知らずおほぞらに雷といふすがしき凶器

明日は明日のわれに逢ふべし両頬をしとど濡らして剪るかきつばた

胡麻畑に作る少女の陥穽ユリシーズゆるやかに遠ざかれ


○ 参考資料
 ・塚本邦雄関連書籍
 ・塚本邦雄(Wikipedia)
 

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