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・国内外映画観賞録(2021年) ・海外映画観賞録(2019年・2020年) |
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(公開年降順) |
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ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020) ヴァイオレットと彼女の周りの人々による現在進行形のドラマを軸に、後日談と過去のエピソードにより綴られていく美しい感動作です。 言葉に託すことで伝えられる思いがあり、ヴァイオレットが少佐に向ける、言葉では尽くせない強く深い思いがある。 おらおらでひとりいぐも(2020) 桃子さんの心の内のざわめきを、東北弁の男性トリオで実体化した演出が秀逸だ。 桃子さんの頭の中のにぎやかなイメージが可視化され、まさにジャズ的なノリで楽しい。 田中裕子さんの凛とした清々しい佇まいが、孤高の人、桃子さんのイメージにぴったりでした。 ラストレター(2019) 観終わってから豊かな余韻を残す、とてもいい映画です。 過去と現在の手紙を介して浮かび上がってくる初恋の切ない思いが胸を打ちました。 至上のキャスティングです。 「Love Letter」と色んな意味で対になる物語となっているので、合わせて観ると一層楽しめると思います。 楽園 (2019) 吉田修一「犯罪小説集」の2編を再構成しています。 12年前の女児行方不明事件が未解決のまま今も住民の心に影を落としている限界集落。 過去を悔やむ女、偏見にさらされる男、疎外される男、閉塞状況に置かれた彼ら。 JOKERには妄想という楽園があったが、彼らには現実しかなかった。 (原作) 犯罪小説集(2016)/吉田修一 行方不明、殺人、賭博など三面記事的な事件を題材にした5編の短編集。人の欲望・業がもたらした犯罪を物語る際に陥りがちな陳腐化を免れているのは、作者の卓越したストーリー構築力、描写力の賜物だろう。映画「楽園」の原作となった「青田Y字路」がとくに秀逸でした。 最高の人生の見つけ方(2019) 平凡な主婦とセレブな女社長が末期がん患者として出会い、難病で闘病中の少女が落とした夢リストを二人で実行しようと決めます。 スカイダイビングにチャレンジしたり、ももクロのライブに行ったり・・・ ももクロライブ、楽しそう。心が暖かくなるいい映画です。 新聞記者(2019) 監督:藤井道人 主演:シム・ウンギョン、松坂桃李 フィクションなので真実の程度はわからないけど、どんな主義でも体制側はその権力を保つために汲々とするのだろう。11月公開の「新聞記者ドキュメント」を観てみたい。 (原作)新聞記者(2017)/望月衣塑子 生い立ちから東京新聞入社までの経緯、日歯連の闇献金疑惑のスクープなど記者としての活動が描かれています。菅官房長官の定例会見で次々と質問を重ねる望月さんのアグレッシブな姿勢には賛否両論がありますが、僕は「空気を読ま(め)ない」彼女を支持します。 「天気の子」(2019) とても良かった。「君の名は」と合わせて新海さんの表現したいことが見えてきたからかな。つまるところ、社会体制の要請より自身の幸福を優先する徹底した個人自由主義の主張。少年少女を主人公にしてオブラートに包んでいる。 雨の東京、「ブレードランナー」を思った。 マチネの終わりに(2019) 原作の文学的香気がうまく映像化されていたと思います。 欲を言えば、蒔野と洋子、互いの思いの高まりに、もう少し描写が欲しかった(まあ、小説もそうなんですが)。 愛することと許すこと、二人にとって「未来は常に過去を変えている」が真に希望の言葉となるに違いない。 恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、十代の頃ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悶を鈍化させてしまうからである。 「マチネの終わりに」/平野啓一郎 マスカレード・ホテル(2019) 「ホテルというところは本当にいろいろな人間が来るものですね。」 原作をほぼ忠実に映像化していて、オールスターキャストが楽しい映画です。 変装した松つぁんを見抜けなかった口を開けて冷や汗をかいた笑顔 一見華やかなホテルを支える人たちの仕事の奥深さを垣間見ることができます。 (原作)マスカレード・ホテル(2011)/東野圭吾 都内の高級ホテルで殺人が計画されているとの情報から、敏腕刑事がフロントに配置された。未経験の彼は有能な女性スタッフの指導を受ける羽目に。 "やたら七面倒臭い計画を立てる"犯人に翻弄される捜査陣とホテルマンの奮闘ぶりが面白い。続編も読まなきゃ。 リバーズ・エッジ(2018)R15+ ハルナは、高校の同級生、山田から河川敷に放置された死体を見せられる。山田をいじめる観音崎、死体を共有する後輩のこずえらが織りなす岡崎京子原作の青春群像ドラマ。 90年代、バブル崩壊後の「平坦な戦場で僕らが生き延びること」の痛さが伝わってきます。 悪と仮面のルール(2018) 原作の世界観を損なわず、闇と光を対比させた映像美、配役も理想的で、とてもよかった。 タイトルからサイコ・スリラー的サスペンスを期待すると肩透かしを食うので要注意。 これは、初恋の女性を一途に思い続ける男を描いた、ラストに胸キュンの恋愛映画です。" (原作)悪と仮面のルール(2010)/中村文則 「邪」に憑かれた家系に生まれた文宏は、幼い時から共に育てられ愛し合った孤児の香織を「邪」から守るため罪を重ねる。 自身の内の「邪」を見つめながら、愛を貫こうとする文宏の思いの深さに打たれます。 ほろ苦くも、ほの明るい幕引きにひと息つきました。 去年の冬、きみと別れ(2018) 「純愛サスペンス」というキャッチコピーがうまい。 原作をほどよくアレンジして全体の見通しが良くなっている。その分、原作の迷宮感が減じているけど、まあ仕方ないだろうな。 映画としてきっちりとまとまっていて、小説を読んでいても十分楽しめました。 (原作) 去年の冬、きみと別れ(2013)/中村文則 連続殺人により死刑を宣告された男を取材するフリーライター。彼と共に読者は狂気に憑かれた人間たちがうごめく闇に踏み入っていく。 凝ったサスペンスドラマです。作中、芥川龍之介「地獄変」、カポーティ「冷血」に言及しているのがいかにも著者らしい。 フジコ・ヘミングの時間(2018) 80代の今も世界各地でコンサートを開き、1年の半分をパリのアパルトマンで、愛する猫と自筆の絵と思い出の写真に囲まれて暮らす独歩の自由人、フジコさんの生き様に魅せられました。 「ラ・カンパネラ」もバックに流れる抒情的なピアノも酔わせます。 夜は短し歩けよ乙女(2017) 黒髪の乙女と先輩、樋口さん、李白さん、事務局長など、くせ者たちが織りなす夢幻的な一夜の旅路を、ポップにキレよくアニメ化しています。 原作では四季に亘るエピソードを御都合主義的に一夜にまとめてしまっているけど、不自然さを感じさせない演出はさすが。 (原作)夜は短し歩けよ乙女(2006)/森見登美彦 「先輩」が想いを寄せる「黒髪の乙女」は、底なしの酒豪で、緋鯉を背負い、愛のおともだちパンチを使い、御都合主義に身をまかせ、悪い風邪に蹂躙された京都の街をずんずんと歩く。 キャッチコピー「キュートでポップ」に加えてシュールな面白さ。なむなむ! それにしても、いったい何が起こっているのでしょうか。 風邪の神様、風邪の神様、なにゆえこんなに御活躍? 虐殺器官(2017)R15+ 原作をすっきりさせ、テンポがいい。 反面、本筋とは無関係なカフカやベケットについての会話などがそのまま残されていたり、原作の情緒が尊重されているのもいい。 痛覚マスキング処理された同士の戦闘シーンは少々きついけれど、想像していたほどではなかった。" (原作)虐殺器官(2007)/伊藤計劃 核戦争でサラエボが消えた近未来、後進諸国での内戦や大規模虐殺を陰で操る謎の白人を追う米軍暗殺部隊のクラヴィスが見出した真相とは。 「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位のデビュー作。 科学・思想・文化など、広範な知見に支えられた抜群の描写力に降参です。 君の名は(2016) (監督)新海誠 これは、陰画(ネガ)としての「秒速5センチメートル」(2007)が陽画(ポジ)に反転した映画なのだろう。 離れていく心−近づく心、過ぎ去る時−遡る時、上昇するロケット−宇宙から落下する彗星のかけら。変わらないのは美しい背景描写。僕は「秒速・・・」が好き。 ハーモニー(2015) PG12指定 <impression> 原作に沿って、ていねいに作られている。 映画では、トァンのミァハへの愛が明示されているのが原作と異なる。 絵もきれい。ピンクの東京、バクダッド、少女たち。 これがバッドエンディングであり続けることを願うしかない。 </impression> (原作)ハーモニー(2008)/伊藤計劃 著者の遺作となった傑作SF。 完璧な健康管理社会に絶望した少女ミァハは、トァンとキアンを誘って自殺を図る。13年後、WHOの上級監察官となったトァンは同時集団自殺事件の調査に赴く。 個人の体に埋め込まれたWatchMeによる監視・管理社会の未来は遠くない気がする。 わたしたちは互いに互いのこと、自分自身の詳細な情報を知らせることで、下手なことができなくなるようにしてるんだ。この社会はね、自分自身を自分以外の全員に人質として差し出すことで、安定と平和と慎み深さを保っているんだよ。 海街diary(2015) すずが鎌倉で暮らし始めた1年間を、四季の移り変わりを背景として叙情的に描いています。 姉妹と脇役陣の配役が絶妙でした。新人賞を総なめにした、すず役の広瀬すずさんが清々しい。 菅野よう子さんの音楽も情景と調和していました。繰り返し観たくなる映画です。 (原作)海街diary/吉田秋生 父の死をきっかけに鎌倉で三姉妹と一緒に暮らすことになった異母妹のすずを主人公とし、姉妹の日常を情感豊かに描いたコミックの名作。2006年から12年間不定期連載された。 作者の切ないほど優しいまなざしが姉妹だけでなく、すべてのキャラクターに注がれている。 岸辺の旅(2015) カンヌ受賞作 ほぼ湯本さんの原作に沿った演出で、シュールで静かなロード・ムービーといった印象です。 夫への愛憎のすべてをそのまま受け入れようとするひたむきな瑞希には深津さんがふさわしい。 諦念とともに、妻への思いやりと未練とを抱く夫の浅野さんも適役です。 思い出のマーニー(2014) 米林宏昌 監督 舞台を北海道に移し、原作のキャラクター設定、ストーリーをほぼそのまま生かしながら、すっきりとまとめています。 思春期の杏奈の内面をうかがわせる表情の繊細な描写や、マーニーの謎が解明される演出も見事。 じっくり心に染み入る感動作です。 (原作)思い出のマーニー(1967)/ロビンソン 養父母に育てられ自分の殻に閉じこもりがちのアンナが、夏の間、海辺の村の老夫婦に預けられ、不思議な少女マーニーと出会う物語。 かたくなな心をほぐしていくアンナの姿と、マーニーの謎の解明とで最後まで息が抜けない。 児童文学の枠を超えた作品だ。 (冒頭の文章) Mrs. Preston, with her usual worried look, straightened Anna’s hat. “Be a good girl,” she said. “Have a nice time and ― and ― well, come back nice and brown and happy.” She put an arm round her and kissed her goodbye, trying to make her feel warm and safe and wanted. 物置のピアノ(2014) 東日本大震災から1年後、福島の高校3年生、春香を主人公とし、音大でピアノを学びたい彼女の進路の悩み、家族間の絆と心のわだかまり、そして被災からの復興の厳しさも描かれています。 春香役で映画初出・主演となる17歳の芳根さんの演技とピアノの腕前に注目。 ヘルタースケルター(2012)R15+ 岡崎京子さんの原作は、手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作。 全身美容整形によりカリスマモデルとなった、りりこの栄光と転落のドラマ。 サイボーグ美女のりりこ役としてこれ以上の配役はない沢尻さんと、蜷川実花さん演出の絢爛たる色彩が見どころです。 東京公園(2011) 物語の流れは原作と同じだが、友人たちとの関係に変化がある。それでも全体を包む穏やかで暖かい情緒は小説と変わらない。 主役の三浦春馬さんは、素で演じているのではないかと思うくらい自然体で優しさが滲み出ていました。 榮倉奈々さんを始め、共演者も皆素敵でした。 (原作)東京公園(2006)/小路幸也 カメラマン志望の圭司は、見知らぬ男から、幼い娘を連れて公園を巡る妻を尾行して写真を撮って欲しいと依頼される。 圭司と彼の友人、幼なじみの女友達、義理の姉らが織りなす青春劇。 それぞれが自身の葛藤を抱えながらも互いを思いやる優しさに触れ、心癒やされます。 小説中、圭司が友人たちや姉と一緒に映画DVDを観る場面が数ヶ所挿入されていました。 "コーヒー&シガレッツ"、"ベルリン・天使の詩"、"明日に向かって撃て"、"ロスト・イン・トランスレーション"、"小さな恋のメロディ"他。 著者、小路さんの映画愛が感じられる。" 「ねぇ、ひょっとして冨永の行動基準とか判断基準って、いかに映画のように美しいかじゃないの?」 そう言うと冨永は眼を細めて僕を見て、何を今さら、と言う。 「それもひとつの見識でしょ?」 たしかに、拠り所のひとつになっているかもしれないな。 八日目の蝉(2011) 細部までていねいに作り込まれていて、演出、脚本、撮影、音楽、配役、皆すばらしい。 原作と異なり、誘拐・逃亡生活と20年後の薫とを並列に映像化することで、テーマの重さが一層際立っていると思います。 小豆島の夏祭り、松明行列のシーンが心に刻まれました。 憎みたくなんか、なかったんだ。私は今初めてそう思う。本当に、私は、何をも憎みたくなんかなかったんだ。あの女も、父も母も、自分自身の過去も。憎むことは私を楽にはしたが、狭く窮屈な場所に閉じこめた。憎めば憎むほど、その場所はどんどん私を圧迫した。 八日目の蝉(2007)/角田光代" 星を追う子ども(2011) (監督)新海誠 「僕はきっと君に逢いに来たんだ」 喪失を抱えてなお生きろと声が聞こえた。お前にも聞こえたはずだ。それが人に与えられた呪いだ。 ・・・でも、きっとそれは祝福でもあるんだと思う。 森崎書店の日々(2010) 原作を丁寧に再現していて、主演の菊池亜希子さんもイメージ通りだし、店主の内藤剛志さんは原作より包容力がありそう。 森崎書店は近代文学専門なので、志賀直哉、尾崎一雄、野呂邦暢などの書影が映り込んでいる。 久しぶりに神保町界隈をぶらつきたくなりました。 (原作) 森崎書店の日々/八木沢里志 愛することは素晴らしい。それはどうか忘れないでほしい。人を愛した記憶というのは、絶対に心の中から消え去らない。それは、いつまでも人の心をじんわりと温めてくれる。 森崎書店の日々(2010)/八木沢里志 神田神保町の古書店街を背景に、癒しのヒューマンドラマが描かれています。 「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分或ひは全部がそれに乗り移ることなのだ」 こんな具合に、かつてその作品を読み感銘を受けた人が、ペンで横に線を引いているのだ。 梶井基次郎の短編『ある心の風景』(1926)の一節。 秒速5センチメートル(2007) (監督)新海誠 3話の短編構成で、タイトルは桜の花の落ちる速度。新海さんは、速度をテーマにからめたと語っています。 電車や手紙の物理的速度、心の近づく、離れる心理的な速度。貴樹を思う花苗の切ない気持が胸に迫ります。 色んな意味で「君の名は」の陰画のようです。 パプリカ(2006)監督:今 敏 原作にアレンジを加えてシュール度がさらにアップしている感じだ。 物語の核心となるデバイス ""DCミニ"" が最初から登場するので小説を読んでないと、ストーリーを追いにくいかも。 敦子とパプリカはイメージ通り。小説同様、バー「ラジオ・クラブ」が気になる。 ユリイカ8月号「今 敏の世界」 では、10年前に46歳で亡くなった今さんのアニメ長編監督作品、PERFECT BLUE、千年女優、東京ゴッドファーザーズ、パプリカを観直し、特集記事を読み、惜しい人を失ったことを改めて実感。 「インセプション」は「パプリカ」にインスピレーションを得たと言われています。 (原作)パプリカ(1993)/筒井康隆 サイコセラピストの千葉敦子は、夢に潜入し心の問題を解き明かす夢探偵パプリカという裏の顔を持っていた。 前半は割と普通のSFみたいで、やはり知的女性誌「マリ・クレール」連載だからなのかなと思っていたら、後半は筒井ワールド全開の目くるめく展開となっていた。 イノセンス 攻殻機動隊(2004) GHOST IN THE SHELL の続編。 少女型ガイノイドによる殺人事件を捜査するバトーが主人公で、サイバースペースに偏在する草薙素子が彼の危機を救うことに。 高精細の画面が美しい。 前作同様、人間とマシーンの境界、生命の定義について考えさせられます。 東京ゴッドファーザーズ(2003) 監督:今 敏 元競輪選手、オカマ、家出女子高生のホームレス三人組が、捨てられた赤ん坊の親探しをすることで起こるハチャメチャな騒動を描いている。 雪降り積む東京の情景描写が印象的な奇跡満載、抱腹絶倒のクリスマス・ストーリー。 千年女優(2002) 監督:今 敏 芸能界から長く退いていた大女優、藤原千代子の実人生と女優として演じた虚構が入り混じり、時空を超えた恋の追跡劇が展開する。 「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの」 美しく時を重ねた現在の千代子の佇まいも素敵だ。 落下する夕方(1998) 女性の監督ならではの繊細な感性が、カメラワーク、色彩、小道具など、ぴったりはまった感じでよかった。 原田知世、渡辺篤郎、菅野美穂、これ以上は望めない配役も魅力です。 西村由紀江さんのピアノ曲も美しかった。幼稚園のシーンでちらっとピアノを弾いてました。 (原作) 落下する夕方(1996)/江國香織 江國さんの長編では「神様のボート」と共に好きな作品です。 思いやりがあって我慢強い梨果、彼女と同棲していた健吾、彼の新しい恋人、華子の変な関係の物語。 気まぐれで子供みたいでいて絶望している華子は、江國さん特別お気に入りのキャラクターなんだろうな。 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995) 「生命とは情報の流れの中に生まれた結節点のようなものだ」 Webが世界を覆い、電脳化・サイボーグ化が進んだ近未来、公安に所属するサイボーグ草薙素子は、謎のハッカー ""人形使い"" を追う。 「マトリックス」に影響を与えたという傑作アニメです。 「攻殻機動隊」では、脳以外の全身を義体化したアンドロイド、草薙素子は人間として認知されている。 脳を、全記憶を移植した外部記憶装置(またはweb媒体)に置き換え、経験による記憶更新可能な、有機的要素皆無のアンドロイド(あるいは進化したAI)を生命体と呼ぶ論理は確かに成り立ちそうだ。" 幻の光(1995) 内容も映像も暗くてストーリーの盛り上がりも乏しい、でもとても好きな映画です。 自然、日常の風景が形作る陰影が美しい。 哀しさを心の底に秘めながら、淡々と日々の営みを重ねる人の生を細やかに描いています。 生きていくというのはこういうことなんだろうな。しみじみ。 (原作)幻の光(1979)/宮本輝 ゆみ子は、夫が突然自死した後、再婚して奥能登の海辺の町で平穏に暮らしているが、不可解な死による喪失感から逃れられない。 生と死の間の深淵、紙一重の近さが合わせて描かれている秀作。 「なんであんたは自殺したんやろ」と自問し続けるゆみ子の哀しさが胸を打ちます。 竹取物語(1987) 市川崑 監督 宇宙船が地球で難破、かぐや姫だけ助かり竹取の夫婦に育てられる。地球に留まりたいとの願いも空しく、姫は巨大UFOに回収され地球を去っていきます。 まさに「未知との遭遇」竹取物語編といった感じ。若き沢口さんが今と変わらない雰囲気なのが、いとおかし。 (原作)竹取物語(923頃)/作者不詳 森見登美彦 訳 かぐや姫が求婚者たちや帝を振り、空飛ぶ車で迎えに来た天人たちと月に帰っていくファンタジー。 森見さんは、訳が暴走しないように現代的な表現を無理して使わない方針としたそうだけど、和歌など ""そう思ったりなんかして"" とか、結構ポップで楽しい。 『竹取物語』は、地上に降り立ったかぐや姫が、あたかもトーナメント戦を勝ち抜くかのように、現世のルールを次々に打ち破り、最終的には地球を丸ごと失恋させる物語だといえる。その失恋の余韻は、千年以上も尾を引いたわけだ。 訳者あとがき/森見登美彦 Wの悲劇(1984) 女優を目指す劇団員の青春を描いた名作。夏樹静子「Wの悲劇」が劇中劇として演じられる。 「セーラー服と機関銃」から3年、女優としてぐっと成長したひろ子さんに注目。大物女優を演じた三田さんの存在感にも引きこまれる。舞台となった東京西部の街の映像が懐かしかった。 時をかける少女(1983) 追悼 大林監督 当時15歳の知世さんを魅せる初主演映画。 そこはかとないぎこちなさが心の揺らぎ、非現実感を漂わせて幻想的なストーリーと合致、卓越した演出力、尾道の景観の魅力と相まって名作となったのでは。 楽しいエンディング、お見事と言うしかないです。 羅生門(1950) 芥川龍之介の短編「藪の中」を世界の黒澤が映画化。 旅の途上の武士とその妻が盗賊に襲われ、武士が死ぬが盗賊は捕まる。裁きの場での三人の証言が大きく異なり、真相は “藪の中”。 死んだ武士は巫女の口を借りての証言だけど、死んだ後も見栄を張りたがるのが可笑しかった。 |
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