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・海外映画観賞録(2019年・2020年) ・国内映画観賞録(2019年・2020年) |
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○2021年に観た印象に残った映画(公開年降順) -海外- ・DUNE 砂の惑星 ・ノマドランド ・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ・コロンバス ・ザ・フォール/落下の王国 -国内- ・ドライブ・マイ・カー ・鳩の撃退法 ・シン・エヴァンゲリオン劇場版 ・夏への扉 ・ミッドナイトスワン ・私をくいとめて ・勝手にふるえてろ ・鍵泥棒のメソッド ○観賞録(公開年降順) 映画名下線部クリックで、amazon.coにリンク |
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□シン・エヴァンゲリオン劇場版(2021) 2012年の「Q」から待ち望まれていたシン・エヴァ、完結編にふさわしい内容で大満足でした。 Qの冒頭120分前を描いた16pの漫画とイラスト集が載った入場特典『EVA-EXTRA-EXTRA』もうれしい。 「One last Kiss」by 宇多田ヒカルも素敵だ。 □(ドラマ)中村仲蔵 出世階段(2021) BSプレミアムで前・後編が放送された。 江戸の芝居小屋中村座を舞台に、仲蔵が困難にめげず最下層の役者から名代に出世していく。 歌舞伎と人間のドラマが面白過ぎ。 主演の中村勘九郎さんを始め、実弟の中村七之助、妻役の上白石萌音他の共演陣も素晴らしかった。 □DUNE/デューン 砂の惑星(2021) 「メッセージ」、「ブレードランナー 2049」のヴィルヌーヴ監督作品とあって期待が大きかったが、壮大なドラマ、映像美、シャラメを始めとする俳優陣、いずれも素晴らしかった。 映像にマッチしたハンス・ジマーの音楽も特筆ものだ。 後編を早く観たい。 □鳩の撃退法(2021) 事件の舞台を富山市に設定、1000ページ近い原作のストーリーを整理して、メタ的なところも映像的にほどよく再現していて楽しめた。 津田役の藤原竜也さんを始めとするキャストも皆適役で、中でも“本通り裏のあのひと”を演じた豊川悦司さんの存在感はさすがだ。 □ドライブ・マイ・カー(2021) 原作を含む短篇集「女のいない男たち」から『シェエラザード』『木野』のエピソードを加え大幅に脚色 小説世界を超克し、濱口監督自身の思いがこめられた素晴らしい作品だ。 チェーホフ「ヴァーニャ叔父」と現実のストーリーが響き合う演出も感銘深かった。 劇は好きで、シェイクスピア、チェーホフなどの古典劇からベケット、イヨネスコ、別役実の不条理演劇まで幅広く観ています。 映画での多言語による芝居も劇団東演によるロシア語混在の「どん底」「検察官」「ハムレット」「マクベス」で経験済みだったので興味深かった。 □Arc アーク(2021) 概ね原作に添った展開で、遺体保存アートと不老不死を描いています。 演出、映像、音楽、主演の芳根京子さんと共演の俳優さんたちの演技、どれも高く評価でき、静かな緊張感を湛えた良作です。 死(超長寿命)が万人にとって平等ではなくなる時がいずれ来るに違いない。 □夏への扉(2021) 原作を愛する人も知らない人もきっと楽しめる、まさに「時をかけるエンターテイメント」。 小説とは異なる設定もあるけど気にならなかった。 爽やかな宗一郎(山崎賢人)、彼を一途に想う璃子(清原果耶)、アンドロイド(藤木直人)を始めとするキャスティングも素敵だ。 □ミッドナイトスワン(2020) 日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、新人俳優賞。 草g剛さんの渾身の役作りとバレエコンクール受賞歴多々の服部樹咲さんの凜とした佇まいに心を?まれた。 朝になると白鳥に戻ってしまうオデット姫のように孤独なふたりの出会いと別れが切ない。 □スパイの妻(2020) ヴェネツィア映画祭銀獅子賞 開戦前夜、自らの良心から軍の機密を世界に暴露しようとする優作の決心を知った妻、聡子がとった行動とは。 優作と彼への一途な愛を抱く聡子に彼女を慕う憲兵が絡む一級の娯楽作品となっている。 黒沢作品らしい映像表現の巧みさにシビレた。 □私をくいとめて(2020) のんさんは全編ほぼ出ずっぱりで、しかもアップショットが多い難役だけど、表情豊かな感情表現が素晴らしかった。 林遣都、橋本愛さんなど共演者も適役(脳内別人格「A」の声役の中村倫也さんも)で、全体として優しいタッチの作品に仕上がっていて、とてもよかった。 □ノマドランド(2020) ノンフィクションの原作をベースとしたドラマ アカデミー賞の作品賞他3部門受賞 夫と死別、鉱山町の閉鎖と共に仕事と家を失い車上生活者となったファーンのノマド仲間との出会いと別れを詩的に描いている。 自主独往精神のファーンを演じたマクドーマンドに魅入った。 バックに流れていた叙情的なソロ・ピアノ曲が映像にマッチしていてとてもよかった。 イタリアの作曲家ルドヴィコ・エイナウディの"Oltremare"という曲で、スコアをゲットして探り弾きしています。 □シチリアーノ 裏切りの美学(2019) 1980年代、派閥抗争を繰り広げたシチリア・マフィアを描いた実録映画。 家族・仲間を失った組織の大物ブシェッタは反マフィアの判事に全容を明かし、数百人のマフィア構成員を起訴に追いこむ。 激しい抗争と特設法廷での裁判のシーンが見ごたえがあった。 □パヴァロッティ 太陽のテノール(2019) 2007年に亡くなった不世出のオペラ歌手の生涯を家族、関係者の証言と映像とで追ったドキュメンタリー。 故ダイアナ妃やジャンルを超えたミュージシャンとも幅広い親交があり、U2のボノとは親友だった。 ”アルバムの売り上げ1億枚以上”は驚異的だ。 1990年ローマでの3大テノールのステージがハイライトとなっていて、このコンサートでのプッチーニ「トゥーランドット」から彼の看板曲だった"誰も寝てはならぬ"の歌唱で映画が締めくくられていた。 □ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019) 下り坂の俳優リックと、親友で専属スタントマン兼付き人のクリフの1969年ハリウッドでの日々。 ある日、リック邸の隣りにポランスキー監督、女優シャロン・テート夫妻が越してくる。 タランティーノらしい遊び感覚が楽しい傑作だ。 タランティーノ監督自選の1960年代ポップソングの数々が挿入されている。 バフィー・セントメリー The Circle Game、サイモン & ガーファンクル Mrs. Robinson、ホセ・フェリシアーノ California Dreamin'、ヴァニラ・ファッジ You Keep Me Hangin' Onなど、懐かしすぎる。 □(ドラマ)トクサツガガガ(2019) 日曜・月曜深夜に全7話が再放送され、どっぷりはまった。 特撮ヒーロー推し隠れオタクのOL(小柴風花)が奮闘するコメディーで、小柴さんの表情豊かな演技が素敵だ。 “好きなものに年齢も性別も関係ないし、誰にも奪えない“のメッセージがしっかり伝わってきた。 □フリーソロ(2018) "いつ死ぬかわからないのは皆同じさ。登ることで生を実感できるんだ" ロープなどの安全具を使用しないクライミングで、ヨセミテの975mの岩壁に挑んだクライマーの記録。 アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作。 怖くて目をそむけてしまう撮影スタッフに共感した。 □search サーチ(2018) 16歳の女子高生が失踪し、父親が娘のパソコンにログインして手がかりを探す。 ドラマのほとんどがパソコンの画面上で展開されるという手法の斬新さだけでなく、サスペンスとしても一級品でした。 □U2 エクスペリエンス ライブ・イン・ベルリン(2018) 2018年11月のドイツ・ベルリン公演の映像を観た。 ボノの力強いボーカル、エッジのカッティングは不変だ。 1980年の結成以来の変わらぬメンバーで常に最高のロックバンドであり続ける彼らの凄さを再認識した。 □勝手にふるえてろ(2017) 映画初主演となる松岡茉優さんの感性豊かな演技に引き込まれ、ラストにふるえた。 同じく綿矢りさ原作の映画「私をくいとめて」(2020)の大九明子監督作品で、原作をきちっと踏まえつつ躍動感のある演出(ミュージカル・シーンまで入れてしまう)がよかった。 □コロンバス(2017) コロンバスは、モダニズム建築の宝庫として知られる街。 高名な建築家の父が倒れた報を受け韓国からやってきたジンと図書館で働く建築ラブのケイシーが出会い、建物を巡る中で心を通わせていく。 小津安二郎を愛する監督による構図が美しく、静謐さが魅力です。 コロンバスのモダニズム建築の数々。 “建築には人の心を癒す力がある” 確かに癒されました。 □ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(2017) 大学の創作科で学び作家を目ざし、兵役で戦場の地獄を見てPTSDを負い東洋思想・瞑想へ接近、The Catcher in the Ryeで成功を収めながら田舎に隠遁したサリンジャーを描いている。 "ライ麦畑"のホールデン少年は、彼自身だったんだ。 「ノルマンディーに上陸した時、「The Catcher in the Rye」の一部を担いでた。入院してた間も書いて、僕を救った作品です。問題を抱えた青年のクリスマス休暇の話です。」 映画「ライ麦畑の反逆児」より サリンジャーの言葉 □ジュリエッタ(2016) 巨匠アルモドバルが、マンローの小説の舞台をカナダからスペインに移し映画化 ストーリーはおおむね小説と同様だが、ジュリエッタが抱く罪の意識、母と娘の確執、生と死の対比を際立たせた演出となっている。 現在と若き日のジュリエッタを始めとする女優たちが素敵。 □屍者の帝国(2015) 大筋は原作に沿いつつ登場人物やエピソードを減らしてすっきりさせたストーリー展開は映画版として好ましい。 ワトソンと彼に同行するフライデーの関係を原作とは変えていて、これも効果的な演出だなと感心した。 19世紀の雰囲気を再現した映像の美しさも見応えがある。 □鍵泥棒のメソッド(2012) 誠実だが売れない貧乏役者、几帳面な裏社会の便利屋、生真面目な婚活中の雑誌編集長の三人の運命が交錯し、思いもよらぬ展開に・・・ 細部へのこだわりも半端なくて、日本アカデミー賞最優秀脚本賞に異議なし。 韓国と中国でリメイクされたのも納得の面白さです。 クラシックが効果的に使われていました。 オープニングにモーツァルトのピアノソナタ第15番、プロットにも関わるベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番、最後はベートーヴェンのピアノソナタ第31番。 携帯の待ち受けが三人のキャラを象徴、堺:カノン、香川:歓喜の歌、広末:「フィガロの結婚」序曲。 □オン・ザ・ロード(2012) R15+ 原作同様、性・ドラッグ・酒に耽溺する放浪者ディーンの無軌道な生き様を友人サルの視点で描いている。 内省的な作家サルを前面に出した演出だけど、小説の詩的な雰囲気の再現には至っていないのが惜しい。 メリールウ役のクリステン・スチュワートが素敵だ。" □海炭市叙景(2010) 原作からの5篇を年末から新年にかけてのエピソードに再構成して全体の統一感を持たせた演出がよかった。 小説同様、冒頭の兄妹の話が沁みた。 佐藤泰志の小説を映画化した「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」とともに函館3部作と呼ばれ、いずれも秀作です。 □ザ・フォール/落下の王国(2006) 無声映画時代のアメリカ、スタントマンのロイは撮影中の事故で入院、怪我で入院していた彼を慕う5歳の少女に即興で愛と復讐の物語を聞かせる。 世界中でロケした叙事詩的世界の美しい映像と石岡瑛子デザインの衣装が見事に調和しています。 物語の持つ力はあなどれない。 冒頭とエンド・クレジットに流れるのは、ベートーヴェンの交響曲第7番第二楽章で、哀愁を帯びた切ない旋律が映画にマッチしていました。 変奏曲の形式のこの第二楽章が大好きです。 ドラマ「のだめカンタービレ」では、第一楽章がフィーチャーされていました。 □ボブ・ディラン NO DIRECTION HOME(2005) ミネソタでの少年時代、「風に吹かれて」でアイドルとなるが、フォークから逸脱してコンサートで大ブーイングを浴びた1966年頃までを描いたドキュメンタリー映画。 当時を振り返る彼自身やジョーン・バエズ、詩人ギンズバーグ他の関係者の証言も興味深い。 信じるのは自分だけという確固たる信念と巧みな自己演出力がディランの凄さかも。 アーティストは、目的に到達したと思ってはいけない。 いつもどこかに向かう過程にあると思うべきだ。そう思っている限り大丈夫だ。 歌を聴き手に合わせるつもりはない。誰もが満足する歌などない。 ボブ・ディラン □(DVD)スザンヌ・ヴェガ ライヴ・アット・モントルー(2004) 彼女の歌が大好きで来日公演も聴きに行きました。 演奏スタイルは、1985年のデビュー当時と全く変っていないみたい。 Marlene On The Wall、Solitude Standing、Luka、Tom's Dinerなど13曲が収録されています。 □五線譜のラブレター(2004) 多くのスタンダード名曲を残した作曲家コール・ポーターの半生を描いたミュージカル。 惹かれ合い、ポーターが同性愛者であることを知った上で結婚し、彼を成功に導いたリンダの献身的な愛の姿に感動。 洗練され洒落たポーターの代表曲を堪能できる映画です。 超一流のミュージシャンたちの競演も見所・聴き所の映画で、サントラ盤も魅力です。 好きなロック・シンガー、シェリル・クロウが格好いいBegin the Beguine、ナタリー・コールの歌唱が素晴らしいEv'ry Time We Say Goodbye、ダイアナ・クラールがジャジーに歌っているJust One of Those Thingsなど。 □ネバーランド(2004) 劇作家のバリーは、公園で遊んでいる4人の子どもたちと母親のシルヴィアと出会い、交友を深める中で新作劇「ピーター・パン」の着想を得ていく。 事実そのままではなく脚色している。 少年みたいなバリーにジョニデはぴったり。ネバーランドも登場する劇中劇が素敵だ。 □めぐりあう時間たち(2002) 三人の傑出した女優、メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマンと優れた脚本・演出・音楽により小説の時間を再現した傑作です。 特殊メイクを施しウルフになりきったキッドマンは、アカデミー主演女優賞にふさわしい入魂の演技でした。 夫レナードがヴァージニアに「ダロウェイ夫人」のプロットについて問うシーン;「誰かが死ななければならないと言っただろ。なぜ?」 「誰かが死ななければならないのは、残った私たちが人生にもっと価値を見出すためよ」 Someone has to die in order that the rest of us should value life more. 「めぐりあう時間たち」の弦楽合奏とピアノによる音楽は、ライヒと並ぶミニマル音楽の代表的作曲家フィリップ・グラスによるオリジナル作品です。 たゆたうサウンドは、時間・空間を超えるシーンを縫い合わせて流れていきます。 サウンド・トラック盤を愛聴しています。 □リトル・ダンサー(2000) 1984年の英国、炭鉱で働く父と兄と暮らすビリー少年はふとしたきっかけからバレエに夢中になり、プロになるという大望を抱くようになる。 家族、バレエの先生、親友との絆を中心に描いた人間ドラマで、バックに流れるT.REX、The JAM、The Clashの曲もぴったりだ。 □(ドラマ)六番目の小夜子(2000) ストーリーは原作と大きな違いはないが見通しがよくなっている。高校三年(原作)と中学二年(ドラマ)の設定、生徒達の関係に変化がある。 何はさておき若き日の鈴木杏、栗山千明、山田孝之、松本まりか等の共演に注目です。 □ノッティングヒルの恋人(1999) ハリウッド・スター女優とロンドンの下町で旅行書専門店を営む普通男の恋模様。 ちょっとあり得ない展開が気にならなくなるくらい楽しい。 ジュリア・ロバーツの魅力は勿論だけど、ウィリアムの恋を見守る同居人、妹、友人たちの英国下町流連帯感が素敵だ。 □海の上のピアニスト(1998) 大揺れの船内での演奏、大物ミュージシャンとのピアノ対決の見せ場のシーンは原作を再現、少女への秘めた想いをピアノで綴る場面は映画オリジナルです。 「ニュー・シネマ・パラダイス」のトルナトーレ監督作品で、この映画でもモリコーネの調べが胸に迫ります。 既に別の作曲家による音楽が録音済みだったが試写後にボツとなり、代わりに急遽依頼されたジェリー・ゴールドスミスが10日余りで作曲、録音までしたというエピソードが残っている。 ストリングスとトランペットで奏でる物憂げなテーマ曲が好き。 □フリートウッド・マック『ザ・ダンス』(1997) 10年ぶりにメンバーが再集結した1997年のライブを収録したアルバムのDVD版を視聴 1977年の傑作アルバム『噂』の”The Chain”を皮切りに素晴らしい演奏を披露していて、アメリカで5番目に売れたライブ・アルバム(Wikipediaによる)というのも納得の充実ぶりだ。 □カフカの「城」(1997) 「ピアニスト」のミヒャエル・ハネケ監督は小説を忠実に映像化していて、エンディングは「原作はここで終わっている」。 雪深い村の屋外撮影は零下20度で行われたそうで、BGMなしの寒々とした画面は、どこにも辿り着かない不条理なカフカ世界とマッチしている。 □マチルダ(1996) マチルダのダメ親や、おっかない校長が戯画化されていてマンガチックなので、子供たちにすごく受けそうだけど、大人も一緒に楽しめるコメディーです。 優しい担任のハニー先生は原作の挿絵よりずっと魅力的。映画のマチルダは、メルヴィルの「白鯨」を読んでいました。 □ショーシャンクの空に(1994) ‘Hope is a good thing, maybe the best of things.’ 「希望は大切だ。たぶん何よりも」 横綱級のヒューマン・ドラマ。 過酷な刑務所内でも自律の精神を失わないアンディには遠く及ばないけど、どんな状況・環境下でも希望、ビジョンを持ち続けたいものです。 アンディが勝手にレコードをかけて刑務所内放送で流すシーンが感動的でした。 曲はモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」から伯爵夫人とスザンナの二重唱「そよ風に寄せて」。 □秘密の花園(1993) コッポラの製作総指揮。 若干のアレンジを加えていますが、広壮で暗鬱な叔父の屋敷、ヨークシャーの広大な自然、そして秘密の花園の季節の変化など、原作のイメージを損なうことなく描写されていて、映像だけでも一見の価値があると思います。万人向けの癒しの映画です。 私は、子どもの頃に好きだった場所を今もよく夢に見るし、その風景が自分の心をかたち作っているのだという実感を持っている。 この映画の中に現れる庭や荒地の姿は、日本とはまるでちがう風土であるはずなのだけれど、なぜか私の記憶の風景と触れ合うものがあった。 Boys in the Cinema/湯本香樹実" □シンドラーのリスト(1993) ドイツ軍占領下のポーランド。 ゲットーに強制移住させられたユダヤ人たちを、経営する工場で雇用することで絶滅収容所へ送られるはずだった千人以上の人々を全財産を賭して救ったドイツ人実業家の実話に基づいています。 人間性の光と闇を描き出した名作です。 作品賞、監督賞、作曲賞他、アカデミー賞の7部門で受賞。 ジョン・ウィリアム作曲の胸に沁みるメインテーマ曲は、ユダヤ人である名ヴァイオリニスト、パールマンのソロにより演奏されています。 □青の愛(1993) キェシロフスキ監督 トリコロール三部作最初の作品 著名な作曲家の夫と娘を交通事故で亡くし、自身も重傷を負ったジュリー(ビノシュ)の深い喪失感からの再生を描いている。 青を基調にした映像が美しく、彼女が泳ぐプールの青い水が彼女の悲しみを象徴しているかのよう。 この映画では、プレイスネルの音楽が重要な役割を果たしていて、ラストで奏されるジュリーの手により完成されたシンフォニーの荘重な響きが忘れがたい。 冒頭の歌詞から; たとえ私が天使たちの言葉を話しても 愛がなければ それは空しいかぎり ただ鳴り響く鐘にすぎない プレイスネルは、キェシロフスキのほぼすべての映画・ドラマの音楽を手がけています。 彼が作曲した「Requiem for My Friend」(1998)は、1996年に54歳で急逝した盟友キェシロフスキに捧げた美しい鎮魂の調べです。 □リバー・ランズ・スルー・イット(1992) R・レッドフォード監督 1910〜1920年代アメリカの田舎町で暮す牧師一家の真面目な兄と、やんちゃな弟の対照的な生を描いていて、弟を演じたブラピがはまり役。 モンタナの自然とフライ・フィッシングの糸の軌跡が描く美しさを知った滋味深い映画です。 □フック(1992) スピルバーグ監督 一男一女の親となったピーター・パンは過去の記憶を失い、今では仕事中毒の弁護士だ。 フック船長に誘拐された子どもたちを救うためティンクに連れられ再びネバーランドへ ロビン・ウィリアムス、ダスティン・ホフマン、ジュリア・ロバーツの共演が楽しい。 私はいつも、自分がピーター・パンのようだと感じてきた。今もそう感じている。私にとって大人になるのはとても困難なことだった。 飛ぶことは私の映画の中では重要なことだ 私にとって飛ぶことは自由と無限の想像力を意味している。しかし興味深いことに、私は飛ぶのが怖いのだ。 スピルバーグ □ふたりのベロニカ(1991) 最初に観たキェシロフスキ監督作品で、詩的で隠喩に満ちた映像表現に魅了された。 フランスとポーランドのベロニカを演じたイレーヌ・ジャコブの感性豊かな演技と美しさ、キェシロフスキ作品と切り離せないプレイスネルの静謐な音楽に今回あらためて心を打たれた。 □ニュー・シネマ・パラダイス(1989) まだTVがなかった時代、イタリア田舎町の小さな映画館を舞台にした映画愛満載の友情、恋愛、郷愁のドラマ。 エンリオ・モリコーネの感傷的な調べとともに映し出されるラストシーンにまた泣かされた。 □バクダッド・カフェ(1987) 観ているうちにだんだんと引き込まれて、さびれたカフェを切り盛りする怒りっぽいブレンダや何を考えているのかわからないドイツ人旅行者ジャスミンに親近感が湧いてくるのが、いとおかし。 サチエとミドリが営む「かもめ食堂」をまた観たくなってきた。 人気が高い挿入曲"Calling You"は、映画を観る以前からホリー・コールがピアノ・トリオで歌っているのに馴染んでいました。 ブレンダの息子の ”バッハ・オタク” ぶりも楽しかった。 □バベットの晩餐会(1987) デンマーク映画 アカデミー外国映画賞受賞作。 寒村の清貧な暮らしぶり、若き日の姉妹の淡い恋、晩餐会の様子が丁寧に描かれています。 人生とは、幸福とは、芸術とは・・・ 「今夜こそわたしは悟ったのです。この美しい世界では、すべてが可能なのだと」 □薔薇の名前(1986) R15+ 原作のストーリーをエンタメ寄りに少々改変しているけど、妥当な演出だと思う。 舞台となる中世の修道院の様子が興味深く、実際こんな感じだったのかな。 沈着明晰な修道士の超渋S.コネリーがハマリ役で、純真な弟子役のCスレイターとのコンビがいい感じで和めた。 □愛と哀しみの果て(1985) 「アフリカの日々」を映画化、アカデミー賞の作品賞など7部門で受賞。 原作では深く触れられていない夫との関係や冒険家デニスとの恋愛模様などの人間ドラマに焦点を当てています。 デニスとのサファリ・ツァー、複葉機から眺める自然の景観などの映像も見所です。 □タクシードライバー(1976) ベトナム帰還兵で重度不眠症のトラヴィスは、夜のN.Yを走るタクシードライバーになる。 公開時受けた衝撃は「ジョーカー」超えだった。 久々に観て、自分を認めようとしない社会への憎悪を募らせていく孤独な男が憑依したかのようなデ・ニーロの凄みに魅入った。 □チャイナタウン(1974) 1930年代のロサンゼルスを舞台にしたポランスキー監督のハードボイルド作品で、アカデミー賞11部門にノミネートされ脚本賞を受賞。 ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイの存在感、プロット、演出が素晴らしく、映像と音楽が当時の雰囲気を醸成している。 □ジギー・スターダスト(1973) デヴィッド・ボウイの1972年から1年半に及ぶツアーのロンドン最終公演を収録。 架空のロックスター、ジギーとして最後の、そして最高のライヴ映像。 ミック・ロンソンの熱く華麗なギタープレイの合間に山本寛斎の衣装を何度も着替えているシーンも印象深い。 □サムライ(1967) メルヴィル監督 “サムライの孤独は、他のどんな孤独より深い”(冒頭のテロップ) 寒々しい部屋で一羽の小鳥と暮らす孤高の殺し屋、アラン・ドロン。“絵になる”の一言。 メルヴィルは、彼が考える武士道の美意識をフィルムノワールに定着しようとしたのだろう。 □続・夕陽のガンマン(1966) セルジオ・レオーネ監督によるマカロニ・ウェスタンの名作。 南北戦争を背景に、"善玉・悪玉・卑劣漢"(原題)の賞金稼ぎ三人が南軍の盗まれた20万ドルを追う。 善玉のクリント・イーストウッドがカッコいいのは当然だが、悪玉、卑劣漢も個性が際立ち印象深い。 「簡単にいうとな」グリーシャが言い添える、「『続・夕陽のガンマン』、覚えてる? 三者が絡んで決着がつかない。あれ、観るだけでも大変だったでしょ?」 「悪いけど話が見えない。いったいどういうつもり?」 ブリーディング・エッジ(2013)/トマス・ピンチョン □勝手にしやがれ(1960) ゴダール初の長編作品で、それまでの映画文法を覆したヌーベル・バーグの傑作。 やんちゃなベルモンドもいいけど、ジーン・セバーグに打ちのめされた。 当時の若者にとって煙草がかっこよさの要件だったのだろうけど、久々に観たらすごく煙かった。 ジーン・セバーグの回想: 「即興の演技ばかりだったわ。ベルモンドも私も、私たちが思った以上のいい演技ができた、と思うことが何度もあった。(でも)そこはゴダールよ。きっちりコントロールしていたわね」 ジーン・セバーグ(2008)/ギャリー・マッギー □白夜(1957) 監督:ヴィスコンティ 舞台をイタリアに移し、ほぼ原作に沿ったストーリー展開。 モノクロによる光と闇を対比させた画面構図が美しく、また全編がセットによる撮影で舞台劇的な印象を受けます。 マストロヤンニとマリア・シェルの表情豊かな演技も見どころです。 □見知らぬ乗客(1951) ヒチコック監督 パトリシア・ハイスミスの原作、脚本にはチャンドラーも参加している。 著名テニス選手のガイは、列車に乗り合わせた男から交換殺人を持ちかけられ、適当にあしらっていたが・・ モノクロ映像ならではの見事な演出とハラハラ感を満喫できる秀作だ。 □汚名(1946) ヒチコック監督 自身の潔白を証明するため、スパイとして危険な潜入捜査に応じたアリシア(バーグマン)と、彼女を補佐する諜報員デヴリン(グラント)のラブ・サスペンス。 出会った瞬間に燃え上がる二人の愛、バーグマンが素晴らしい。 鮮やかな幕切れが強く印象に残っている。 □断崖(1941) ヒチコック監督 同じヒッチコック監督作品「レベッカ」に主演したジョーン・フォンテインが、夫に殺されるのではとの疑惑を抱く妻を演じてアカデミー賞、主演女優賞を受賞。 原作の「レディに捧げる殺人物語」も読んでみたけど、テンポよい展開と幕切れの演出の好みで映画に軍配をあげました。 世の中に殺人事件を生む女もあれば、殺人者とベッドをともにする女もある。そしてまた、殺人者と結婚する女もある。リナ・アスガースは、八年近くも夫と暮らしてから、やっと自分が殺人者と結婚したことを知った。 「レディに捧げる殺人物語(犯行以前)」(1932)/フランシス・アイルズ 冒頭の文章 □レベッカ(1940) ヒチコック監督 ヒッチコックにとって唯一のアカデミー作品賞受賞作。 広大な敷地に建つ豪壮なマンダレーの屋敷で、前妻レベッカの影に怯える儚げなヒロインを演じたジョーン・フォンティンが好き。 彼女はジェーン・エア(1944)のヒロインも演じているけど、こちらの方が適役だと思う。 □バルカン超特急(1938) ヒチコック監督 ロンドンへ向かう特急列車内で消えた老婦人の謎を美しいヒロインと彼女に協力する青年が追求するロマンチック・サスペンス。 今風のド派手なアクション、スリルや濃い恋愛ドラマは望めないけど、心穏やかにヒッチコックの小粋な演出を楽しめる名作です。" |
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