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Jackie Mclean(as)(1932-2006)
ジャッキー・マクリーン


1951年にバド・パウエルの推薦でマイルス・デイビスと活動を共にするようになる。その後ジョージ・ウォーリントン、アート・ブレイキーのグループに参加する一方、プレスティッジを中心に多くのセッションを重ね、58年よりブルーノートに吹き込み開始。その後ハード・バップの名作に名を連ねながら、フリー・ジャズにも傾倒していった。教鞭を取るため第一線を退いていたが、72年に現役復帰した。(「JAZZ HERO'S DATA BANK」/ JICC より)



私が適当に選んだテープにはジャッキー・マクリーンとかマイルズ・デイヴィスとかウィントン・ケリーとか、その手の音楽が入っていた。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」/ 村上春樹



1.A Long Drink of the Blues/ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース(1957)
Jackie Mclean(as,ts), Curtis Fuller(tb), Webster Young(tp), Gil Coggins or Mal Waldron(p), Paul Chambers or Arthur Phipps(b), Louis Hayes or Art Taylor(ds)

 ジャズの革新者ではないけど、ジャズを聴く快感を与えてくれるという点では、この人は最右翼に位置するのではないかと思います。そしてマクリーンの魅力はあの一度聴くとすぐ覚えてしまうくらい特徴あるちょっとひしゃげた感じのアルトの音色と、歌心のある哀愁のマクリーン節ということになると思うけど、そのあたりの魅力が一番発揮されているのがこのアルバムをはじめとする50年代の演奏だと思います。
 冒頭のタイトル曲のフアースト・テイクでは、始めてすぐにプレイを中断して仲間うちでワイワイ言い合って再度演奏し直す場面も収録されていてレコーディング時のなごやかな雰囲気が想像されて楽しい。こういう場面は、マイルスの「Relaxin'」(1956)にもありました。このときはワンマンのマイルスがレッド・ガーランドのピアノを止めて「そうじゃないんだよ」といった感じだったので、この場合と随分違います。この曲では、マクリーンはテナーも吹いていますがプレイ自体はアルトの場合と同じです。
 2曲目以降は、ワンホーンによるバラード演奏で、ガーシュインの名作"Embraceable You"や同じくバラードの名曲"I Cover the Waterfront"と"These Foolish Things"におけるマクリーンの哀感に満ちたソロが何より好きです。マクリーンというとまず頭に思い浮かぶのが「Left Alone/ Mal Waldron」(1959)でのビリー・ホリデイの愛唱曲だった"Left Alone"の切々としたソロだけど(一時期ジャズ喫茶に行く度にこれを聴かされた時期がありました)、ここでもマルと共演していて、"Left Alone"が好きという人には特におすすめのアルバムです。


2. 4, 5, 6(1956)
Jackie Mclean(as), Mal Waldron(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds), Donald Byrd(tp), Hank Mobley(ts)

 「4,5,6」というタイトルは、ワン・ホーンのカルテット(4)からトランペットとテナーが加わったセクステット(6)までの3つの編成で演奏をしているところからとられています。1曲目がこのアルバムを人気盤にしている"Sentimental Journey"です。ドリス・デイが歌ってヒットしましたが、マクリーン節にぴったりな曲です。"Why was I Born"と"When I Fall in Love"が、カルテット編成による演奏で、"Conour"はドナルド・バード(tp)、そしてピアノのマル・ウォルドロン作の哀愁のバラードナンバー"Abstraction"がハンク・モブレー(ts)を加えたクインテット、この両者が参加しているのがチャーリー・パーカーの名作"Confirmation"です。この時期のマクリーンはパーカーに傾倒していて、その演奏スタイルもパーカーの精神を受け継いでいるものです。

 "When I Fall in Love"は、スタンダードの名曲ですが、マクリーンは軽快に演奏していて、とても爽やかな感じがします。この曲の演奏では、ボーカルではナット・キング・コール「Love is the Thing」とカーメン・マクレエ「Book of Ballads」の極めつけの名唱があり、インストゥルメンタルでは、ビル・エヴァンス「Portrait in Jazz」が代表的な演奏でしょう。

「Portrait in Jazz」/ Bill Evans '59
"When I Fall in Love"
甘くなり過ぎず、エヴァンスらしいリリカルな演奏

「Book of Ballads」/ Carmen Mcrae '58
"When I Fall in Love" しっとりした雰囲気

3.A Fickle Sonance/ア・フィックル・ソーナンス(1961) 
Jackie Mclean(as), Tommy Turrentine(tp), Sonny Clark(p), Butch Warren(b), Billy Higgins(ds)

 このアルバムではソニー・クラーク(p)と共演していて、特に冒頭曲"Five Get You Ten"や"Sundu"などのソニー・クラークのオリジナル曲において、名盤「Cool Struttin'」(1958)を髣髴とさせる演奏をしています。「Cool Struttin'」は、ソニー・クラークだけでなくマクリーンを聴くのにも最適なアルバムとなっています。マクリーンも時代の空気に押されてか、この後コルトレーンのようなアグレッシブな演奏をするようになりますが、これはその直前の録音となっていて、そのあたりの雰囲気もいくらか感じられのが興味深いところ。マクリーンまでコルトレーンすることはないのに、と思っていて、これ以降のアルバムはほとんど聴いていませんが、このアルバムは好きです。特にマクリーン作のバラード"Subdued"では、いつものマクリーン節を聴かせてくれます。



4.Jackie's Bag/ジャッキーズ・バッグ(1959, 1960)
Jackie Mclean(as), Donald Byrd(tp), Sonny Clark(p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds) / 1959
Jackie Mclean(as), Billy Mitchell(tp), Tina Brooks(ts), Kenny Drew(p), Paul Chambers(b), Art Tylor(ds) / 1960

 '59年と'60年の二つのセッションの演奏が収録されています。すべてオリジナル・ナンバーで6曲中5曲がマクリーン作となっています。マクリーンのアルトは、快調そのもので、文句のつけようがありません。となると、興味はどちらのセッションが勝ったか(!)ということですが、やはり世評通り、'60年組の方に軍配が上がるようです。'59年組では、どうしたことかソニー・クラーク選手に生彩がないんですね。それに、なんといっても、'60年セッションにはマクリーンの名作"Appointment in Ghana"が入っているし、クラークとは対照的にケニー・ドリューが溌剌とした演奏をしているから。彼の"A Ballad for Doll"におけるハードバップの枠を越えたソロの美しさは、後年のドリューを感じさせます。


5. at Trick/ハット・トリック(1996)
Jackie Mclean(as), 大西順子(p), Nat Reeves(b), Lewis Nash(ds)

 あのひしゃげた音と、不安定な音程は健在(?)です。1曲目の彼のオリジナル"Little Melonae"からマクリーンは快調に飛ばしていて、大西さんのソロもダイナミックで気持ちよい。全体的に、彼が過去にリリースしたアルバムからの曲を集めたようで、たとえばこの曲のほかにも"Left Alone"、"Sentimental Journey" や"Bluesnik"が収録されています。大西さんのオリジナル"Jackie's Hat"は、いかにも彼女らしいダイナミズムに溢れた曲。
 "Left Alone"の演奏には、オリジナル・アルバムと同様マル・ウォルドロンと吹き込んだアルバム「Left Alone '86」(日本で録音された)に収録されているものもあります。僕は、やはりマルと組んだこちらの方の演奏に惹かれるけど、これはもうどうしようもないんだろうな。このふたりの演奏が頭の中に刷り込まれてしまっているのだから。このアルバムには、他にもビリー・ホリデイの愛唱曲だった"God Bless the Child"、"All of Me"、"Lover Man"や"Good Morning Heartache"が入っていて、マルのブルース・フィーリングとあいまって、とても良い雰囲気の仕上がりとなっています。
 この2枚のアルバムでの演奏が、好演であることは間違いのないことだけど、僕には50年代のアルバムと比べると、聴き手の心をときめかす "something"が、やはり弱いような気がしています。それは単なる個人的なノスタルジアかもしれないし(多分そうなんだろうと思うけど)、あるいは、あの当時のアルバムは多かれ少なかれ、みんな栄光のジャズエイジのオーラみたいなものを背負っていたのかもしれないな。


参考Webサイト
 

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