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The Modern Jazz Quartet
MJQ モダン・ジャズ・カルテット


1952年に、ディジー・ガレスピー楽団のリズムセクションが独立し、結成された。当初のメンバーは、ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(ds)だったが、2年後にドラムスがコニー・ケイに代った。その後はメンバーは変わらず1974年に解散したが、1981年に再結成された。
 

僕たちは食後のコーヒーを飲み、狭い台所に並んで食器を洗ってからテーブルに戻ると、煙草に火を点けてM・J・Qのレコードを聴いた。
「風の歌を聴け」/ 村上春樹



1.Fontessa/フォンテッサ(1956)
ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)

 MJQのアルバムは、どれも水準以上で粒が揃っているので、どのアルバムを選ぶかは、個人の趣味によるのではと思いますが、僕はこのアルバムや「Django」が一番気に入っています。最初の曲の「ベルサイユ」の開始から、これはちょっと普通のジャズとはちょっと違うなと言う感じがしますが、ミルト・ジャクソンとジョン・ルイスのラインが対位法的な手法で演奏されているようで、とても新鮮な感じがします。表題曲の「フォンテッサ」は、ルネサンス期の即興喜劇にヒントを得てジョン・ルイスが作曲した小組曲風の作品。この2曲以外は、ミルト・ジャクソン作曲のブルース・ナンバーの名曲「ブルーソロジー」を除いて、ジャズ・スタンダード曲であり、通常のジャズ・メソードに沿った演奏をしています。MJQの特質として、"品のあるジャズ"と言うことができると思うけど、これは言い換えると"趣味良くスイングする"ということであって、彼らが志向しているのは、あくまでブルースに根ざした本格ジャズであって、クラシカル・テイストのムード・ジャズではありません。BGMとして聴くこともできるけど中身はとても濃いんです。


2.Django/ジャンゴ(1953−1955)
ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(ds)
 
 MJQ結成時のオリジナルメンバーでのアルバムです。MJQの成功の大きな要因は、ジョン・ルイスの"知、抑制"とミルト・ジャクソンの"情、奔放"とが、絶妙のバランスでつり合っていることで、MJQにおけるリーダーはジョン・ルイスだけど、主役は間違いなくミルト・ジャクソンであり、ジョン・ルイスがディレクター役として脇役に徹したこともいい結果を生んだのだと思います。名ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの死を悼んでジョン・ルイスが作曲した冒頭の表題作のスリルに満ちた演奏に、このグループの最良の成果を聴くことができます。その他では、やはりルイスのオリジナルである「Delaunay's Dilemma」や「Milano」やスタンダード・ナンバーである「Autumn in New York」、「But Not for Me」などいいですね、ということで、やはりこれは名盤なんでしょう。


3.No Sun in Venice/たそがれのヴェニス(1957)
ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)
 
 このアルバムは、ロジェ・ヴァディム監督のフランス/イタリア合作映画「No Sun in Venice "大運河"」のサウンド・トラックです。ちなみに、ジャケットの絵は僕のお気に入りのターナーの作品です(メトロポリタン美術館所蔵)。全6曲、ジョン・ルイスのオリジナルで、全体が一つの組曲を構成していて、基本となる曲は最後のフーガ「Three Windows」で、1曲目の「Golden Striker」は、この曲の第1主題を、「Cortege」は第2主題、「The Rose Truc」は第3主題をそれぞれ発展させた演奏とのこと。ジョン・ルイスの作曲、アレンジの才能に驚かされますが、中では、映画のヒロインを念頭において作曲した美しいバラード「One Never Knows」や「Cortege」、くつろいだ感じの「Venice」やミルト・ジャクソンとジョン・ルイスのソロが華々しい「The Rose Truc」が好きですが、全体的に落ち着いた雰囲気のアルバムと言えます。


4.Concorde/コンコルド(1955)
ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)

 何といっても「Softly, As in a Morning Sunrise/ 朝日のようにさわやかに」の名演で知られるアルバムで、ソニー・クラークコルトレーンウィントン・ケリー などの演奏と共に忘れ難いものです。もちろん聴くべきはこの1曲だけではなく、冒頭のミルト・ジャクソンのオリジナル・ナンバー「Ralph's New Blues」が、そのブルース・フィーリングが魅力だし、快速調の「I'll Remember April」、それからタイトル・チューンである「Concorde」などの聴き所があるアルバムです。


5.The European Concert/ヨーロピアン・コンサート(1960)
ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)
 
 MJQ初の本格的ライブ・アルバムで、スウェーデンでのコンサートを収録したものです。50年代のMJQの活動の集大成としての意味合いもあり、ライブと言えども緩んだ演奏はしていないので、これだけでMJQの全貌がわかるというお徳用のアルバムでもあります(CD2枚組、LPは、第1集と第2集に分れていた)。1曲目の「Django」は、スタジオ盤に比べアップテンポで演奏していますが、この曲だけでなく、ライブならではの"のり"の良さが全曲を通じての特徴となっていて、文句なしに素晴らしい演奏だと思います。
 MJQのもう一つのライブの名演が「Last Concert/ ラスト・コンサート」('74)に収められていて、こちらはグループとしての最後の演奏ということもあって(後に再結成されたけど)、テンションの高い演奏となっています。


6.Vendome/ヴァンドーム(1966)
MJQ、 スウィングル・シンガーズ(chorus)
 
 私はあきらめて、自分がウィスキーを飲んでいるところを頭の中に想像してみることにした。清潔で静かなバーと、ナッツの入ったボウルと、低い音で流れるMJQの『ヴァンドーム』、そしてダブルのオン・ザ・ロックだ。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」/ 村上春樹

 スウィングル・シンガーズは、バロックやモーツァルトなどのクラシックを、「ダバダバダー」のスキャットで歌って人気のあったコーラス・グループで('73年に解散)、バロック志向のMJQと合わないはずがないわけで、上に挙げたMJQの単独アルバムと比較しても、特に違和感は感じません。パーセルやバッハの作品と並んでジョン・ルイス作のフーガが演奏されていますが、いずれも立派なもので特に表題作「Vendome」は、バッハの「リチェルカーレ」と共にこのアルバムのハイライトとなっています。この曲は、アルバムPyramid/ピラミッド ('60)で演奏されていて、こちらの演奏も素晴らしいものです。 その他の曲ではスウィングル・シンガーズの代表的ナンバーである「G線上のアリア」は耳に心地良く、また「Three Windows」は、「たそがれのヴェニス」に収録されていた曲で、アプローチの違いが興味深いところ。MJQのバッハへのアプローチとしては、Blues on Bach というアルバムもあり、これもとても好きなアルバムです。
 

参考Webサイト

 ・MJQ関連 CD
 

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