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Bronte Sisters/ブロンテ姉妹
■ 作品・関連映画紹介
(映画)ブロンテ姉妹
シャーロット・ブロンテ Charlotte Bronte
・Jane Eyre/ ジェイン・エア(1847)
(映画)ジェイン・エア(2作品)
作品リスト
エミリー・ブロンテ Emily Bronte
Wuthering Heights/ 嵐が丘(1847)
(映画)「嵐が丘」(5作品)
作品リスト
アン・ブロンテ Anne Bronte
Agnes Grey/アグネスグレイ(1847)
作品リスト  
 
『ジェーン・エア』みたいな話だ」とぼくは言った。
「スプートニクの恋人」/ 村上春樹

建物の雰囲気には一種の華やかさもある。きっと牧師には娘たちがいるのだ。ブロンテ姉妹のようにつつましく賢い。
「断崖の年」/ 日野啓三


(映画)ブロンテ姉妹 '79年・仏 
(監)Andre Techine, (演)エミリー:イザベル・アジャーニ,  シャーロット:Marie-France Pisier,  アン:Isabelle Huppert

 三姉妹の作品が認められ、そして長男のブランウェル、エミリー、アンとが相次いで死に(1年の間に3人とも)、シャーロットだけが残されるあたりまでが描かれています。ブランウェルは、当初文学を志し、その後美術に転向したが、うまくいかなかったようで自暴自棄となってしまうが、そこには姉妹の作品が認められたことによるあせりがあったのではないかと思われます。上にある姉妹の肖像画は、ブランウェルが描いたものですが、映画では、当初中央に描かれていた彼の部分を自らの手で消し去る場面があります。そして、姉妹の中では、エミリーが彼との精神的な結びつきがいちばん強かったようで、このあたりも映画においても描写されています。
 映画は、全体的に静的な映像で、華やかさからは、かけ離れた彼女達の日常や、ホーワスの荒野をはじめとする自然描写が印象的。イザベル・アジャーニ他の俳優の抑制した演技も好ましいと思う。姉妹の作品のような恋愛事件も起きないので、ちょっと地味すぎるかなという印象はありますが、いい映画です。
 

シャーロット・ブロンテ(Charlotte Bronte) 1816−1855

 牧師パトリック・ブロンテの三女としてヨークシャーのソーントンに生まれる。二人の姉は、1925年に死亡(12歳と10歳)。カワン・ブリッジ・スクールで学んだ後、ロウ・ヘッドの学校で学び、その後同校の教師となるが、健康を害し退職。家庭教師として働き、1842年に妹のエミリーとともにベルギーのブリュッセルに留学。帰国後、妹たちと『詩集』を出版するが反響はなかった1847年に『ジェイン・エア/ Jane Eyre』をカラー・ベルの筆名で出版。相次いで弟妹を失った悲しみの中で、『シャーリー/ Shirley』(1849)、『ヴィレット/ Villette』(1853)が発表され、名声を確立した。1854年に、かつてホワースで教会牧師補であったアーサー・ベル・ニコルズと結婚、半年後に病死した。

火のような想像力が、時として、わたしを食いつくし、そのためかえって社会をありのままに、つまり惨めなくらい無味乾燥なものとして感ずることになるのです。
/ シャーロット・ブロンテ



1.Jane Eyre/ジェイン・エア(1847)
Penguin  難易度:☆☆☆

 美人ではない孤児のヒロインと、ハンサムでない男とのラブ・ロマンスということで、当時としてはこれはなかなか大胆な設定であったのではないか。これにより、物語が単なるおとぎ話にならずに、二人の極めて意志的な人間の精神のドラマとなり、現代にも通ずる名作として読み継がれて来たのだと思います。
 ジェインは幼いときに両親が亡くなり、リード叔母の家で育てられた。ジェインの意志の強さも災いして、叔母や子供達にうとまれ、10歳のときに孤児を対象としたローウッドの寄宿学校に入れられる。ジェインが、最後に叔母に対し、啖呵(たんか)を切る場面:

"I am not deceitful: if I were, I should say I loved you; but I declare I do not love you: I dislike you the worst of anybody in the world except John Reed: and this book about the Liar, you may give to your girl, Georgiana, for it is she who tells lies, and not I." (中略)
" I am glad you are no relation of mine. I will never call you aunt again as long as I live. I will never come to see you when I am grown up; and if any one ask me how I liked you, and how you treated me, I will say the very thought of you makes me sick, and that you treated me with miserable cruelty."
 (John Reed : リード家の長男で特にジェインを毛嫌いした。)

 確かに可愛げのない女の子という感じはありますね。二度とリード家には来ないと言ったジェインだが、後年、死の床にあった叔母に呼ばれて再訪する事になります。
 狂信的な学校経営者の下、規律が厳しいローウッドには8年間、いる事になる(終りの2年は教師として)。ここでは信心深く、夢見がちで、心優しいヘレンが親友となるが、彼女は病気で死んでしまう。死の床にあるヘレンとの最後の会話から:

"I am very happy, Jane; and when you hear that I am dead, you must be sure and not grieve: there is nothing to grieve about. We all must die one day, and the illness which is removing me is not painful; it is gentle and gradual; my mind is at rest. I leave no one to regret me much: I have only a father, and he is lately married, and will not miss me. By dying young, I shall escape great sufferings. I had not qualities or talents to make my way very well in the world: I should have been continually at fault."
"But where are you going to, Helen? Can you see? Do you know?"
"I believe; I have faith: I am going to God."
"Where is God? What is God?"
(中略)
"You are sure, then, Helen, that there is such a place as heaven; and that our souls can get to it when we die?"
"I am sure there is a future state; I believe God is good; I can resign my immortal part to Him without any misgiving. God is my father; God is my friend; I love Him; I believe He loves me."
"And shall I see you again, Helen, when I die?"

 牧師の娘であったシャーロットにとって信仰の問題は大きかったと考えられ、ジェインの神、天国に対する懐疑の念も作者の実体験に基づいていると思われます。最後には、神に祝福された幸福を獲得することになるわけですが。
 ローウッドを出て、ソーンフィールド邸での家庭教師の職を得たジェインは、主人のロチェスターと出会う。彼は、ジェインとは20歳ほども離れているけれど、自らの意志で人生を切り開いてきたという共通点を持ち、互いに惹かれるようになります。夜の果樹園で、ロチェスターが、ジェインの嫉妬心をあおろうと他の女性との結婚をほのめかすと、ジェインは、「ソーンフィールドから出て行きます!」と叫び心情を吐露する小説の一つの山場のシーンから:

"I tell you I must go!" I retorted, roused to something like passion. "Do you think I can stay to become nothing to you? Do you think I am an automaton? ― a machine without feelings? and can bear to have my morsel of bread snatched from my lips, and my drop of living water dashed from my cup? Do you think, because I am poor, obscure, plain, and little, I am soulless and heartless? You think wrong! ― I have as much soul as you ― and full as much heart! And if God had gifted me with some beauty and much wealth, I should have made it as hard for you to leave me, as it is now for me to leave you. I am not talking to you now through the medium of custom, conventionalities, nor even of mortal flesh: it is my spirit that addresses your spirit; just as if both had passed through the grave, and we stood at God's feet, equal ― as we are!"
"As we are!" repeated Mr. Rpchester ― "so," he added, enclosing me in his arms, gathering me to his breast, pressing his lips to my lips: "so, Jane!"
"Yes, so, sir," I rejoined:

 "神の前では人間は平等なんだ"という信念を持つが故に、ジェインは当時の階級社会で、また男尊女卑の社会において、女性から愛を告白することが出来た。このあとロチェスターは、ジェインに求婚し、彼女は戸惑いながらも受け入れることになります。最終的に二人が結ばれるまでには、例によって様々な試練を乗り越えなければならないけど(ペーパーバックで残りがまだ200ページ近くある)。

(映画)ジェイン・エア(2作品)
(映画)ジェイン・エア '96・英 
監督:フランコ・ゼッフィレッリ、 主演:シャルロット・ゲンズブール(ジェーン)、ウィリアム・ハート(ロチェスター)

 約2時間の中に収める為に、かなりのエピソードを削り、かつストーリーを整理して再構築しているので、原作を読んでいると「あれあれ」という個所も結構ありますが、まあやむを得ないところだと思います。また、原作と比べると、ちょっとジェインに情熱、ひたむきさが不足しているのでは、という感じがします。原作を離れた独立した映画として観ると、19世紀の時代背景での良質な恋愛映画と評価できます。映像はきれいだし、役者は達者だし、個人的には、すごく気に入りました。特にジェインの、ここでは内面化した情熱を、シャルロット・ゲーンズブールがうまく演じていたと思います。内に強い意志を秘めた女性というと、僕は『ピアノ・レッスン』のエイダを連想してしまうけど、この映画で少女時代のジェインを演じたアンナ・パキン『ピアノ・レッスン』に、エイダの娘役で出ていた女優です。ロチェスターの妻バーサを『ラスト・タンゴ・イン・パリ』のマリア・シュナイダーが演じていたのが懐かしかった。


(映画)ジェイン・エア '44・米 
監督:ロバート・スティブンソン、 主演:ジョーン・フォンティン(ジェーン)、オーソン・ウエルズ(ロチェスター)

 '44年の映画では、ヒチコックの「レベッカ」('40)で主演していたジョーン・フォンティンがジェインを演じ、ロチェスターにはオーソン・ウェルズが扮しています。ちなみに白黒映画です。なんとあの「すばらしき新世界」の著者であるオルダス・ハックスレーが脚色をしているのが興味深い。オーソン・ウェルズのロチェスターは、あくの強さと傲慢さにおいてウィリアム・ハートより適役だけど、ジョーン・フォンティンのジェインは、悲劇のヒロインといったイメージが強くて、ジェインの個性である強靭な意志があまり感じとれないので、シャルロット・ゲンズブールのほうがイメージに合っているような気がします。やはりジェインには美人すぎるのかもしれない。寄宿学校での親友ヘレン役として、子役のエリザベス・テーラーが出演していました。
 演出面では、'96年版同様、ストーリーが、かなり整理されているし、後半部を大幅に、はしょっているけど、2時間弱の枠の中では仕方のないところだと思います。それから、'40年代は女性の自立ということに対して、さほど意識が高まっていない時代であったこともあり、ハリウッド・メロドラマ調になっているけれど、これもやむを得ないところでしょう。全体的にみて、映画としては僕は'96年版のほうが好みです。
 
シャーロット・ブロンテ作品リスト  
○ 作品
  • Poems by Currer, Ellis and Acton Bell/詩集(1846) エミリ、アンとの共著
  • The Professor/ 教授(1857) 処女作だが死後出版
  • Jane Eyre/ ジェイン・エア(1847)
  • Shirley/ シャーリー(1849)
  • Villette/ ヴィレット(1853)

シャーロット・ブロンテ関連 Webサイト
○ 関連出版リスト : amazon. com.(洋書翻訳本

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