PAPERBACK GUIDE

 William Shakespeare(1564 - 1616)
 ウィリアム・シェイクスピア

 

 イングランドの中央部の小さな町ストラットフォード・アポン・エイヴォンで生まれた。父は、手広く商売をして財をなし、1568年には町長になっている。しかし、その後没落し、1579年には妻の財産まで処分している。シェイクスピアは、町のグラマー・スクールに通ったのみだった。つまり、「ラテン語は少し、ギリシア語はもっと少し」しか知らないまま劇作家になった。18歳のときに8歳年上のアン・ハサウェイと結婚、20歳で3児の父親となった。28歳のときに、ロンドン劇界に登場し、役者兼劇作家として確固たる地位を築いた。その後約20年間に37篇の戯曲と2篇の長詩、154篇のソネット集のほか数種の詩を書き、劇団の幹部、グローブ座の株主として財をなし、晩年は故郷ストラットフォードに購入した大邸宅に住んだ。
 

私は死ぬこと自体はそんなに怖くはなかった。ウィリアム・シェイクスピアが言っているように、今年死ねば来年はもう死なないのだ。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」/ 村上春樹


この世界はすべてこれ一つの舞台、
人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ、
それぞれ舞台に登場してはまた退場していく、
そしてそのあいだに一人一人がさまざまな役を演じる。

「お気に召すまま」第2幕第7場/ シェイクスピア 
小田島雄志訳(以下同様)




 20代の時に、演劇の鑑賞サークルに入っていたこともあって、シェイクスピア劇全作品のおそらく半分以上は舞台で観ていると思います。特に、渋谷にあったイヴェント・スペース「ジャン・ジャン」での出口典雄氏主宰のシェイクスピア・シアターによる連続公演で接した小田島雄志訳による躍動感に満ちたシェイクスピア劇体験は、僕のシェイクスピアそれから演劇全般に対する見かたに大きな影響を残しています。

以下の作品、関連映画・音楽を紹介しています。
全画面表示
(映画)恋におちたシェイクスピア '98年/米
(監)ジョン・マッデン、(演)ジョゼフ・ファインズ、 ギニース・パルトロー 映画8シーン
 
Gwyneth Paltrowはアカデミー賞 主演女優賞受賞

 これは絶対おすすめの映画です。7部門でアカデミー賞のオスカーをとったのもなるほどどうなずけます。
 エリザベス朝時代1593年のロンドンが舞台で、若手劇作家シェイクスピアと芝居好きで役者になることを夢見る資産家の娘ヴァイオラとの恋愛を描いています。

 当時の芝居小屋では、女性が芝居に出ることは禁じられていて、それでも芝居をしたいヴァイオラは男装して、シェイクスピアの新作のオーディションに臨み、役をつかみます。一方シェイクスピアは、彼女の屋敷でヴァイオラに一目ぼれし、男装したヴァイオラに恋の橋渡しを頼むということになりますが、ついに変装がばれて二人は激しい恋におちることになります。しかし彼女は貴族との望まぬ結婚が決まろうとしていた.....。
 恋愛映画としても傑出していると思いますが、シェイクスピアがヴァイオラとの恋から得たインスピレーションをもとに芝居をつくりあげていく過程がとてもうまく描かれていて、ラストの『ロミオとジュリエット』の劇中劇は映画のハイライトとなっています。この部分だけでも過去の数あるロミジュリ映画より良いと思う。
 脇役(群集も含めて)がすばらしいのもこの映画で特筆すべきで、あざやかな大岡裁きを披露するエリザベス女王(アカデミー助演女優賞受賞)やヴァイオラを気遣いながら二人の恋を応援する彼女の乳母や劇場のパトロンで次第に芝居にひかれ、ついには自ら出演してしまう男とか、あげるときりがない感じです。
 最後の場面で、シェイクスピアは女王に依頼された十二夜の観劇のための喜劇の草稿を書いています。彼はヒロインの名を記します。"ヴァイオラ"と。




1. Twelfth Night/ 十二夜(1599-1600)
  

 
シェイクスピアの喜劇の中で一番好きな作品です。双子の取り違いと、男女の取り違いという2重の仕掛けを持ち、大混乱の末、あれよあれよと最後にはうまくおさまるという楽しい物語。映画「恋におちたシェイクスピア」でも描かれていたけど、当時は女役を声変わり前の少年が演じていたわけで、男の役者が演じるヴァイオラ(女)が男装してシザーリオ(男だけど実は女)を演じていたわけです。当時は、そういったややこしい部分も含めて観客は楽しんでいたんでしょうか。

○あらすじ
  双生児の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が暴風雨で遭難し、助かったヴァイオラは男装し、シザーリオと名のってイリリア国の公爵オーシーノーの小姓となる。公爵は、父と兄を亡くし悲しみに暮れている貴族の娘オリヴィアに報われぬ恋をしていて、シザーリオ(男装したヴァイオラ)は、公爵の命でオリヴィアに愛の言葉を伝えに行くが、オリヴィアはひと目で美少年シザーリオに恋してしまう。ヴァイオラはヴァイオラで、公爵に恋していて胸の思いを伝えることができずにいた。そして死んだと思われた兄セバスチャンが、登場するにいたって取り違いによる混乱は広がっていく。このメイン・ストーリーと並行して、オリヴィア邸の峻厳な執事マルヴォーリオをめぐるどたばたがあり、最後は四方八方おさまり、大団円となります。



○見どころ

 開幕一番オーシーノー公爵が、オリヴィアへの恋を語る場面から。最初の言葉がわりと有名なのでは(第1幕第1場);


 音楽が恋の糧であるなら、つづけてくれ。
 食傷するまで聞けば、さすがの恋も飽きがきて、
 その食欲も病みおとろえ、やがては消えるかもしれぬ。
 いまの曲をもう一度! 消え入るような調べであった。
 この耳を甘く撫でるようであった、菫(すみれ)の花の
 咲き誇る丘を吹く風が、その香りをぬすみとって
 運んでくるように。もうよい、やめてくれ。
 さきほどの甘い調べもいまはこころよくはひびかぬ。
 ああ、恋の精よ、おまえはなんと変わり身が早いのだ、



 If music be the food of love, play on,
 Give me excess of it, that, surfeiting,
 The appetite may sicken, and so die.
 That strain again! It had a dying fall;
 O, it came o'er my ear like the sweet sound
 That breathes upon a bank of violets,
 Stealing and giving odor. Enough, no more!
 'Tis not so sweet now as it was before.
 O spirit of love, how quick and fresh art thou,




 オリヴィアが男装した自分に恋したことを知り、ヴァイオラがつぶやく場面。「ああ、時よ、...」は有名な言葉(第2幕第2場);

 ああ、女の弱さ、でも私たち女が悪いんじゃないわ、
 心弱く生まれついているんだもの、しょうがないわ。
 これからどうなるのだろう?
 (中略)
 このもつれた糸は私の手にあまるわ。ああ、時よ、
 おまえの手にまかせるわ、これを解きほぐすのは。


 Alas, our frailty is the cause, not we,
 For such as we are made of, such we be.
 How will this fadge?

 O Time, thou must untangle this, not I ;
 It is too hard a knot for me t'untie.




 オーシーノー公爵が、シザーリオ(男装したヴァイオラ)に向って、女性が抱く愛なんて食欲のようなもので(!)、自分がオリヴィアに対する愛とは比べものにならないと言い(なるほどねえ...)、 これに対して、シザーリオが男だって....と言い返す場面(第2幕第4場)

公爵 
 女のからだは、
 いまおれが味わっているような激しい恋の悩みに
 耐えられはしまい。女の胸は、これほど大きな愛を
 もつには小さすぎる、もち続ける力がないのだ。
 女の愛は、悲しいかな、食欲のようなもの、
 心の底から湧き出るものではなく、舌先だけのこと、
 だからたちまち満腹し、胸やけがし、吐き気をもよおす。

 (中略)



シザーリオ(ヴァイオラ) 
 私たち男は誓いの言葉を並べます、まことしやかに。
 でも心にもない見せかけだけです。口数は多めで
 愛情は少なめ、というのが私たちの負いめです。



 There is no woman's sides
 Can bide the beating of so strong a passion
 As love doth give my heart; no woman's heart
 So big to hold so much; they lack retention.
 Alas, their love may be called appetite,
 No motion of the liver but the palate,
 That suffer surfeit, cloyment, and revolt;

 (注) bide: endure retention: the ability to retain
 motion: stirring, prompting  liver: seat of passion
 revolt: revulsion


 We men may say more, swear more; but indeed
 Our shows are more than will; for still we prove
 Much in our vows but little in our love.

 (注) Our shows are more than will : what we show is greater than the passion that we feel




(映画)十二夜 '96年/英
(監)トレバー・ナン、(演)ヴァイオラ: イモジェン・スタッブズ、
 オリヴィア:ヘレナ・ボナム・カーター、セバスチャン:スティーブン・マッキントッシュ


 原作をうまくまとめたこれもとてもいい映画です。映画ならではの空間の拡がりを上手に生かした演出だと思います。俳優では、特にヴァイオラ役のスタッブズの男装での演技がとてもよかった。自らはオーシーノー公爵を愛しながら、彼が恋する令嬢オリヴィアに男として愛されてしまう悲喜劇の心のふるえをうまく演じていました。男装での魅力度の点では、『恋におちたシェイクスピア』でのヴァイオラよりこちらのほうがいいかな。執事マルヴォーリオをめぐる騒動も節度よくまとめているのもよかった。それから道化フェステが歌うエリザベス朝時代風の歌がその感傷的な旋律とともに印象的でした。





 恋とは明日のものではなく
 今日の喜びがすべての命
 先のことなど知る者なし
 未来がまつとはかぎらない
 ならばそっとやさしい口づけを
 心ゆくまでささげよう
 若さははかないものだから

 (第2幕第3場より道化の歌。訳は字幕から)

 What is love? 'Tis not hereafter;
 Present mirth hath present laughter;
  What's to come is still unsure
 In delay there lies no plenty;
 Then come kiss me, sweet, and twenty,
  Youth's a stuff will not endure.

 (注) still : always  
 Then come kiss me, sweet, and twenty :
 so kiss me, my sweet, and then kiss me twenty times again





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 ○ 作品
(E.K.チェンバーズによる創作年代推定表による)

 1. Henry Y-2/ ヘンリー6世・第2部(1590-1)
 2. Henry Y-3/ ヘンリー6世・第3部
 3. Henry Y-3/ ヘンリー6世・第1部(1591-2)
 4. Richard V/ リチャード3世(1592-3)
 5. The Comedy of Errors/ 間違いの喜劇
 6. Titus Andronicus/ タイタス・アンドロニカス(1593-4)
 7. The Taming of the Shrew/ じゃじゃ馬ならし
 8. The Two Gentlemen of Verona/ ヴェローナの二紳士(1594-5)
 9. Love's Labour's Lost/ 恋の骨折り損
 10. Romeo and Juliet/ ロメオとジュリエット
 11. Richard U/ リチャード2世(1596-7)
 12. A Midsummer Night's Dream/ 夏の夜の夢
 13. King John/ ジョン王(1596-7)
 14. The Merchant of Venice/ ヴェニスの商人
 15. Henry W-1/ ヘンリー4世・第1部(1597-8)
 16. Henry W-2/ ヘンリー4世・第2部
 17. Much Ado About Nothing/ から騒ぎ(1598-9)
 18. Henry X/ ヘンリー5世
 19. Julius Caesar/ ジュリアス・シーザー(1599-1600)
 20. As You Like It/ お気に召すまま
 21. Twelfth Night/ 十二夜
 22. Hamlet/ ハムレット(1600-1)
 23. The Merry Wives of Windsor/ ウィンザーの陽気な女房たち
 24. Troilus and Cressida/ トロイラスとクレシダ(1601-2)
 25. All's Well that Ends Well/ 終わりよければすべてよし(1602-3)
 26. Measure for Measure/ 尺には尺を(1604-5)
 27. Othello/ オセロ
 28. King Lear/ リア王(1605-6)
 29. Macbeth/ マクベス
 30. Antony and Cleopatra/ アントニーとクレオパトラ(1606-7)
 31. Coriolanus/ コリオレーナス(1607-8)
 32. Timon of Athens/ アテネのタイモン
 33. Pericles/ ペリクリーズ(1698-9)
 34. Cymbeline/ シンベリン(1609-10)
 35. The Winter's Tale/ 冬物語(1610-1)
 36. The Tempest/ テンペスト(1611-2)
 37. Henry [/ ヘンリー8世(1612-3)





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