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それでも 私の初恋が また私を呼んだらどうしたらいい?
But what if I heard my first love calling me again?
「Flight」より/Sara Teasdale
○ 第11話〜第20話の紹介
○ ( 付録)聖母探求ドラマとしての「冬のソナタ」
第1話〜第10話までの紹介は、 こちらです。
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第11話 偽り
かぎりなく深き別れの悲しさは 思ふ袂(たもと)も色変わりけり
式子内親王 |
もう私の帰る場所は決めてしまいましたから
信号が壊れていても 私はここを渡らないといけないんです
もしここで遠回りをしたら また迷うかもしれないから
(壊れた信号機の横断歩道でミニョンに/ユジン)
(ストーリー)
自分を必要としているサンヒョクをそのままにしておけず、ユジンはミニョンを愛しつつも、サンヒョクとの結婚を決めた。
退院後、職場に復帰したサンヒョクは、カン・ミヒのリサイタル会場で、父とミヒがチュンサンのことを話しているのを見かけ、驚く。ミヒは、サンヒョクの父から、ユジンの父の死を聞かされて衝撃を受け、コンサート後倒れてしまった。ユジンに去られ傷心のミニョンは、自分の過去について疑念を抱き始め、母を問い詰めるがはぐらかされてしまう。
チェリンからミニョンがユジンのことを思い切れないでいて、何とかして欲しいと言われたユジンはミニョンと会い、ポラリス・ネックレスを返した。サンヒョクは、ユジンがミニョンと会っているのを目撃していた。別の日、ユジンがサンヒョクの車の中でジョンアから電話で誘われたバーに行くと、キム次長とミニョンがいた。二人の出会いを誤解したサンヒョクは怒って、ユジンを置いて車で去ってしまった。
(エピソード)
- はしゃぐサンヒョク
- 驚異の復活を遂げたサンヒョク。愛のチカラの偉大さを証明したエピソードでした。わかりやすい性格だけど、もう少し節度が欲しいところです。ユジンの浮かない顔が目に入らないのかな。結婚したら二人で留学したいなんて、良くも悪くも坊ちゃん育ちということなんだろう。
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- 落ち込むミニョン
- 仕事が手につかない、ユジンの幻覚を見る、降雪機の下で泣く、酔ってユジンのアパートの前に佇む...相当な重症です。でも、自分がよけいなお節介をした結果なんだから男らしくあきらめるしかありません。今がミニョン奪回のチャンスと、チェリンがユジンに駄目押しをさせようとあおり、二人を会わせたのは、またまた失敗でした。
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- 割り切るユジン
- 心から愛しているわけではないサンヒョクとの1ヵ月後に迫った結婚は、ユジンにとってうれしいものではないにせよ、ミニョンのことはきっぱりと思い切り、後悔はしていない様子です。真にタフなのは女性であるという永遠の真理がここでも繰り返されています。母性の人、ユジンにとって、甘ちゃんのサンヒョクの面倒を見るというのは、実は嫌ではないはずで、結婚したらしたで、しっかり者の奥さんになって、それなりに幸福な家庭を築き上げたのではないでしょうか。
(資料)
- ユジンの涙: 1回(累計23回)
- @ ジョンアの運転でソウルに向かう車の中で
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第12話 10年前の真実
かへりこぬ昔を今と思ひ寝の 夢の枕に通ふ橘(たちばな)
式子内親王 |
いきなり心臓がどきどきして 胸が苦しくなるような感覚
チュンサンといた時みたいに胸が暖かくなる感覚を ミニョンさんは呼び起してくれたの
不思議よね どうしてなんだろう
ミニョンさんとチュンサンは確かに別人のはずなのに 私の心は同じ何かを感じているの
(チンスクに/ユジン)
(ストーリー)
サンヒョクはユジンに謝り、二人は和解した。ユジンの亡き父の誕生日、サンヒョクの父から、かつて愛した人の死を聞いたカン・ミヒは墓の前に立っていた。彼女とすれ違いにユジンとサンヒョクが、結婚の報告を兼ねて墓参りに訪れ、ユジンからミヒがミニョンの母であることを聞かされたサンヒョクは、ミヒとチュンサンとミニョンの関係に疑念を抱いた。サンヒョクは、ユジンを春川の実家に残し、高校でチュンサンの記録を閲覧し、彼の母がミヒであること、すなわち、チュンサン=ミニョンであることを知った。
サンヒョクより一足先に高校でチュンサンの家の住所を調べたミニョンが、その家を訪れ、母ミヒと鉢合わせとなった。自分がチュンサン本人であることを知ったミニョンはソウルに戻り、主治医と会い、10年前、事故で命を取りとめたが記憶を失ったチュンサンに、ミヒの要請でミニョンとしての記憶を植えられたことを知った。
ユジンとサンヒョクの結婚祝に高校の同級生達が集まったレストランに、ミニョンがやって来て、気まずいムードが漂った。途中で席を立ったミニョンが店を出ると、遅れてやって来たユジンと出くわし、ミニョンは自分がチュンサンであることをユジンに告げた。
(エピソード)
- 明かされた真実
- 1ヵ月後に迫ったユジンとサンヒョクの結婚式、ユジンの心を揺さぶり、これをひっくり返せるのは、もはやミニョン=チュンサンの切り札しか残っていないでしょう。それにしても、息子に別人の記憶を新たに植え付けるなんて、カン・ミヒはなんともややこしいことをしたものです。さすが芸術家というべきか。
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- あせるサンヒョク
- 真実を知るまでは、黙って僕についてくればいいんだなんてユジンに言っていた(よく言うよ)サンヒョクですが、またまた危機に直面。ミニョンに会いに行き、そっとしておいて、ユジンを諦めてとひざまずいて嘆願していました。二度も同じ手は使えないぞ。
(資料)
- ユジンの涙: 0回(累計23回)
- 周囲の大騒ぎに気づかず(おっとりなんです)、すっかりサンヒョクとの結婚に気持が向いているユジンは、今回は泣くチャンスがありませんでした。でも次回はまた大荒れの模様。
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第13話 追憶
始めなき夢を夢とも知らずして この終わりにや覚め果てぬべき
式子内親王 |
ミニョンさんはミニョンさんとして チュンサンはチュンサンとして
私は それぞれを愛していたんです
(ミニョンに/ユジン)
(ストーリー)
自分がチュンサンであるとのミニョンの言葉をユジンは信じられなかった。サンヒョクに二度とミニョンに会わないでと乞われたユジンは、ミニョンさんとはもう会わない、たとえチュンサンが生きていたとしてもサンヒョクのそばを離れないと約束した。
家に戻ったユジンに、会って話をしたいとミニョンから電話がかかるが、ユジンは、ミニョンさんはチュンサンではありません、もうお別れですと言って電話を切った。
ユジンと会えなかったミニョンは、チュンサンの家で一夜を明かした。翌朝目覚めると母ミヒが来ていた。母から記憶移植のいきさつを聞いたミニョンは、「あなたに父親をあげたかった」という当時の母の心情を理解した。
ソウルに戻ったミニョンはサンヒョクと会い、近いうちに自分はアメリカに行き、もう韓国には戻らないと告げた。ユジンを幸せにしてくださいというミニョンの言葉に、サンヒョクは「チュンサン、死なずに生きててくれてありがとう」と手を差し伸べた。
ユジンは、サンヒョクやチェリンが、ミニョンとチュンサンのことで自分に何かを隠しているとの疑いを持ち、ミニョンに聞きただそうと彼の泊るホテルに向かった。
(エピソード)
- ミニョンのアイデンティティの危機
- ユジンが真に愛するチュンサンとして生きる為、そして何よりも本当の自分自身として生きる為には、肝心要(かなめ)の記憶がなく、今まで自分が本当だと信じていたミニョンとしての過去の記憶は、意図的に植え付けられた偽(にせ)の記憶でした。しかしながら、たとえ偽りの記憶でも、それを捨て去ることが出来ない以上、それにすがってアメリカでミニョンとして生きていこうという彼の決断は正しいと思います。
- それにしても、「ミニョンさんはチュンサンではありません。まるで違う人です」に重ねるユジンの以下の言葉は、ぐさぐさとミニョンの胸に突き刺さったことでしょう。よく立ち直れました。
- ・チュンサンは、私を"ユジンさん"なんて呼ばなかった。
- ・チュンサンは、感情を押しつけることも、心の傷をを掻きむしるようなことはしなかった。
- ・チュンサンは、私を好きだと言うことすらできなかった。
- ・ミニョンさんは余裕があるけど、チュンサンはいつも必死だった。
- ・ミニョンさんは堂々としているけど、チュンサンはどこか危なくて見てると不安だった。
- ・ミニョンさんは明るく笑えるけど、チュンサンはそんな風に笑えなかった。
- (駄目押し)ミニョンさんが、私をサンヒョクのところに行かせたんでしょ。
- ユジンも怒るとこわい。でも、眦(まなじり)を決してきりっとしたとこも素敵です。
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- 記憶移植の背景
- 事故で記憶を失ったチュンサンにミニョンの記憶を移植した訳を、母のミヒは、父親がいなくて不幸だったチュンサンに父親をあげたかったからと語りました。確かにチュンサンは父を捜していたけれど、彼が不幸だったのは、父がいなかったからということ以前に、愛する母親がいつも不在であったためではなかったかと思います。
(資料)
- 放送室で読まれた詩
- 放送部のユジンの後輩が読み上げる詩は、アメリカの女性詩人セーラ・ティズデール
Sara Teasdale(1884-1933)が、1917年に発表した詩集『Love
Songs』の中に収録されている『The Flight』からの抜粋です。日本では余り知られていない詩人だと思いますが、とてもロマンティックないい詩です。韓国ではポピュラーなんだろうか。詩集『Love
Songs』の全文をこちらで参照できます。
- オリジナルの詩『The Flight』の全文に、ドラマの中で読まれた前半の部分と、後半の試訳を併記してみました。
The Flight
Look back with longing eyes and know that I will follow,
Lift me up in your love as a
light wind lifts
a swallow,
Let our flight be far in sun
or blowing rain
--
But what if I heard my first love calling
me again?
Hold me on your heart as the brave sea holds
the foam,
Take me far away to the hills
that hide your
home:
Peace shall thatch the roof and
love shall
latch the door--
But what if I heard my first
love calling
me once more? |
飛翔 どうか いとしいその目で振り返って ここにいる私を見つけてください
あなたの愛で 私を奮い立たせてください つばめを運ぶそよ風のように
太陽のように 嵐のように 私たちをどうか遠くへ運んでください
それでも 私の初恋が また私を呼んだらどうしたらいい?
(ドラマの中で読まれた部分)
どうか あなたの胸に私を抱いてください 雄大な海が泡を抱くように
はるか遠くの丘へ私を連れて行ってください
丘の向こうにはあなたの家があり
私たちの幸せが屋根をふき 愛がドアの錠をかけるでしょう
それでも 私の初恋が また私を呼んだらどうしたらいい?
(後半部分の試訳) |
- ユジンの涙: 2回(累計25回)
- @ ミニョンとの電話で
A 高校の音楽室で
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- ミニョンの涙:2回
- @ ユジンとの電話で
- A チュンサンが録音したテープを聞いて
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第14話 二度目の事故
浮雲を風にまかする大空の 行方も知らぬ果てぞ悲しき
式子内親王 |
生きてたくせに 私を忘れるなんて
私はひとつも忘れてないのに
全部覚えてるのに
(ミニョンに/ユジン)
(ストーリー)
ユジンは、ミニョンの泊るホテルまで来たが、結局ドアのベルを押さずにアパートに戻った。
翌日ポラリスに出社したユジンは、ジョンアからミニョンが今日のフライトでアメリカへ発つことを知らされ、彼から預かった「初めて」のCDと手紙を渡された。手紙を読んだユジンはミニョンがチュンサンであることを悟り、空港に急いだ。
出発ロビーで、「チュンサン!」の呼びかけに振り向くミニョン、二人は固く抱きあった。空港近くのホテルで語り合う二人、チュンサンの記憶がないミニョンにユジンの気持が空回りし、疲れたユジンは眠ってしまう。寝顔を見守るミニョン。
ミニョンはサンヒョクに電話でユジンの所在を告げ、ユジンに置手紙を残して翌朝再び空港に向かった。目を覚ましたユジンは、ミニョンを追って空港へ走った。道路の向こう側にミニョンを見つけ、道路を渡ろうとするユジンに猛スピードのトラックが接近、ミニョンは身を挺してユジンを庇い、意識不明となり病院に運ばれた。
意識が戻らないミニョンに、何日も付き添うユジン、そんな彼女を励ますサンヒョクだった。やがてミニョンは意識を取り戻し、ユジンに呼びかけた。
「ユジン」と。
(エピソード)
- ユジンとチュンサンの再会
- 大ラスのクライマックスが静的なものであったとすれば、今回は動的なクライマックスで、こちらのほうがインパクトは大きかったと思います。ユジンもミニョン(チュンサン)も涙、涙。10年間、その死を信じることができなかったチュンサンの生きた姿に出会うことができたユジンの心情は想像するに余りあります。疲れきって熟睡する眠り姫ユジンの見た夢はどんなだったろう。
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- 本当にこうやって会えるなんて何だか夢みたい。
- チュンサン、チュンサン、チュンサン
- 私、こうして声に出して名前を呼ぶのが夢だったのよ。
- 会いたくなる度に、声に出して名前を呼びたかったけど、
- もし呼んでも返事がなかったら、本当にいなくなっちゃった気がして呼べなかったの。
- どうしても私、死んだとは信じたくなかったから。
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- ミニョンの置手紙
- 眠るユジンをホテルに残し、空港へ向かうミニョン。このままでは自分にチュンサンの面影を求めるユジンと、現実のミニョンとしての自分の思いの落差が、二人の遠からぬ破局を招くことを悟ったミニョンの苦渋の決断は仕方がなかったでしょう。
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- 一緒に過ごした思い出を失ったら、たとえ僕がチュンサンでも、それは何の意味もないただの名前にすぎません。
- 失ってしまった僕の過去に、あなたがいてくれたことを感謝します。心から、心から。
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- 二度目の交通事故
- 本当に気の毒なミニョン(チュンサン)だけど、これも記憶を取り戻すため、ハッピーエンドのためには仕方のない展開でしょう(しかし荒っぽいね)。満身創痍の身に後遺症が残らなければいいのだけど...(伏線を張ったりして)
- サンヒョクのときもそうだったけど、ユジンには看護姿が似合います。やはりこの人は母性の人なんだと思う。
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- もう私、恐がらないことにしたの これからはもっと強くなるわ。
- もうあなたから二度と離れないからね こうやってあなたの手をつかんで離さないわよ。
- だからあなたも私の手を離さないで。
(資料)
- ユジンの涙: 7回(累計32回) この記録は多分破られないでしょう
- @ ミニョンが泊るホテルのエレベーターの中で
A 空港でミニョンと会って
B ホテルの部屋でミニョンと話して
- C 病院のソファーで
- D 病室で
E 病院で母と会って
- F 病室で
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- ミニョンの涙:3回
- @ 空港でユジンと会って
- A ホテルの部屋でユジンと話して
- B 病院で意識が戻って
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第15話 過去への旅路
はかなくて過ぎにし方を数ふれば 花に物思ふ春ぞ経にける
式子内親王 |
もう思い出探しはやめましょう
あなたが思い出せなくても困ることなんかないわ
私が愛しているのは思い出の中のあなたじゃない
今 目の前にいるあなただから
(思い出の湖でチュンサンに/ユジン)
(ストーリー)
意識が戻ったチュンサン(ミニョン)は、断片的ながら10年前の記憶を取り戻していた。それを知ったサンヒョクは、自分は結婚を諦めるのでチュンサンの元に行くようにユジンに促し、両親にも結婚の解消を告げた。
退院したチュンサンはマンションに引っ越すことになり、ユジンも甲斐甲斐しく手伝っていた。そんな時、高校時代の担任パク先生からの連絡があり、ユジンがチュンサンを連れてレストランに行くと、仲間たちも来ていた。チュンサンを見たチェリンが店を飛び出すと、彼女を追ってサンヒョクも出て行き、残ったヨンググやチンスクのチュンサンを見る目は厳しかった。
チュンサンは早く記憶を取り戻すために、翌日ユジンを誘って、春川の二人にとって思い出の場所に出かけた。遅刻して一緒に乗り越えた高校の塀、初めてデートした湖。遅々たる記憶の回復にあせりを隠せないチュンサンに、ユジンは言った。もう私のために思い出を探すのはやめましょう、私は今のあなたを愛しているのだから。
次の日、ユジンから聞いていた手袋のことを思い出したチュンサンは、再びユジンを連れて春川のチュンサンの家に向かった。家の中で手袋を見つけたチュンサンは、10年前に借りた手袋をユジンに返した。その夜、二人は10年前の大晦日の待ち合わせ場所にやって来た。雪が舞い始めた雑踏でチュンサンは、あの日ユジンに伝えたかった言葉を思い出し、ユジンに告げた。「ユジン、愛してる」
(エピソード)
- サンヒョクの決断
- サンヒョクにとってユジンを諦めるということは、身を切るより辛い選択だったに違いないけど、ユジンのチュンサンと自分を見る眼差しが違うことにあらためて気づかされた彼は、自分の執着心よりユジンの幸せを優先させなければという思いが高まったのでしょう。サンヒョクよ、見直したぜ。
ユジンへの別れの言葉は泣かせます。
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- 僕が夜遅く電話したり、会いに行ったり、助けを求めても相手にしないで
- やさしい笑顔も涙も僕に見せないで
- 悲しませて本当にごめんよ 君を泣かすのはこれで最後だから
- いつも一緒にそばにいてあげるって約束したのに守れなくてごめん
- チェリンの嘆き
- ミニョンもチュンサンもサンヒョクも、皆ユジンのことばかり好きで、誰も自分を必要としてくれないと、やけ酒をあおっているチェリンを見ていると、さすがに気の毒になります。
ミニョンやサンヒョクが求めている理想的な女性のタイプが、たまたまユジンだったのであって、チェリンの魅力が否定されているわけではないことに早く気づいて欲しい。君には君に合った男性が、世の中にはごまんといるのだから。
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- 思い出探し
- チュンサンとユジンが再訪する春川の思い出の場所それぞれで、現在と10年前の場面が交互に映し出され、”あのすばらしい愛をもう一度”と僕らも切に願うのでした。
(資料)
- ユジンの涙: 3回(累計35回)
- @ チュンサンの病室で
- A サンヒョクと会って
- B チュンサンの春川の家で
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第16話 父の影
ながむれば我が心さえ果てもなく 行方も知らぬ月の影かな
式子内親王 |
僕は一人の女性を愛しています
その人とおじいさん おばあさんになるまで一緒に過ごしたい
その人と僕によく似た子供たちの父親になりたい
愛する人と子供のために 僕が暖かい手となり 丈夫な足となりたいんです
(教会での祈りの言葉/チュンサン)
(ストーリー)
インタビュー収録の為に放送局にやって来たカン・ミヒは、廊下でサンヒョクに会いに来たユジンの母と出会った。サンヒョクから、かつて自分の恋人だったヒョンスの妻がユジンの母であることを聞かされ、ミヒは驚いた。
チュンサンの誕生日に、彼のマンションには高校時代の仲間たちやキム次長、ジョアンらが集まり、チュンサンの奇跡の復活を祝った。サンヒョクは花束を持って二人への祝福の言葉を伝えに寄ったが、チェリンはついに現れなかった。
チュンサンはチェリンとの和解の為、彼女のブティックを訪れ、過去のいきさつを謝罪するが、私に必要なのはミニョンさんだけと、納得しないチェリンだった。
チュンサンは、自分が春川に転校したのは、父親を探すためであったことをユジンから聞かされ、10年前の交通事故の直前に、自分が父親について何か重要なことに気づいたことを思い出しつつあった。
一方、サンヒョクの父もチュンサンとミニョンが同一人物で、その母がミヒであることを知り、海外公演中のミヒに電話でチュンサンの父親が誰なのか問い詰めるが、ミヒから答えは得られなかった。帰国したミヒは、春川のユジンの母の家を訪れ、チュンサンが自分の息子であることを告げた。
夜、散歩していたユジンとチュンサンはパイプ・オルガンの音に誘われ教会へ入ると、結婚式の予行演習が行なわれていた。二人きりになった教会で二人は祈りを捧げ、チュンサンからの結婚のプロポーズに、ユジンは頷(うなず)いた。
(エピソード)
- カン・ミヒの独壇場
- ミヒが、高校生のチュンサンから問われるままに父親の名を明かしてさえいれば、こんなややこしいドラマにはならなかったし、10年後、サンヒョクの父からの電話に答えていれば、ドラマ3回分くらい短くできたのにと思います。しかし、ミヒがチュンサンとユジンの結婚に猛反対する理由は何なのだろう。昔の恋人の面影を残すユジンが近くにいることに耐えられないと感じたからだろうか。
- 教会の二人
- ユジンに促されて祈るチュンサンはともかくとして、ユジンの所作からは日常的に祈りの習慣があるように思えるけど、彼女はクリスチャンなんだろうか。そうした意味で、なかなか興味深い場面でした。
祝ポラリス・ネックレス復活。一時は無用の長物と化したポラリス・ネックレスでしたが、再びユジンの首の定位置に収まりました。
(資料)
- 関連音楽
- ・ヴォカリーズ op.34-14/ラフマニノフ
- オーケストラをバックに母音のみで歌われるロマンティックな曲。ドラマの初めの方でサンヒョクが担当するラジオ番組から放送されていたのと、ラスト近くでユジンとチュンサンが二人で入った教会の場面でBGMとして使われていました。ピアノやヴァイオリンへの編曲版もポピュラーな名曲です。
- ユジンの涙: 0回(累計35回)
- 教会の場面では、チュンサンの祈りの言葉に、ほとんど涙が溢れそうでしたが...惜しかった。ノーカットのオリジナル版では、こぼれているかも知れません。
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第17話 障害
生きてよも明日まで人はつらからじ この夕暮をとはばとへかし
式子内親王 |
私はここがずっと懐かしかったわ
雪も 冬の木枯らしも イ・ミニョンだったあなたも
ここはまだ冬なのね
(久しぶりのスキー場でチュンサンに/ユジン)
(ストーリー)
チュンサンとユジンは、建設プロジェクトの進捗確認のため久しぶりにスキー場に出かけた。ロープウェイで山頂に登りカフェ建設現場を視察した後、二人は10年前のように雪にまみれて遊んだ。
ユジンの母はサンヒョクの父キムと会い、カン・ミヒが自宅に訪ねてきたこと、ミヒがチュンサンとユジンの結婚に反対していることを伝えた。ミヒが反対する本当の理由を察したキムは、二人の結婚は許せないとユジンの母に話した。
チュンサンはユジンを連れてスキー場から春川のユジンの自宅に行き、ユジンの母に二人の結婚の許しを求めたが、ユジンの母の頑なな態度を崩す事ができずにチュンサンは帰っていった。母はユジンに、自分と結婚する前にユジンの父とミヒは婚約までした仲だったことを告げ、ミヒは絶対に二人の結婚を認めないでしょうと言った。
スキー場に戻ったユジンから、母ミヒとユジンの父の過去のいきさつを知り驚くチュンサン。彼はソウルに戻り、サンヒョクの父を研究室に訪ね、偶然に、母を挟んで、サンヒョクの父とユジンの父と三人が並んで映っている写真を見つけ、10年前に自分が見出した事実をすべて思い出した。母が愛していた男性がユジンの父であったこと、そして自分の死んだ父は... 自分とユジンの父親が同じなのかと問いかけるチュンサンに、ミヒは「ごめんなさい」と言うばかりだった。
サンヒョクは、父がユジンとチュンサンの結婚に反対していることを知り、自分とユジンのことはもういいんだと父に食い下がった。父は、本当の理由を話せば二人の結婚を止めてくれるかと言い、サンヒョクにユジンとチュンサンが兄妹であることを告げた。サンヒョクは家を飛び出し、車でスキー場に向かった。
スキー場の教会では、チュンサンとユジンの二人きりの結婚式が始まろうとしていた。
(エピソード)
- 雪遊び再び
- 雪にまみれて遊んでいるときには、10年前の初雪デートのときのチュンサンとユジンに戻っていたんでしょう。仕事のついでだったということもあり、雪のかけっこをするぐらいで(結構盛大にやってましたが)、やや工夫に乏しいということはありましたが、二人とも屈託なく、とても楽しそうでした。
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- 明らかにされた真実(?)
- カン・ミヒの一言、沈黙により、チュンサンとユジン兄妹説が確固とした事実であるかのように一人歩きしてしまった感があります。このことに関しては、当事者としてミヒしか証言できないわけで、いくら海外公演で忙しいとはいえ、息子チュンサンの苦悩を考えたら、無責任な言動はできないはずです。チュンサンの記憶操作といい、今回のことといい、彼女には母親としての自覚が足りないと言う他はありません。
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- 遅れる眠り姫、ユジン
- ミニョン=チュンサン判明のときもそうだったけど、今回のチュンサン異母兄疑惑の大騒動においても、ユジンの情報認知は周囲から1テンポ遅れてしまっているのでした。
- このドラマにおいては、時間に、そして情報に「遅れる」ということが、ユジンという女性を特徴づける重要な要素(キーワード)となっていることは明らかだと思います。うがった見方をすれば、ユジンという現代的な女性像からはやや外れた(遅れた)古風な意識を持つ女性を造形するにあたり、こうした特性を意図的に付加しようということがあったのではないかな。
- ユジンのもうひとつの眠り姫としての特性も、大事な時にスヤスヤ眠る→目をつむる、あえて現実を直視しようとしない、気づこうとしない、ということと無縁ではないのではないかとも思えます。
(資料)
- 関連音楽
- ・ピアノソナタ第17番「テンペスト」op.31-2/ベートーヴェン
- 10年前に、チュンサンがユジンの家のアルバムに問題の写真を見つけた場面でバックに流れていましたが(第2話)、今回も同様の場面で使われています。
- ・24の前奏曲op.28-15「雨だれ」/ショパン
- チュンサンとユジンが語らうスキー場のカフェテラスにBGMとして流れていました。24曲の前奏曲の中では最もポピュラーな曲で、「雨だれ」とは、美しいメロディが雨だれに似た単調な連続音の上に奏されることから付けられた俗称で、ショパン自身が命名したものではありません。
- ・ヴォカリーズ op.34-14/ラフマニノフ
- 前回同様、教会の場面に登場。
- ユジンの涙: 0回(累計35回)
- ということで、まだユジンはとんでもない事実(?)に気づいていないので、とりあえずは安泰なのでした。
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第18話 運命のいたずら
雲のはて波間をわけてまぼろしも 伝ふばかりの歎きなるらん
式子内親王 |
誰からも祝福されなくていい みんなから反対されても私は平気よ
そんなこと全然悲しくないわ
世界中の人が反対したとしても 私少しも悲しくない
チュンサンの愛情さえあれば 他の人の祝福なんて必要ないわ
(サンヒョクに/ユジン)
(ストーリー)
ユジンが異母妹と知りつつ、二人だけの結婚式を挙げようとするチュンサンの誓いの言葉の最中にサンヒョクが教会に入ってきて、ユジンを無理やり連れ出し彼女のアパートに連れ帰った。理由を知るチュンサンは、それを引き止めることができなかった。サンヒョクはユジンに、やっぱり自分は君を諦めきれない、周囲の皆も反対している、だからチュンサンと別れてくれと、真の理由を告げずに説得するが、ユジンの意志は揺るがなかった。
ユジンはチュンサンと連絡をとろうとするが、彼はマンションにも会社にも戻っていなかった。カン・ミヒの事務所を訪れたユジンに、ミヒは冷たい言葉を浴びせるだけだった。
ミヒはチュンサンにもユジンと別れるよう迫り、追いつめられたチュンサンはユジンを冬の海辺に連れて行った。海辺の民宿に泊り二日目の朝、ユジンが目覚めるとチュンサンは姿を消していた。外には、チュンサンから事前にユジンのことを頼むと託されていたサンヒョクが待っていた。
サンヒョクが別れたはずのユジンと会っているのを見かねたサンヒョクの母がユジンのアパートを訪れ、サンヒョクとこれ以上関わることは許さないと警告した。サンヒョクの母は話しの中で、チュンサンとユジンが異母兄妹であることを洩らしてしまい、衝撃を受けたユジンはアパートを飛び出した。
(エピソード)
- チュンサンとサンヒョクの友情
- サンヒョクがユジンを教会から拉致してアパートへ連れ帰り、わけがわからず納得できないユジンを残してアパートを出ると、外にチュンサンが立っていました。そのあと二人で交わす会話からは、同じ女性を深く愛してしまった二人の間に、ライバルという関係を超えて、同志的な友情が芽生えたことが窺えます。愛するユジンの幸せのために、自分たちに何ができるかという一点で結びついた友情は崇高ですらあります。
-
- 海辺の恋
- チュンサンからの季節外れの海への突然の誘いは、ユジンにとってはうれしい驚きであり、チュンサンとの愛を一層深める出来事でしたが、チュンサンにとってはユジンと過ごす最後の機会でした。二人の未来のために新たな思い出を作ろうとするユジンと、辛い記憶を残さないようにと念ずるチュンサン。二人の思いは違っていても、それゆえにこそ、海辺の恋のシーンは美しく、はかなく、記憶に残るものでした。そして、二人の愛の情景は、佐藤春夫の詩「海辺の恋」をも思い起こさずにはいられませんでした。
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(資料)
- 関連音楽
- ・弦楽とオルガンのためのアダージョ ト短調/アルビノーニ
チュンサンとユジン、二人きりの教会での愛の誓いのシーンに流れていました。
- アルビノーニは、18世紀前半にヴェネツィアで活躍していましたが、この曲は、アルビノーニの旋律を後世の人が編曲したものです。アルビノーニというと、この曲だけが知られているけど、ヴァイオリン協奏曲やオーボエ協奏曲などが主体の作品9や作品10の協奏曲集も魅力的な作品です。
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- ユジンの涙: 4回(累計39回)
- @ サンヒョクに送られ、彼女のアパートで
- A アパートで、チュンサンと会って
- B サンヒョクから、チュンサンが別れると言われて
- C サンヒョクの母から、チュンサンと兄妹と聞かされて
-
- チュンサンの涙
- @ 母にユジンと別れなさいと言われ
- A 夜の海にネックレスを投げて
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第19話 父と子
夢のうちも移ろふ花に風吹きて しづ心なき春のうたたね
式子内親王 |
チュンサン 愛してるわ
今までだってずっと愛してたし これからもずっと変わらないわ
でも これって悪いことかしら 悪いことなの?
そうよね 悪くないわよね 私も悪いことじゃないって思ってるわ
たとえ誰に何と言われようと 私たちの愛は恥ずかしいことじゃないわ
恥ずかしくなんかないわ あんなに胸がときめいて 心臓がどきどきしたんだから
あんなに辛い思いも苦しみも耐えてきたのよ
私にとって何よりも大事な思い出だもの
私 あなたを本当に愛してたのよ それは忘れないでね
私はどんなことでも全部覚えておく 私の思い出だもの
ひとつ残らず全部 全部胸に刻んでおく
だからあなたも 私のこと覚えていてね
それだけでいいの 私はいつまでもこの思い出を大切にとっておくから
覚えておくよ たとえ何があっても君のこと忘れない
絶対忘れないよ
ありがとう 本当にありがとう
僕もありがとう ユジン
(公園で/ユジンとチュンサン)
(ストーリー)
サンヒョクの母から驚愕の事実を聞いたユジンは、アパートを飛び出しチュンサンのマンションに向かった。チュンサンはいなかったが、居合せた母のミヒに真実を確かめようとするユジンに、ミヒは「チュンサンのことは忘れて」というばかりだった。
マルシアンでチュンサンに会うことができたユジンに、チュンサンは「君とは別れた。君を愛していない」と冷たく突き放すが、ユジンが兄妹の事実が本当なのか何度も聞きただすと、チュンサンは涙を流して頷いた。
チュンサンのマンションに、サンヒョクの父が訪ねて来たとき、チュンサンは意識を失って倒れ、病院に運ばれた。医師からチュンサンに事故の後遺症があると告げられたサンヒョクの父は、医師にチュンサンと自分の血液検査を依頼した。
チュンサンとの愛が不可能であることを悟ったユジンは、全てをやり直すために会社を辞めてフランスへ留学する決意を固め、チュンサンと公園で待ち合わせ、別れを告げた。
病院での検査結果から、チュンサンが自分とミヒとの間の子であることを知ったサンヒョクの父の問い詰めに、ミヒも事実を認めた。
マルシアンで再度倒れたチュンサンは、医師から早く手術をしないと危険であり、手術したとしても失明する可能性があると宣告された。さらに、マンションに訪ねて来たサンヒョクの父から、自分の息子だと告げられ、ショックを受ける。
サンヒョクは、フランスへの留学を決め自分から離れていってしまうユジンを諦めきれず、ユジンに、もう一度やり直そうと言った。
(エピソード)
- ユジンの強さ
- チュンサンとの愛が、これ以上はないというくらいの絶望的な状況に陥っても、ただ不幸な運命の巡り合わせを嘆いて涙を流しているだけでなく、辛い過去をリセットして新たな気持ちで出直そうというユジンの前向きの姿勢が、チュンサンとの別れの決断、ポラリスを退社してのフランス留学の決意に現れています。
心身症で瀕死のサンヒョクを救う為に、チュンサンとの愛を諦めてサンヒョクと再婚約したときもそうだったけど、この人は涙もろい外見とは相反する内面的な強さと精神の気高さを持っています。そうした心の強さから、たとえ困難な状況に置かれても、その中で最善の行動を選択しようとする積極的な意志が生まれるのでしょう。 お互いに深く愛し合いながらも別れなければならない心の内を、チュンサンに切々と吐露する彼女の別れの言葉は感動的でした。女性らしい優しさ、愛情深さと共に、精神面での強さを兼ね備えたユジンに、チュンサンやサンヒョクがメロメロになってしまうのは、これは無理もないことだと思います。
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- チュンサンの絶望
- ユジンとは兄妹ではないことが分かり、本来なら喜ぶべき状況であるのに、事故の後遺症により失明の可能性が高いことが判明し、ユジンと一緒になることが将来彼女に大きな負担をかけ、結果的に不幸にするかもしれないことを知ったチュンサンの思いは、いかばかりでしょう。おそらくは、さだまさしさんの「解夏(げげ)」の主人公のような心境だと思うけど、最後の最後まで苦悩しなければならないヒーローも大変だな。
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- サンヒョクの夢 再び
- チュンサンとユジンが異母兄妹であったという事実により、二人が結びつく可能性が万が一にもなくなったことで、サンヒョクがユジンとの愛をもう一度と念ずることは自然なことだったと思います。サンヒョクには残念な結果になってしまったけど。
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- サンヒョクの父の思い
- 慈愛に満ちた表情でチュンサンを見つめるサンヒョクの父は、チュンサンが自分の息子であるとの事実を喜んで受け入れたようでした。明らかにされる事実が自分の家庭にもたらす波紋を考えたとき、手放しでは喜べないと思うのだけど、彼にとって、チュンサンの存在は、ミヒとの愛の証(あかし)であり、たとえその愛が一方的なものであったとしても、彼にとってミヒへの愛は、何にも増して掛け替えのないものであったのでしょう。
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- カン・ミヒの思い
- 今までの理不尽な言動から、随分と自己中心的な女性だと思っていたけど、彼女は過去にユジンの父への愛を拒絶されたことによる痛手を現在に至るまで克服することができなかった、いわば愛の犠牲者だったのでした。過去に決別することができなかったという点で、彼女はユジンのような心のタフさを持っていなかったということか。
(資料)
- ユジンの涙: 5回(累計44回)
- @ チュンサンのマンションでミヒと会って
- A マルシアンでチュンサンと会って
- B 春川の自宅で母と会って
- C 父の墓前で
- D 公園でチュンサンと会って
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- チュンサンの涙
- @ マルシアンでユジンと会って
- A 不可能の家の模型を見ながら
- B ピアノスタジオで母と会って
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第20話 冬の終わり
春くれば心もとけて淡雪の あわれふり行く身をしらぬかな
式子内親王 |
はじめて見た君はほんとうにきれいだった
こんなきれいな子がいるんだなあって驚いたんだ
ポラリスのチョン・ユジンと出逢ったときも 生き生きと働く君の姿 すごくまぶしかった
君はあんなに美しく輝いていたのに
僕は君の輝きを守れなかった 悲しませただけだった
そんなことないわ
あなたと会えて本当に幸せだった
(喫茶店で/チュンサンとユジン)
(ストーリー)
サンヒョクのもう一度やり直したいとの言葉を、今はチュンサンのこと以外は考えられないと、ユジンは受け入れなかった。
サンヒョクの父は、ユジンを諦められないというサンヒョクに、チュンサンは自分の息子であり、チュンサンとユジンが兄妹ではないことを明かした。父の言葉に衝撃を受けたサンヒョクは家を飛び出した。
翌日、サンヒョクはマルシアンを訪れてチュンサンに会い、自分も真実を知ったことを告げ、チュンサンからユジンに、自分がパリ留学に同行することを説得するよう詰め寄った。
自分の病状からユジンを諦めたチュンサンは、ユジンの幸せのためにもサンヒョクの力になろうと、ユジンと会いサンヒョクとの留学を頼むが、ユジンはただ涙を流すだけだった。
チュンサンがアメリカへ出発する日、サンヒョクは病院からの電話でチュンサンの病気を知り、チュンサンがユジンの未来を自分に託したわけを悟った。サンヒョクはユジンに真実を告げ一緒に空港に向かったが、チュンサンの乗ったニュヨーク行きの便は出発した後だった。
ユジンがパリ留学に向かう日、サンヒョクはユジンにニューヨーク行きの航空券を手渡すが、結局ユジンはパリに飛び立って行った。
3年後、帰国したユジンはポラリスで、かつて自分が設計した"不可能な家"の写真が雑誌に掲載されているのを知り、その家が建つ小さな島を訪れた。"不可能な家"は、ユジンからもらった模型を元にチュンサンが実現させたものだった。ユジンが家の中に入り海を臨む部屋に佇んでいると、外出していたチュンサンが戻って来た。視力を失ったチュンサンは、物音で部屋に誰かがいることに気づいた。
「どなたですか?」 チュンサンの言葉に振り返るユジン。言葉が出てこない。
「.....ユジン?」
「.....そうよ チュンサン」
「.....ユジン!」
二人の目から涙がとめどなく溢れた。
沈む夕陽を背景に固く抱き合う二人。
― 終 ―
(エピソード)
- チュンサンとサンヒョクの絆
- チュンサンとサンヒョクは異母兄弟であることが判明し、そのことも要因と思われますが、私心を超えて、互いにユジンの為に何をしてあげられるのか、という一点で二人の心は結びつくに至ったようです。
- サンヒョクがユジンに、僕は君を守りたいんだ、チュンサンのことを忘れろなんて言わない、君が一人で苦しむ姿を見たくないから僕を頼って欲しいと訴えた言葉は利己的な感情から発せられたものではなかったと思います。
- そして同様に、チュンサンがサンヒョクに向かって、これからユジンの力になれるのは自分ではなく、長くそばにいて見守ってあげられる君なんだと言って、ユジンとサンヒョクがやり直すのに手助けしようとしたことも、チュンサンの病気を知ったサンヒョクが、ユジンをニューヨークのチュンサンの元に行くよう促したことも、全てはユジンの幸福を願ってのことでした。
- こうした二人の行動の根底に流れているのは、韓国の長い歴史の中で培(つちか)われてきた儒教的精神なのだろうと想像されます。
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- ユジンのパリ留学
- ユジンがパリへの出発の日に、サンヒョクから手渡されたニューヨーク行きの航空券を使わなかったのは何故なのか。
- ユジンには、パリ留学を擲(なげう)ってチュンサンの元に行きたいという気持が何より大きかったに違いないけれど、それでもその気持を抑え込んでパリへと向かったのは、チュンサンがユジンに最後に語った言葉を大事にしなければと思ったからでしょう。
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- 僕たち 会うのはこれで最後にしよう
- あの海で幸せだった思い出を大切にしたいから 会うのは最後にしよう
- いい思い出だけ残したいんだ
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- 三年後
- チンスクとヨングクは結婚し、子供が生まれていました。チェリンも角がとれて丸くなったみたい(そう簡単には変わらないだろうけど)。帰国したユジンのキャリア・ウーマンぶりも以前より板に付いた感じがします。髪型のせいかな。キム次長とジョンアの仲が進展していなかったのは、唯一残念でした。"不可能な家"を建設するには、3年間の月日が必要だったんだろうな。
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(資料)
- ユジンの涙: 6回(累計50回)
- @ チュンサンにサンヒョクと一緒になってと頼まれて
- A チュンサンとの別れに
- B アパートの部屋に戻って
- C サンヒョクに真実を知らされて
- D 空港で
- E"不可能な家"で
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- チュンサンの涙
- @ ユジンとの別れに
- A "不可能な家"で
(観終わっての感想)
比類のない素晴らしいドラマでした。演出、脚本、音楽、俳優のどれもが皆とてもよかった。"冬ソナ・フィーバー"は、決して作られたものではなく、多くの人の心に響く、心の渇きを癒すドラマであったからこそのブームだったと思います。
(付録)聖母探求ドラマとしての「冬のソナタ」
ユジンという女性によって現された母性的なものを核心として捉えてドラマを理解するアプローチもありそうだなと思い、私見を書いてみました。
以下に、そうしたアプローチに沿って、サンヒョク、チュンサン(ミニョン)にとってユジンとはいかなる存在であったのかを考えてみました。
- サンヒョクにとってのユジン
- サンヒョクがユジンに求めたもの、それは異性として恋愛の対象としての女性というよりは、ユジンに顕現している母性だったのではないか。幼い頃からずっと一緒だったユジンは、彼にとって肉親に近い存在であり、長い間彼にとって自分が守ってあげる存在であったに違いないけれど、成長するにつれ、徐々にユジンは、逆に無私の心で彼を抱きかかえてくれる母性的な存在へと変貌していったように思えます。
- サンヒョクが、ユジンの愛を得られないことが決定的となった状況でユジンに告げた言葉が象徴的です。「愛してくれなくてもいいんだ。そばにいてくれればいいんだ」 これは、愛するものの愛を独占しようとする青年の言葉とは、とうてい考えられません。サンヒョクの母が、ユジンをさしたるわけもなく嫌った理由も、ユジンが息子の妻となることを嫌ったわけではなく、ユジンが息子にとって自分に代わる母親的存在となることを無意識に理解したからではないだろうか。
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- チュンサン(ミニョン)にとってのユジン
- チュンサンにとってもユジンは、母的なイメージを投影する対象であったと考えられます。彼の母は高名なピアニストであり、海外公演を含む多忙な演奏活動の為に不在が常で、あれこれと子供の面倒を見る通常の母親のイメージとは無縁の存在でした。母親代わりをする肉親もなかったチュンサンは、母親のイメージを、意識的にせよ無意識的にせよ、女性に投影していたことは疑いようのないことだと思います。
サンヒョクの場合ほど、明確にそうしたことがドラマの展開ではあらわれていませんが、女性遍歴が豊富で女性の扱い方に慣れているはずの彼が、ユジンに対しては極端に不器用さを露呈してしまうこと、ユジンへの愛に性的な要素が希薄なことなどに、ユジンを母的なものに聖化していることが窺えると思います。
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- ユジンにとってのチュンサン、サンヒョク
- 最後までユジンは、二人を選択することが出来なかったこと。まさに我が子に対する母親の感情であると言え、彼女の優柔不断さは母性に起因するところが大きかったのではないか。寝たきり状態になってしまったサンヒョク(無意識的に母を求める行為だったろう)を拒否できなかった理由もここにあると思います。
ドラマのラストもそうした意味で極めて象徴的でした。チュンサンは視力を失い、行動的には無力となり、ユジンを保護する立場から逆転して保護される立場となっています。しかしながら、彼は視力を失ったことで、彼が長い間希求していた、いつもそばにいて自分を抱いてくれる保護者としての母性をついに獲得したと言えるのではないか。こうしたチュンサンにとっての真のハッピーエンドは、おそらくドラマを観ていた人々が無意識的に望んでいた結末なのではないかとも思います。
(まとめ )
男女の愛を巡るドラマという外観を備えながら(もちろんドラマの主題でもあるわけですが)、「冬のソナタ」は永遠の母性(聖母)を巡るドラマでもあったのではないかと思います。もちろん制作者がそうしたことを意識していたわけではなく、個人的あるいは韓国的な意識の基盤の上に醸成された結果として形をとったのだと思います。そして、このドラマがヒットした要因のひとつとして、現代に希薄な母性的なものへのあこがれが、昇華された形で実現したドラマのストーリー展開にあったと考えることも、あながち的(まと)外れではないのではと思います。
(参考)
聖母を描いた名作(画像クリックで拡大画像にリンクします)
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岩窟の聖母(1506年頃)
/レオナルド・ダ・ヴィンチ |
小椅子の聖母(1518頃)
/ラファエロ |
ピエタ(1497-1500年)
/ミケランジェロ |
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冬のソナタ 第1話〜第10話、リンク集などへ
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