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John Irving(1942 - )
ジョン・アーヴィング


ニューハンプシャー州エクスターに生まれる。フィリップス・エクスター学院卒業後、ニューハンプシャー大学で学士号を取得、ウィーンに留学し、ヨーロッパを放浪した。帰国後アイオワ大学に進学し修士号を取得、1968年に処女作「熊を放つ」を発表した。大学の講師、レスリング・コーチ、俳優などの職をしながら創作を続け、1978年に刊行した「ガープの世界」により一躍ベストセラー作家となった。結婚して3人の息子がいる。

ぼくが彼に会ったとき、インタビューしようとしたら、「時間がないから、いっしょにセントラル・パークを走ろう」と言って、走りながらインタビューしたのですが....
「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」/村上春樹


まずはプロットさ。単純なことなんだ。それは物語として面白いか? ということだよ。面白い物語を語るというのは小説家のひとつの責任だと僕は思う。我々が常に負わねばならぬ荷物のひとつだね。
/ジョン・アーヴィング(トマス・ウィリアムズによるインタビューより)

 

以下の作品と関連映画を紹介しています。クリックでリンクします。
The World According to Garp/ガープの世界(1978)
(関連映画)ガープの世界/The Great Gatsby(米・1974)
The Cider House Rules/サイダーハウス・ルール(1985)
(関連映画)サイダーハウス・ルールThe Cider House Rules(米・1999)
The Hotel New Hampshire/ホテル・ニューハンプシャー(1981)
(関連映画)ホテル・ニューハンプシャー/The Hotel New Hampshire(米・1988)
(関連映画)サイモン・バーチ/Simon Birch(米・1998)  
参考Webサイト
・主要作品リスト 

1.The World According to Garp/ガープの世界(1978)
難易度:☆☆☆

In the world according to Garp, an evening could be hilarious and the next morning could be murderous.
ガープによるとこの世界では、夕べは歓びの声に満ちていて、翌朝は殺戮の血におおわれることもある。

In the world according to Garp, we are all terminal cases.
ガープによるとこの世界では、我々はすべて死に至る患者なのだ。

 喜劇、悲劇、愛の成就と喪失、誕生と死、そしてなにより暴力... そうした様々な世界の様相が凝縮されている小説で、またアーヴィング自身の実人生とも重なり合う部分の多い作品となっています。
 ガープの母となるジェニーは、独立心の強い潔癖な女性で、男を欲望のかたまりとみなし生理的な嫌悪を抱いていました。ただ、どうしても自分の子供を欲しいと願っていた彼女は、第二次世界大戦中看護婦として勤務していた病院で、頭部に瀕死の重傷を負い「ガープ」としか言えない兵士を半ば強姦し、ガープを身ごもります。その後ジェニーはスティアリング学院の住み込み看護婦として働きながらガープを育てます。ガープは学院のレスリング部に入部し、コーチの一人娘で文学少女のヘレンと出会い、彼女に一目ぼれします。

 ある日、だれもいないスタジアムでヘレンがひとりで本を読んでいるのを見かけたガープは彼女に話しかけます。
 ヘレン:もし結婚するなら作家と結婚するわ。 ガープ:とにかくレスラーとは結婚しないつもりなんだね。 ヘレン:それはまちがいないわ。彼が作家でもあるレスラーでないかぎりはね。 ガープ:とにかく作家ということが第一なんだ。 ヘレン:そう、ほんものの作家よ。
 ガープがほんものの作家になろうと決心したのは、このときだった。

 "If I marry anybody, I'll marry a writer," Helen said. "But I doubt I'll marry anybody."
 Garp had been trying to joke; Heren's seriousness made him nervous. He said, "Well, I'm sure you won't marry a wrestler."
 "You can be very sure," Helen said. Perhaps young Garp could not conceal his pain, because Helen added, "Unless it's a wrestler who's also a writer."
 "But a writer first and foremost," Garp guessed.
 "Yes, a real writer," Helen said, mysteriously ― but ready to define what she meant by that. Garp didn't dare ask her. He let her go back to her book.
 (中略)
 It was that afternoon in the empty stadium, with frog gore in the point of his javelin, when Helen Holm provoked his imagination and T.S. Garp decided he was going to be a writer. A real writer, as Helen had said.

 ガープは大学へは進学せず、母とともにウィーンに移り住み、ガープは処女短篇を、ジェニーは自叙伝を書き上げます。帰国して作家としてのデビューを果たしたガープはめでたくヘレンと結婚し、一方ジェニーの本はベストセラーとなり、彼女は女性運動の旗手に祭り上げられます。そして大学の教師となったヘレンと、主夫となり二人の息子たちの面倒を見ながら小説を書くガープの身辺に降りかかる出来事の数々・・・・
 ガープの周囲、それと本文中に挿入された幾つかのガープの小説の中では、暴力・事故・自損による死傷者が累々といった風で、普通ならめげてしまいそうだけど、ジェニー、ガープを始めとする登場人物たちは、困難な現実を受け入れ、その先に希望を見出す持ち前のエネルギーで、生あるかぎり生き抜こうとします。生きていればエネルギーを発揮できる希望が持てるんだ。それと絶対忘れないでいて、ヘレン、たとえ死が待ち受けていようと、記憶の中で生き続けることができることを、そこに記憶があることを。

 And if you have life, said Garp's eyes, there is hope you'll have energy. And never forget, there is memory, Helen, his eyes told her.
 
 In the world according to Garp, we are obliged to remember everything.
 ガープによるとこの世界では、われわれはすべてを記憶していなければならないのだ。
 
(映画)ガープの世界/The World According to Garp(米・1982)
(監)ジョージ・ロイ・ヒル (演)ロビン・ウィリアム、メアリー・ベス・ハート

If Garp could have been granted one vast and naive wish, it would have been that he could make the world safe. For children and for grownups. The world struck Garp as unnecessarily perilous for both.

もしもガープが大きな願いをひとつだけ叶えることができるとしたなら、その願いとは、この世界を子供と大人にとって危険でないものにすることだったろう。ガープにはこの世界が、子供と大人のどちらにとっても、ただいたずらに危険であるように思えた。
(原作より)


 誕生から死に至る人生の悲喜劇を暖かい視点で描いていて、原作のバイオレンスの部分を極力オブラートで包み込み、原作もそうであったけれど、悲劇的なストーリー展開にもかかわらず、観終わったあとにさわやかな感動を残すヒューマン・ドラマの佳作となっています。どんな時でも家族を愛し、守ろうとするガープの姿に胸うたれます。
 この映画がロビン・ウィリアムスの出世作となっただけあって、彼の"魅せる"表情の演技が見事です。母ジェニー役のグレン・ローズ、妻ヘレン役のメアリー・ベス・ハートもそれぞれが適役で、とくにメアリー・ベス・ハートの表情が好き。アーヴィング自身がレスリング試合のレフリー役で出演していて、ほんのちょっとだけどセリフもしゃべっています。
 原作との相違でちょっと残念なのは、原作に挿入されているガープ作の小説とは全く別のエピソードが、ガープ作品の映像化として示されている点、それとジェニーとガープの母子が、ウィーンではなくニューヨークに行くところで、ウィーンはアーヴィング自身にとって特別の意味を持っていたはずなので、ここは手を抜かないで欲しかった。

(関連音楽)
・When I was sixty-four
映画の冒頭タイトルバックとラストに流れるポール・マッカートニーが歌うラブ・ソング。ロック史上の金字塔アルバム "サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド" に収録されている曲です。64歳になっても一緒に仲良く暮そうよ、といった内容の心暖まる歌で、ガープの抱く世界観を現しているようです。
・There will never be another you(あなただけを)
映画の中と、ラストで流れていました。ナット・キング・コールの甘くソフトな声で、僕にあるのは愛する君だけ、他には誰もいない、と歌われるラブ・バラードです。トランペッターのチェット・ベイカーが中性的な声で歌っている「Chet Baker Sings」もいいです。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
ザ・ビートルズ '67

Two in Love
ナット・キング・コール(vo)

Chet Baker Sings '56
チェット・ベイカー(tp,vo)


2.The Cider House Rules/サイダー・ハウス・ルール(1985)
難易度:☆☆☆

 ジョン・アーヴィングの旧作で、'00年に映画公開されたため再度ベストセラーとなりました。
 1900年代前半のアメリカのメイン州が舞台で、セント・クラウドの孤児院育ちのホーマー・ウェルズをめぐるエピソードを描いた長篇です。
 収容されている孤児たちは、養子としてもらわれる事で、孤児院から巣立って行くが、ホーマーの場合、様々の事情で養子先に落ち着くことが出来ず、孤児院に戻って来てしまう。院長Dr.ウィルバーも彼を養子に出すことをあきらめ、ホーマーに産婦人科医としての教育を施し、彼の助手として使うようになる。Dr.ウィルバー・ラーチは、"人のため"という信念から堕胎も行っていたが、若いカップルであるウォリーとキャンディが堕胎のため孤児院を訪れたのを機会に、ホーマーは彼らの経営するりんご園に一緒について行き、従業員として働くようになる。
 ウォリーとの友情とキャンディへの愛情の間の葛藤、それからウォリーの戦争での負傷、同じ孤児院育ちでホーマーを愛しているメロニーによるホーマーの探索など様々なエピソードが交錯しながら、物語が綴られていきます。
 題名の'Cider House Rules'とは、りんご園で働く出稼ぎ労働者たちの寝起きする建物に貼られた紙に書かれた規則のことで、'ベッドで煙草を吸わないこと'、'酔っている時には屋根の上にあがるな'とか'屋根の上には一度に6人以上はあがるな'とか書いてありました。 ホーマーが、彼に関係する人々が従っているRulesについて、考える個所からの引用 :

 He thought about rules. That sailor with the slashed hand had not been in a knife fight that was according to anyone's rules. In a fight with Mr. Rose, there would be Mr. Rose's own rules, whatever they were. (中略) And what were the rules at St. Cloud's? What were Larch's rules? Which rules did Dr. Larch observe, which ones did he break, or replace - and with what confidence? Clearly Candy was observing some rules, but whose? And did Wally know what the rules were? And Melony - did Melony obey any rules? wondered Homer Wells.   (Mr. Rose:出稼ぎ者たちの監督)

 暴力、事故、レイプなどが頻発する「ガープの世界」(1978)、「ホテル・ニューハンプシャー」(1981)に比べるとストーリーの展開が地味なので、以前読んだ時には前2作に比べ印象が薄かった作品ですが、再度読み返してみて、ホーマーを始めとする登場人物がよく書き込まれているなという印象を持ちました。アーヴィングは物語の復権を目指しているようで、ホーマーとメロニーの愛読書が、それぞれ「デヴィッド・カッパーフィールド」と「ジェーン・エア」であることも示唆的であると思います。 
  
(映画)サイダーハウス・ルール/The Cider House Rules(米・1999)
(監)ラッセ・ハルストレム (演)トビー・マクガワイヤ、マイケル・ケイン、シャリーズ・セロン

 2000年度アカデミー賞の作品賞を始め主要7部門にノミネートされ、2部門(助演男優賞:マイケル・ケイン、脚色賞)で受賞しました。
 脚色はアーヴィング自身が行なっていますが、結果としてとても爽やかなヒューマン・ドラマに仕上がっています。基本的に原作を忠実になぞっている展開となっていますが、メロニーがからむ部分とウォリーが戦争で負傷して帰ってからの彼とホーマー、キャンディとの関係の部分が整理されていて、メロニーも原作でのイメージからは遠くはなれた感じで、ホーマーを想う普通の女の子となっています。でもすっきりしたことで、原作の主要テーマであると考えられるルール(規則)と人間の関係、何のためのルールなのかということが、より鮮明になったようです。"人の役に立つ"という観点から州法を破って、堕胎手術を行なうDr.リーチの協力要請に従わなかったホーマーですが、りんご園での暮しを経て、最後にはDr.リーチの後を継ぐためにセント・クラウズに戻っていきます。
 Dr.リーチを演じたマイケル・ケインが、さすが味のある演技をしていました。彼は、ウディ・アレンの『ハンナとその姉妹』('86)でも最優秀助演男優賞を受賞しています。
 

3.The Hotel New Hampshire/ホテル・ニューハンプシャー(1981)
難易度:☆☆☆

 So we dream on. Thus we invent our lives.
 そのように僕たちは夢を見続けるのだ。こうして僕たちは自分たちの生を生み出していくのだ。

 アーヴィングを一躍有名作家にした「ガープの世界」に続く長編作品です。
 「ガープの世界」同様、本作も家族に焦点を置き、彼らの生と死、愛と性を中心テーマに描いていますが、前作では両親が主人公であったのに対し、この作品ではベリー家の5人の子供たちを主役として、40歳になった次男のジョン(1942年生まれ)が、現在から過去を振り返るという形で、ベリー家の年代記が語られています。
 長男のフランクは同性愛者、次男のジョンと次女フラニーは互いにどうしようもなく愛し合っていて、次女のリリーは7歳から成長が止まり、三男のエッグは難聴という具合いに、それぞれが規格から外れた資質を持った兄弟ですが、中では一番エネルギーに満ち、ジョンが姉という以上に女性として愛する一つ年上のフラニーが、小説のヒロインであると言っていいと思います。
 一家は、現実に目をふさぎ夢を見続ける父親のお蔭で、結果的に三つのホテル・ニューハンプシャーを渡り住むことになります。両親の生まれ育ったニューハンプシャー州の町の廃校を改造して開業した第1次ホテル・ニューハンプシャー、海を越えて大戦後まもないウィーンでの退廃と死に彩られた第2次ホテル・ニューハンプシャー、そして再びアメリカに戻り、愛と再生への家族の祈りを担いメイン州に建てられた第3次ホテル・ニューハンプシャー、彼らは、それぞれの時・場所において、悲しみと愛に漂い続ける運命にありました。

 現実的なストーリー展開とはとても考えられず、物語の復権を目指すというアーヴィング自身が語っているように、これは悲劇でもあり喜劇でもある fairy tale(おとぎ話)と考えるべきなのでしょう。それもグリム物語がそうであるように、残酷な側面を兼ね備えた fairy taleという風に。
 繰り返し語られるベリー家のモットー、"You have to keep passing the open windows. 開いている窓の前は、通り過ぎなければいけない"は、困難を前にして、窓の外に飛び降りず、なお生き続けること、夢を見続けることを示していました。たとえ現実には、夢が目の前から消え去ってしまうものであっても、それにこだわり続けることにより生き続けること。

You've got to get obsessed and stay obsessed. You have to keep passing the open windows.

 レイプ、テロなどの暴力、そうした暴力、事故、自殺による数多くの死、同性愛、近親相姦という具合いに現代の混沌を象徴する事象に翻弄され、時に絶望の底に落とされながらも、喪失の悲しみを乗り越え、再生を期する家族の強い絆に、何よりも心打たれます。

(関連作品)
・「グレート・ギャツビー」/F・スコット・フィッツジェラルド(本サイトで紹介中)  
"Father is a Gatsby," she cried. "He is! I know he is!"
母と弟のエッグが乗ったウィーン行きの飛行機の墜落事故で、二人は海の藻くずと消え、先にウィーンに着いていたリリーは、ホテルでテロリストの女性が朗読する「グレート・ギャツビー」を聞き、実体のないものを追い求めた夢想家の父は、ギャツビーなんだと泣き叫びます。そして後年、リリーは作家となり、自分の家族をモデルした処女作がベストセラーとなりますが、次作を書こうとして「グレート・ギャツビー」のようなエンディングが書けないなら小説を書く意味がないと言って自信のなさを歎きます。
"I'm glad you have confidence in me," Lilly said, "but whenever I read the ending of The Great Gatsby, I have my doubts. I mean, that's just so beautiful," Lilly said. "I think that if I can't ever write an ending that perfect, then there's no point in beginning a book, either. There's no point in writing a book if you don't think it can be as good as The Great Gatsby.
結局、満を持して発表した第2作は酷評され、リリーは開いている窓の前に立ち止まってしまうことになります。
(映画)ホテル・ニューハンプシャー/The Hotel New Hampshire(米/英/カ・1984)
(監)トニー・リチャードソン (演)ジョディ・フォスター(フラニー)、ロブ・ロウ(ジョン)、ナスターシャ・キンスキー(熊のスージー)

 原作の少なからぬエピソードを過不足なく、と言いたいところですが、少々詰め込みすぎた感があり、原作を読んでいないと戸惑うところがありそうです。そして原作同様に、映画のほうも惨劇多々、死傷者多数ですが、そうした生々しさはほとんど感じられません。フラニーとジョンの近親相姦を始めとする性描写についても同様のことが言えます。
 生を肯定的に捉える視点が明確で、家族の絆の強さが印象づけられる青春ドラマとなっていて、原作にはないホテルに生者も死者も集まっての屋外パーティーの夢のようなラスト・シーンは感動的でした。内容の暗さとは裏腹に、元気をもらえる映画だと思います。
 なかなか豪華な顔ぶれが揃った映画ですが、中ではジョディ・フォスターのフラニーがパワフルでした。レイプにより受けた心の傷を熊のぬいぐるみで包み込んで生きている女性、スージーをナスターシャ・キンスキーが演じていましたが、スージーの内面にもう少し焦点を当ててもよかったんじゃないかな。
 

(映画)サイモン・バーチ/Simon Birch(米・1998)
(監)マーク・スティーヴン・ジョンソン (演)ジョゼフ・マッゼロ、イアン・マイケル・スミス

 この映画は、ジョン・アーヴィングの"オウエン・ミーニーのための祈り/A Prayer for Owen Meany"を元にした作品です。
 サイモンは、同年代の少年達に比べ身長が異常に低く、甲高い声を出す宗教心の厚い少年だった。この映画のナレーターであり、彼の親友でもあるジョンの母親が、野球の試合でサイモンが初めて当てた打球に当たり死んでしまう。サイモンは、自分をこのような肉体的・精神的試練に追い込む神は、自分に対してどんな計画を持っているのかということを自問し、また牧師に問いかけるが答えは得られない。そしてある日、サイモンが存在する意味(サイモンの考える神の計画の顕現)が明らかにされたと考えられる出来事が起こった。この辺が、ちょっと予定調和的だなという感じがしました(もちろん意図的なものだと思います)。

 原作の小説(未読です)のほうはアーヴィングらしく、もっとストーリーが重層的、かつ猥雑なようですが、この映画はうまくそれらを整理して2時間に収め、良質なヒューマン・ドラマに仕立てていると思います。映画ではアーヴィングの作品が持つ毒気みたいなものが、それほど感じられないので、やはり原作をいずれ読んでみようと思っています。
 成長しない少年の映画というと、どうしても『ブリキの太鼓』のオスカル少年を連想してしまいます(もっともオスカルの場合には、自らの意志で成長を止めたんだけど)。変な声というのも共通しています。こちらのギュンター・グラスの原作も読んでいないけれど、この映画はなかなかのインパクトがありました。どちらの作品も、"成長しない、できない"という事に、"無垢・純潔であり続ける意志"を象徴させているのではという気がします。


(次回紹介予定)A Widow for One Year/未亡人の一年(1998)

内容(「BOOK」データベースより)
1990年、ニューヨーク。いまや世界的人気作家のルースは、冴えない小説家のエディと再会する。アムステルダムで彼女は、父の絵本のモグラ男そっくりの犯人が、娼婦を殺害するのを見てしまう。5年後。ルースは幼子を抱えた未亡人。エディは相も変わらぬ独身暮らし。謎のカナダ人作家の存在が二人をゆすぶり、オランダ人の警官まであらわれて…。遠い夏の日から37年。毀れた家族と一つの純愛の行きつく先は?圧倒的ストーリー展開、忘られぬ人物造形、緻密なディテール、胸を打つエピソード、そして登場人物の手になる小説内小説―。長篇小説の愉しみのすべてがここにある。

 

参考Webサイト

○ 関連出版リスト : amazon. com.(洋書和書
○ 関連資料
 ・ジョン・アーヴィング(Wikipedia)
 ・John Irving(Wikipedia 英語)

主要作品リスト  

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