PAPERBACK GUIDE 

Roald Dahl(1916 - 1990)
ロアルド・ダール


 イギリスのウェールズの生まれ。両親はノルウェーの移民で、父はダールが4歳の時に死亡。大学へは進学せず18歳の時にシェル石油に就職、第2次世界大戦時には英国空軍の戦闘機パイロットとなったが、リビアで負傷しワシントンD.C.に転属となり1945年まで軍務に従事した。彼の最初の短篇は空軍での経験に取材した作品で、サタデイ・イブニング・ポスト紙に発表された。短篇集「あなたに似た人」(1953)の世界的成功により短篇作家としての地位を確立した。ダールが子供向けの物語を、本格的に書き始めたのは1960年からで、最初の物語は彼自身の子供のためだった(最初の妻は女優のパトリシア・ニール)。



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 1. Tales of the Unexpected(1979)/短篇集「あなたに似た人」(1953)、「キス、キス」(1959)からのセレクション
  難易度:☆☆

 二つの短篇集からセレクトされた収録作品は以下の16篇です。タイトル通り、まさに"unexpected" ending(予期せぬ意外な結末)が真骨頂であるダールの短篇の代表作が収録されています。


Penguin 288p


○ 「Someone Like You/あなたに似た人」より
  • Taste(1951)
  • Lamb to the Slaughter(1953)
  • Man from the South(1948)
  • My Lady Love、My Dove
  • Dip in the Pool(1952)
  • Galloping Foxley(1953)
  • Skin(1952)
○ 「Kiss, Kiss/キス、キス」より
  • Neck(1953)
  • Nunc Dimittis(1955)
  • The Landlady(1959)
  • William and Mary(1959)
  • The Way up to Heaven(1954)
  • Person's Pleasure(1958)
  • Mrs Bixby and the Colonel's Coat
  • Royal Jelly(1959)
  • Edward the Conqueror(1953)

 アイディア+ブラック・ユーモア+意外なオチ=奇妙な味の極上の短篇 が楽しめます。
 もし自分がこれらの短篇の登場人物たちと同じ状況に置かれたなら、認めたくはないけど自分にも彼らと共通する負の部分(行動なり、心の動きなり)がありそうだなと思わせるところが、面白くもほろ苦い読後感となる所以(ゆえん)でしょう。

○ Taste/味
 スコウフィールド家の晩餐に招かれた美食家として知られるリチャード・プラットは、当主のマイクが晩餐のために用意した極めて珍しい葡萄酒の銘柄を自分が当てられるかどうか賭けをしようと持ちかけます。絶対に当てられない自信があったマイクは、プラットの望むものを賭けることに同意します。しかし、プラットが示した賭けの対象は予想しなかったものでした。

 'All right, then,' Pratt said. 'I'll tell you what I want you to bet.'
 'Come on, then.' Mike said, rather reckless. 'I don't give a damn what it is ― you're on.'
 Pratt nodded, and again the little smile moved the corners of his lips, and then, quite slowly, looking at Mike all the time, he said, 'I want you to bet me the hand of your daughter in marriage.'

 プラットが提示した条件は、自分が銘柄を当てたらマイクの娘と結婚、外したら自分の二軒の邸宅を手放すというものでした。

○ Man from South/南から来た男
 これも賭けにからんだ作品。ホテルのプールで、アメリカ人の青年が南米出身と思われる初老の男から賭けの申し出を受けます。賭けとは、青年の持っているライターが10回連続して着火できるかどうかということでした。そして賭けの対象は、「味」同様、これまた尋常のものではなかった。男は、青年が勝ったら自分のキャデラックをあげようと言います。青年は、じゃあオレは何を賭けるんだと男に尋ねます。

 'Then what do I bet?'
 'Some small ting(thing) you can afford to give away, and if you did happen to lose it you would not feel too bad. Right?'
 'Such as what?'
 'Such as, perhaps, de(the) little finger on your left hand.'
 'My what?' The boy stopped grinning.
 'Yes. Why not? You win, you take de(the) car. You looss(lose), I take de(the) finger.'
 ( )内は、男のなまり言葉を修正したもの。

 青年が負けたら、男が彼の左手の小指を切り落とすことが賭けの条件でした。

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 2. Matilda/マチルダはちいさな大天才(1988)
   難易度:☆

 天才少女マチルダは3歳で新聞でも何でも読むことができた。マチルダは、もっともっと読みたかったけど家にある本といえば、母さんの「簡単な料理」だけだった。母さんは週に5回もビンゴをしに町に出かけ、それにTVがなにより好きで、食事はいつもTV dinner(冷凍食品)ばかり、マチルダのことなんかほったらかしだった。悪徳中古車ディーラーの父さんに本を買ってと頼んでもTVを見ろと言うだけで、しょうがないのでマチルダは自分で図書館に行くようになり、古今の名作をばんばん読んでいた(注)。父さんがTVを見ないで本を読んでるマチルダに怒って、借りてきた本のページを引き裂いてしまったときには、あとで仕返しをしてやった。
 そんなこんなで、いよいよマチルダが小学校に入学する時が来た。担任の先生は、とてもやさしいハニー先生でよかったけど、それとは正反対の女校長のトランチブルが最悪だった。元は有名なハンマー投げの選手だったというトレンチブルは筋肉隆々、まさに猛牛のようで、しかも恐ろしい暴君で、生徒達にとっても先生達にとっても恐怖の的だった。

 Miss Trunchbull, the Headmistress, was something else altogether. She was a gigantic holy terror, a fierce tyrannical monster who frightened the life out of the pupils and teachers alike. There was an aura of menace about her even at a distance, and when she came up close you could almost feel the dangerous heat radiating from her as from a red-hot rod of metal.

 マチルダが自分の天才ぶりを鼻にかけることなく、ハニー先生や同級生たちと協調しながら、難敵トレンチブルに対抗するというストーリーが気持いいし、何より楽しくて、暖かい感動も味わえます。ということで子供たちだけに読ませるのは絶対にもったいないと思います。読みやすい英語で(ポッターよりやさしい)、挿絵も豊富なので、初めて原書に挑戦してみようという方におすすめです。

 (注)マチルダが図書館から借りて読んだ本の中には以下がありました(リンクは当サイト内)。すごいネ。
  • 「ニコラス・ニックルビー」、「オリヴァー・トウィスト」、「大いなる遺産」、「ピクウィック・クラブ」/チャールズ・ディケンズ
     ディケンズはマチルダの一番のお気に入りのようです。
  • ジェーン・エア」/シャーロット・ブロンテ
  • 高慢と偏見」/ジェイン・オースティン
  • テス」/トマス・ハーディ
  • 「Gone to Earth」/メアリー・ウェブ
  • 「キム」/ラドヤード・キプリング
  • 「透明人間」/H.G.ウェルズ
  • 「老人と海」、「アフリカの緑の丘」/アーネスト・ヘミングウェイ
  • 「響きと怒り」/ウィリアム・フォクナー
  • 「怒りの葡萄」/ジョン・スタインベック
  • 「友達座」/J.B.プリーストリー
  • 「ブライトン・ロック」/グレアム・グリーン
  • 「動物農場」/ジョージ・オーウェル
  • ジョゼフ・コンラッドの海洋小説 
      
     マチルダはハニー先生の「好きな本を教えて?」という質問に答えて、子供向けの本の中では、C.S.ルイスのナルニア国物語がよかったけど、面白さに欠けていると指摘し、そしてトールキンもそうだったと言っています。子供向けの本はまず面白くて、子供たちが笑えるようでなくては、とも言っていて、これはダールの本心でもあるのでしょう。
     
     "Tell me one that you liked."
     "I liked The Lion, the Witch and the Wardrobe," Matilda said. "I think Mr C.S.Lewis is a very good writer. But he has one failing. There are no funny bits in his books."
     "You are right there," Miss Honey said.
     "There aren't many funny bits in Mr Tolkien either," Matilda said.
     "Do you think that all children's books ought to have funny bits in them?" Miss Honey asked.
     "I do," Matilda said. "Children are not so serious as grown-ups and they love to laugh."

 (映画)マチルダ/Matilda(1996 米)
 (監)ダニー・デビート (演)マーラ・ウィルソン(マチルダ)、エンベス・デイビッツ(ハニー先生)、パム・フェリス(トレンチブル校長)

 映画化作品として、とてもよくまとまっていて大人も子どもも一緒に楽しめる映画です。成功の大きな要因として、配役が優れていることが挙げられます。マチルダと彼女の両親も適役ですが、ハニー先生とトレンチブル校長がなんといっても素晴らしい。スレンダーなハニー先生は原作の挿絵のイメージより美人だけど(お父さんにはうれしい)、優しい雰囲気はぴったりだし、猛牛校長もほどほどにおっかなくて児童向きにはちょうどいいと思います。
 原作にはないエピソードとして、マチルダが生まれて病院から連れて帰る場面(家に着いて、両親はマチルダを車の中に置き去りにしてしまう)、ハニー先生とマチルダがトレンチブル校長の家に忍び込み、物音に気づいたトレンチブルに追いかけまわされる場面などがありました。
 映画でもマチルダのお気に入りの作家はチャールズ・ディケンズでしたが、画面ではメルヴィルの「白鯨」がフィーチャーされていました。

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 3. Charlie and the Chocolate Factory/チョコレート工場の秘密(1964)
  難易度:☆ 

初めての強烈な読書体験といえば、ロアルド・ダールの「チョコレート工場の秘密」である。文字通り、夕飯を食べるのも忘れて読み耽った。
三月は深き紅の淵を」/恩田陸


 チャーリーの家族は両親と祖父母が4人の全員で7人で、狭い家に住み、食べるのがやっとというくらい貧しくて、チャーリーの大好物のチョコレートも誕生日の日だけしか食べられないくらいでした。でも貧しくてもみんなで仲良く暮していたんです。
 チョコレートが何よりも好きなチャーリーにとって辛かったのは、この町には、実際チャーリーの家から見えるんだけど、世界一大きくて、有名なワンカ氏のチョコレート工場があって、その半マイル(800m)四方の空気が溶けたチョコレートのふくよかな甘い香りに満ちていたからなんだ。ちょっと想像してごらんよ。

 In the town itself, actually within sight of the house in which Charlie lived, there was an ENORMOUS CHOCOLATE FACTORY!
 Just imagine that!
 And it wasn't simply an ordinary enormous chocolate factory, either. It was the largest and most famous in the whole world! It was WONKA'S FACTORY, owned by a man called Mr Willy Wonka, the greatest inventor and maker of chocolates that there has ever been. And what a tremendous, marvellous place it was! It had huge iron gates leading into it, and a high wall surrounding it, and smoke belching from its chimneys, and strange whizzing sounds coming from deep inside it. And outside the walls, for half a mile around in every direction, the air was scented with the heavy rich smell of melting chocolate!

 ワンカ氏の工場からはチョコレートが続々と出荷されるけど、誰もワンカ氏も工場で働く人間も見た者はいませんでした。
 ある日、ワンカ氏がこの秘密工場に5人の子供と保護者を招待し、自身で案内した上、帰りのお土産に一生分のお菓子をプレゼントするとのニュースが全世界をかけめぐり、金色の招待券が入っているワンカチョコを引き当てようと、世界中が大騒ぎとなります。
 招待券を引き当てたのは、大金持ちのわがまま娘、大食いしん坊の太っちょ少年、ガム大好き少女、TVに夢中のハードボイルド・ボーイ、それに貧しくても清く正しいチャーリー君でした。彼らがワンカ氏の案内で工場の中でみた驚くべき秘密の数々......

 大人が読んでも充分面白いけど、小学生低学年くらいの子供には絶対うけると思います。不思議なお菓子や何やらがいろいろと出てきて、あっ!というびっくりの連続で、特徴のあるキャラクターぞろいで、リズムがあって歌もあって、語り口が絶妙で、ついでにちょっとダールらしい毒もあったりして... 夢中になること間違いなし。
 
 ウンパ・ルンパ達(何?)の歌もなかなか痛烈ですが、とくにテレビについて歌っている個所はここだけ大文字で強調されています。


 IT ROTS THE SENSES IN THE HEAD! 
 IT KILLS IMAGINATION DEAD!
 IT CLOGS AND CLUTTERS UP THE MIND!
 IT MAKES A CHILD SO DULL AND BLIND
 HE CAN NO LONGER UNDERSTAND
 A FANTASY, A FAIRYLAND!
 HIS BRAIN BECOMES AS SOFT AS CHEESE!
 HIS POWER OF THINKING RUST AND FREEZE!
 HE CANNOT THINK ― HE ONLY SEES!

 テレビは五感をダメにするのさ!
 そいつは想像力をぶっ殺す!
 そいつは心を鈍らせ乱す!
 そいつは子どもをぼんやりにし目をくらます
 もうファンタジーや妖精の国のことがわからなくなってしまう!
 脳みそがチーズみたいにふにゃふにゃになってしまう!
 思考力がにぶって、働かなくなってしまう!
 もう考える事ができなくなって ― ただ見てるだけ!

 (試訳)

 
こうした思いはダール自身の本音なんだろうし、児童向けの本を書こうという動機にもなっているのではないかと思います。少なくてもこの本を読んでいる間だけはテレビを見ようなんていう気にはなれないだろうけど。


 (映画)夢のチョコレート工場/ Willy Wonka & the Chocolate Factory(1971 米)
 (監)メル・スチュワート (脚)ロアルド・ダール (演)ジーン・ワイルダー、ジャック・アルバートン、ピーター・オストラム、ロイ・キニア

 原作の面白さには及ばないけれど、楽しい作品です。ミュージカル仕立てとなっていて、歌詞は原作のものとは違っていますが、ウンパ・ルンパ達の歌が聴けるのはうれしい。
 ダール自身が脚本を書いていますが、映画では原作とは少々趣を変えたアプローチをしてみようと思ったのではないか。ワンカ氏を演じたジーン・ワイルダーの個性にもよるけど、シュール度、ブラック度が原作よりきつくなっていて、セットもいささか貧弱だったりして、全体として低予算B級SF映画的になっているのは、当初から意図したことだと思います。特撮を駆使して大娯楽作品にリメイクしても、面白いと思うのだけど。


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 (次回紹介予定)James and the Giant Peach/おばけ桃が行く(1961)
  Puffin 126p

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 ■ 参考Webサイト  本サイト掲載の画像クリックで、Amazonの該当サイトにリンクします。

○ロアルド・ダール 関連出版リスト : amazon. com.(洋書和書


○検索
   


 ■ 主要作品リスト  

 ○ 一般向け作品: ほとんどが短篇集で、収録作品が互いに重複している場合があります。
  • Over to You:10 stories of Flyers and flying/飛行士達の話(1946)
  • Someone Never(1948)
  • Someone Like You/あなたに似た人(1953)
  • Kiss, Kiss/キス・キス(1959)
  • Twenty-nine Kisses from Roald Dahl(1969)
  • Selected Stories(1970)
  • Switch Bitch/来訪者(1974)
  • The Best of Roald Dahl(1978)
  • Tales of the Unexpected(1979)
  • Taste and Other Tales(1979)
  • More Tales of the Unexpected(1980)
  • The Way up to Heaven and Other Stories(1980)
  • A Roald Dahl Selection(1980)
  • Further Tales of the Unexpected(1981)
  • Roald Dahl's Book of Ghost Stories/ロアルド・ダールの幽霊物語(1983):ダール編
  • Two Fables(1983)
  • The Best of Roald Dahl(1983)
  • Boy: Tales of Childhood(1984)
  • Selected Works(1985)
  • Going Solo/単独飛行(1986)
  • The Second Roald Dahl Selection(1987)
  • New Tales of the Unexpected(1988)
  • Ah, Sweet Mystery of Life(1989)
  • The Great Switcheroo(1990)
  • The Collected Short Stories(1991)
  • Roald Dahl's Guide to Railway Safety/ロアルド・ダールの鉄道安全読本(1991):ノンフィクション
  • The Dahl Diary(1992)
  • My year(1993)
  • The Mildenhall Treasure/ミルデンホールの宝物(1999)
  • 王女マメーリア:国内編集の短篇集

 ○ 子供向け作品
  • The Gremling(1943)
  • James and the Giant Peach/おばけ桃の冒険(1961)
  • Charlie and the Chocolate Factory/チョコレート工場の秘密(1964)
  • The Magic Finger/魔法のゆび(1966)
  • Fantastic Mr. Fox/父さんギツネ バンザイ(1970)
  • Charlie and the Great Glass Elevator/ガラスのエレベーター宇宙にとびだす(1972)
  • The Witches/魔女がいっぱい(1973)
  • Danny, The Champion of the World/ぼくらは世界一の名コンビ(1975)
  • The Wonderful Story of Henry the Sugar and Six more/ヘンリー・シュガーのわくわくする話(1977)
  • The Complete Adventures of Charlie and Mr Willie Wonka(1978)
  • The Enormous Crocodile/大きな大きなワニのはなし(1978)
  • My Uncle Oswald/オズワルド叔父さん(1979)
  • The Twits/いじわる夫婦が消えちゃった(1980)
  • George's Marvelous Medicine/ぼくのつくった魔法のくすり(1980)
  • The BFG/オ・ヤサシ巨人 BFG(1982)
  • Roald Dahl's Revolting Rhymes/へそまがり昔話(1982)
  • Dirty Beasts(1983)
  • The Giraffe and the Pelly and Me/こちら、ゆかいな窓ふき会社(1985)
  • Matilda/マチルダはちいさな大天才(1988)
  • Rhyme Stew(1989)
  • Esio Trot /恋のまじない ヨンサメカ(1990)
  • The Minpins/ふしぎの森のミンピン(1991)
  • The Vicar of Nibbleswick/ねぶそくの牧師さん(1991)




 
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