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福永武彦(1918 - 1979)
1918年、福岡県二日市に生まれる。小学校半ばで東京に移り、一高を経て1941年東大文学部仏文科卒。同年、堀辰雄の知遇を得てその影響を受けた。翌1942年、加藤周一、中村真一郎らとマチネ・ポエティックを結成、詩作をはじめる。戦後の長い療養生活に耐えて、短篇集「塔」、長篇「風土」「草の花」「海市」などの名作を刊行。大作「死の島」で日本文学大賞を受賞する。 また「ボードレールの世界」「ゴーギャンの世界」「彼方の美」「書物の心」などの評論・随想集、さらに「福永武彦詩集」「夢百首・雑百首」、「ボードレール全集」の翻訳・編集など、広汎な執筆活動を続けた。また草花写生帖「玩草亭 百花譜」がある。 1979年8月死去、61歳。
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人は孤独のうちに生まれて来る。恐らくは孤独のうちに死ぬだろう。僕等が意識していると否とにかかわらず、人間は常に孤独である。それは人間の弱さでも何でもない、言わば生きることの本質的な地盤である。
人は愛があってもなお孤独であるし、愛がある故に一層孤独なこともある。しかし最も恐るべきなのは、愛のない孤独であり、それは一つの沙漠というにすぎぬ。
/「愛の試み」
最も敬愛する作家である福永武彦の作品を読み返しながら、自分の中にある福永作品の位置付けについて再確認してみたいと思っています。
以下を紹介しています。クリックでリンクします。 ■作品リスト
■「私と福永武彦(出会い〜これから)」
■関連Webサイト
■ 作品紹介(小説)
・塔(1948):短篇集
・草の花(1954):長篇
・風土(1957/完全版):長編
・廃市・飛ぶ男(1960):中・短篇集
・風のかたみ(1968): 長編
・夢見る少年の昼と夜(1972):短篇集
■ 作品紹介(エッセイ・評論他)
・彼方の美(1980): 美術評論
・玩草亭百花譜(1981): 画文集
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■ 作品リスト |
○長編小説
○短編集(刊行年度は元版の発行年を記しています。)
- 塔(1948)
・塔
・雨
・めたもるふぉおず
・河
・遠方のパトス
・時計
・水中花
(注)「河」、「遠方のパトス」、「時計」、「水中花」は、『塔』元版('48真善美社)には収録されておらず、「河」、「遠方のパトス」、「時計」は『塔』('71講談社)に、「水中花」は『冥府』('54講談社)に収録。本ページで紹介しているのは、河出文庫版('84年初版)。
- 夢見る少年の昼と夜(1958)
・夢見る少年の昼と夜
・秋の嘆き
・沼
・風景
・死神の馭者
・幻影
・一時間の航海
・鏡の中の少女
・鬼
・死後
・世界の終り
(注)元版『心の中を流れる河』('58東京創元社)には、「鬼」、「死後」、「世界の終り」は収録されておらず、これらは『世界の終り』('59人文書院)に収録。本ページで紹介しているのは、新潮文庫版('72年初版)。
- 廃市・飛ぶ男(1960)
・廃市
・夜の寂しい顔
・影の部分
・未来都市
・飛ぶ男
・樹
・風花
・退屈な少年 (注)元版『廃市』('60新潮社)には、「夜の寂しい顔」、「影の部分」、「未来都市」は収録されておらず、これらは『世界の終り』('59人文書院)に収録。本ページで紹介しているのは、新潮文庫版('71年初版)。
- 幼年(1969)
・幼年
・伝説
・邯鄲
・風雪
・あなたの最も好きな場所
・湖上」
- 加田伶太郎全集(1970)
・完全犯罪
・幽霊事件
・温室事件
・失踪事件
・電話事件
・眠りの誘惑
・湖畔事件
・赤い靴」
○福永武彦評論・随筆他作品リスト
(「國文学1980年1月号 福永武彦へのオマージュ」他による)
- 1946 文学的考察(1947) 評論集 共著
- ボードレールの世界(1947) 評論
- ある青春(1948) 詩集
- マチネ・ポエティック詩集(1948) 詩集 共著
- 愛の試み(1956) 評論・小説集
- ゴーギャンの世界(1961) 評伝
- 深夜の散歩(1963) 評論集(中村真一郎、丸谷才一と共著)
- 芸術の慰め(1965) 評論集
- 象牙集(1965) 訳詩集
- 福永武彦詩集(1966/限定版、1973/普及版) 詩集
- 別れの歌(1969) 随筆集
- 遠くのこだま(1970) 随筆集
- 枕頭の書(1971) 随筆集
- 意中の文士たち(上)(1973) 評論集
- 意中の文士たち(下)(1973) 評論集
- 意中の画家たち(1973) 評論集
- 夢のように(1974) 随筆集
- 書物の心(1975) 随筆集
- 櫟(くぬぎ)の木に寄せて(1976) 詩文集
- 夢百首雑百首(1977) 歌集
- 秋風日記(1978) 随筆集
- 内的独白(1978) 評論集
- 異邦の薫り(1979) 評論集
- 彼方の美(1980) 評論集
- 玩草亭百花譜(1981) 画文集
- 小説の愉しみ(1981) 対談集
- 20世紀小説論(1984) 講義ノート
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■「私と福永武彦(出会い〜これから)」:「福永武彦研究会会誌16号」への投稿文を転載 |
人は孤独のうちに生まれて来る。恐らくは孤独のうちに死ぬだろう。僕等が意識していると否とに拘らず、人間は常に孤独である。それは人間の弱さでも何でもない。謂わば生きることの本質的な地盤である。
「愛の試み」より
○出会い ―
私が最初に読んだ福永の小説は「草の花」でした。
高校生の頃までは推理小説やSFに夢中で、文学作品とは無縁でしたが、大学に入り青春期特有の諸々の悩みを抱えるようになると、その打開のヒントを求めて国内外の古典を中心に読み漁るようになりました。
とりわけ感銘を受けた作品として「異邦人」、「魔の山」、「ジャン・クリストフ」、「カラマーゾフの兄弟」、「三四郎」、「人間失格」などとともに「草の花」がありました。
周囲との疎外感に悩んでいた自分にとって、汐見茂思の精神遍歴が描かれていく中で「孤独の靱(つよ)さ」という言葉で示された孤独を鍛えることにより成長させていくという孤独への積極的な意味付けは新鮮であり心に響きました。
○そして ―
「風土」、「忘却の河」、「海市」、「死の島」と読み進むにつれ、どの作品にも共通する生と死、愛と死と孤独という人間存在の根源的なモチーフ、詩的な文体と知的で斬新な構成手法など福永文学の特質に触れることにより、次第に福永武彦は自分の中で最も敬愛する作家の位置を占めるに至りました。
福永から受けた影響は文学作品だけにとどまらず、絵画ではモロー、クレー、ルドンなどが私の好みですが、こうした嗜好も「芸術の慰み」などの芸術エッセイが端緒となっていると思います。
福永作品を愛する人それぞれにとくに思い入れのある小説が存在するのではないかと思いますが、私にとっては、長編では「風土」、「忘却の河」、「死の島」、中・短編では「夜の時間」、「廃市」、「あなたの最も好きな場所」、「形見分け」などが挙げられます。
○これから ―
愛と死と孤独という時代を超えて普遍的なテーマを深く追求した福永の作品は現代にも強くアピールするもので、もっと多くの人たちに知ってもらいたい、読んで欲しいとの思いがあります。
幸いにも、福永武彦研究会会長の三坂氏監修による『福永武彦電子全集』全20巻(小学館)の刊行が完結し、 2021年には研究会の公式ツイッター・アカウントが開設されるなど、福永武彦を取り巻く環境は良い方向に大きく変化しつつあると感じています。
私自身も現在担当している研究会のホームページ運営などを通じて、一人でも多くの新たな福永ファンを生むために微力ながら寄与できたらと願っています。
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■関連Webサイト |
○福永武彦 関連出版リスト(Amazon)
○福永武彦 関連サイト
・福永武彦研究会ホームページ: 福永作品が好きな方、興味のある方は必見です。
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